学習院大学2003年前期(文)第3問

方程式の整数解に関するお手頃な演習問題ですが、掘り下げてみると意外に奥が深い問題かもしれませんね・・・。


《問題》

mを整数とする。方程式 mx2+16x+m+2=0 の解のうち少なくとも1つが整数であるようなmをすべて求めよ。

(学習院大学2003 前期(文)第3問)


《考え方》

方程式型の解法は大きく分けて因数分解か解の公式のいずれかです。本問の場合、因数分解が役に立たないので解の公式で攻めます。

まず、m=0 のとき整数解は持たないので m0 です。解の公式によりx=8±82m(m+2)mとなりますから判別式について82m(m+2)>0が必要です。これより9m7を得るので、このうちで判別式が平方数となるものを探すと

m=9852367

となり、このうち2つのxのうち少なくともいずれか一方が整数になるようなものは

m=952367

です。


(別解もあります)

さて、本問は次のような別解で解答することもできます。

与式の両辺をm倍するとm2x2+16mx+m2+2m=0 (mx+8)2+(m+1)2=65と変形できます。65を2つの平方数の和に分解すると65=12+82=42+72の2パターンが考えられます。xが整数のとき mx+8 も整数ですから、組(mx+8,m+1)(±1,±8)(±8,±1)(±4,±7)(±7,±4)(複号任意)の計16通りが考えられ、これらのうち m0 かつxが整数となるものは

(m,x)=(7,1)(6,2)(3,5)(2,0)(または(2,8))、(5,3)(9,1)

の6組です。よって求める整数m

m=952367

となります。


(コメント)

普通に解く分には前者の解答で十分ですが、後者の平方完成による解答も注目に値します。65を2つの平方数の和で表すことで解決しましたが、実は65という数は、2つの異なる平方数の和で表すことのできる最小の数なのです。因みに同じ数を含んでいても良いなら、2つの平方数の和で表すことのできる最小の数は50です。実際に50=52+52=12+72と表せます。

つまり、1次の項の「16」という係数は与式がより多くの整数解を持つために仕組まれていた数なのでした。・・・ということは与式を以下のように作り変えても良さそうです。


《改題①》

mを整数とする。方程式 mx2+14x+m+2=0 の解のうち少なくとも1つが整数であるようなmをすべて求めよ。

(学習院大学2003 前期(文)第3問 改題①)


《考え方》

さて、両辺にmを乗じて同様に変形すれば与式は(mx+7)2+(m+1)2=50となります。よって組(mx+7,m+1)(±1,±7)(±5,±5)(±7,±1)(複号任意)の計12通りが考えられ、これらのうち m0 かつxが整数となるものは

(m,x)=(6,1)(4,3)(2,0)(または(2,7))、(6,2)(8,1)

の6組です。よって求める整数m

m=86246

となります。


(コメント)

答えの数は減りましたが、この改題でも十分立派な試験問題として機能しそうです。当時の出題者はワンランク上を目指したのでしょうか・・・(笑)?

改題①は本問のパワーダウン型ですが、無限にパワーアップさせることもできます。では次の問題をどうぞ。


《改題②》

mを整数とする。方程式 mx2+18x+m+4=0 の解のうち少なくとも1つが整数であるようなmをすべて求めよ。

(学習院大学2003 前期(文)第3問 改題②)


《考え方》

本問を1段階パワーアップさせてみました。

まず自力で解いてみましょう。やることはこれまでと同じです。

・・・答えは出ましたか?

85という数字が出てきたと思いますが、これは実は2つの異なる平方数の和で表すことのできる2番目に小さい数なのです。85=22+92=62+72 となることには解答を作る中で気付いて欲しいですね。

諸々の計算により、求めるmの値は

m=1184457

となります。


(コメント)

いかがでしょうか。普段あまり気にすることのない問題の裏側まで覗いてしまった気分になりませんか?  ・・・・・・ならない?

・・・いずれにせよ、作問サイドがあれこれ考えていることを幼気な受験生に対して詳らかにする必要がある訳ではありませんが、こういう一問一問の奥深さに気付くことで受験生の数学に対する面白さが芽生えてくれればなあ、と思う今日この頃です。

 

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