大阪市立大学2018年文系第1問

皆さんは二重階乗(double factorial)をご存知でしょうか?
本問は今年の大阪市立大学の文系数学ですが、珍しい題材からの出題となりました。


《問題》

自然数$n$に対して$$n!=n(n-1)(n-2) \cdots \cdot \cdots 3 \cdot 2 \cdot 1$$とおく。また、$$n!!=\begin{cases} n(n-2)(n-4) \cdots \cdot \cdots 5 \cdot 3 \cdot 1 \ (n \text{が奇数のとき}) \\ n(n-2)(n-4) \cdots \cdot \cdots 6 \cdot 4 \cdot 2 \ (n \text{が偶数のとき}) \end{cases}$$とおく。次の問いに答えよ。

問1 $1000!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数を求めよ。

問2 $1000!!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数を求めよ。

問3 $999!!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数を求めよ。

(大阪市立大学2018年文系 第1問)


《考え方》

$n!!$ は二重階乗(double factorial)や、半階乗(semifactorial)と呼ばれる演算です。理系の人ならウォリスの積分公式で少しは馴染みがあるのではないでしょうか。文系の人にとっては取り組みにくそうに見えるかもしれませんが、問題の内容自体はごく単純です。

●   ●   ●

$1000!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数は、$1$~$1000$までの整数の素因数 $3$ の個数の合計に等しくなります。したがって、$1$~$1000$までの整数について、$3^n$($n$はある自然数)の倍数の個数を足し合わせていけば良いことが分かります。

ガウス記号(実数$x$に対して$[x]$は$x$以下の最大の整数を表す)によれば以下のように計算できます。

$$\begin{align}&\ \ \ \ \  \displaystyle \sum^{\infty}_{k=1} \left[\dfrac{1000}{3^k}\right] \\ &=333+111+37+12+4+1 \\ &=498 \end{align}$$

これより、$1000!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数は $\color{red}{498}$ 個と分かります。

続いて問2ですが、$1000$が偶数なので考えやすい形に変形できます。即ち、$$\begin{align}&\ \ \ \ \ 1000!! \\ &=1000 \cdot 998 \cdot 996 \cdots \cdot \cdots 6 \cdot 4 \cdot 2 \\ &=2^{500} \cdot 500! \end{align}$$と書き直すことができます。当然ながら $2^{500}$ は素因数 $3$ を持ちませんから、$1000!!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数は、$500!$ の素因数 $3$ の個数の合計に等しくなります。問1と同様にして、$$\begin{align}&\ \ \ \ \  \displaystyle \sum^{\infty}_{k=1} \left[\dfrac{500}{3^k}\right] \\ &=166+55+18+6+2 \\ &=247 \end{align}$$となるので、$1000!!$ を素因数分解したときにあらわれる素因数 $3$ の個数は $\color{red}{247}$ 個と分かります。

問3の $999!!$ は $1000!!$ のように簡単な表示に直すことができません。そこでこれまでの結果を利用して素因数 $3$ の個数を求めます。$$1000!=1000!! \cdot 999!!$$という関係が思い浮かべばシメたもの。これにより

$1000!$ の素因数 $3$ の個数

=$1000!!$ の素因数 $3$ の個数+$999!!$ の素因数 $3$ の個数

という関係が得られます。よって $999!!$ の素因数 $3$ の個数は$$498-247=251$$より、$\color{red}{251}$ 個であることが分かります。


(コメント①)

大問丸々1つ分が二重階乗をテーマとする問題というのは今まで見たことが無く、なかなか斬新な出題に感じました。ただ、やるべき計算はかなり単純なので、見た目だけでパニックに陥らないようにしたいものです。階乗の素因数分解などの典型題に触れた経験があれば難無く解答できたと思います。


(コメント②)

本問で登場した $n!!$ は「二重階乗」ですが、世の中には「三重階乗」というものも存在します。これは以下のように計算できます。$$n!!!=n(n-3)(n-6)\cdots$$例えば $10!!!$ だと$$10!!!=10 \cdot 7 \cdot 4 \cdot 1$$というように求められます。さらに「四重階乗」や「五重階乗」・・・も存在し、同様の方法で計算することができます。これらをまとめて「多重階乗」と称します。

因みに二重階乗に関して、$$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{n!}{(n!!)^2}=0$$および、$$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{\log n \cdot n!}{(n!!)^2}=0$$および、$$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{n \cdot n!}{(n!!)^2}=\infty$$が成り立ちます。

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