岡山大学2019年前期理系数学第2問

新元号も発表され、とうとう平成最後の1ヵ月を切りました(笑)。新しい時代というにはまだ何となく大げさな気もしますが、清々しく「令和」の時代を迎えたいものですね!

さて、今回は岡山大の整数問題を解説していきます。岡山大の理系数学では2016年以来、3年振りとなる整数分野からの出題です。

岡山大学2017年前期文系第2問の解説記事はコチラから。


《問題》

$a$、$b$を正の数とする。数列$\{x_n\}$を

$x_1 = a$、$x_2 = b$、$x_{n+2}=\dfrac{1+x_{n+1}}{x_{n}}$ $(n = 1, 2, 3, \cdots)$

により定める。以下の問いに答えよ。

(1)$x_6$、$x_7$ を$a$、$b$を用いて表せ。

(2)$x_n$ $(n = 1, 2, 3, \cdots)$ がすべて自然数になるような$a$、$b$の組をすべて求めよ。

(岡山大学2019年 前期理系第2問)


《考え方》

一見掴み所が無さそうですが、(1)が重大なヒントになっています。

●   ●   ●

解答例

 

(1)

 

$\begin{align} x_{3} &=\dfrac{1+x_{2}}{x_{1}} \\ &=\dfrac{1+b}{a} \end{align}$

 

$\begin{align} x_{4} &=\dfrac{1+x_{3}}{x_{2}} \\ &=\dfrac{1+\dfrac{1+b}{a}}{b} \\ &=\dfrac{1+a+b}{ab} \end{align}$

 

$\begin{align} x_{5} &=\dfrac{1+x_{4}}{x_{3}} \\ &=\dfrac{1+\dfrac{1+a+b}{ab}}{\dfrac{1+b}{a}} \\ &=\dfrac{1+a+b+ab}{b(1+b)} \\ &=\dfrac{(1+a)(1+b)}{b(1+b)} \\ &=\dfrac{1+a}{b} \end{align}$

 

$\begin{align} x_{6} &=\dfrac{1+x_{5}}{x_{4}} \\ &=\dfrac{1+\dfrac{1+a}{b}}{\dfrac{1+a+b}{ab}} \\ &=\dfrac{a(1+a+b)}{1+a+b} \\ &=\color{red}{a} \end{align}$

 

$\begin{align} x_{7} &=\dfrac{1+x_{6}}{x_{5}} \\ &=\dfrac{1+a}{\left(\dfrac{1+a}{b}\right)} \\ &=\color{red}{b} \end{align}$

 

以上より、$x_6=a$、$x_7=b$ と表せる。

 

 

 

(2)

 

数列$\{x_n\}$は $a$、$b$、$\dfrac{1+b}{a}$、$\dfrac{1+a+b}{ab}$、$\dfrac{1+a}{b}$ を繰り返す周期$5$の数列である。したがって、これらがいずれも自然数となるような正の数$a$、$b$を求めればよい。

 

まず、$a$、$b$は正の整数であることが必要である。

 

また、$\dfrac{1+b}{a}$、および $\dfrac{1+a}{b}$ が自然数となるためには$$\begin{cases} 1+b \geqq a \\ 1+a \geqq b \end{cases}$$が必要であるから、これより$$a-1 \leqq b \leqq a+1$$を得る。

 

ア)$b=a-1$ のとき$$\dfrac{1+b}{a}=1$$となり自然数である。また、$$\begin{align} \dfrac{1+a}{b}&=\dfrac{1+a}{a-1} \\ &=1+\dfrac{2}{a-1} \end{align}$$より、これが自然数となるためには $a=2$、$3$ に限られるが、このとき $\dfrac{1+a+b}{ab}$ の値はそれぞれ $2$、$1$ となり自然数であるから適する。

 

よって $(a,b)=(2,1),(3,2)$ は解である。

 

イ)$b=a$ のとき$$\dfrac{1+b}{a}=1+\dfrac{1}{a}$$となり、これが自然数となるためには $a=1$ に限られるが、このとき $\dfrac{1+a+b}{ab}$ および $\dfrac{1+a}{b}$ の値はそれぞれ $3$、$2$ となり自然数であるから適する。

 

よって $(a,b)=(1,1)$ は解である。

 

ウ)$b=a+1$ のとき$$\dfrac{1+a}{b}=1$$となり自然数である。また、$$\begin{align} \dfrac{1+b}{a}&=\dfrac{2+a}{a} \\ &=1+\dfrac{2}{a} \end{align}$$より、これが自然数となるためには $a=1$、$2$ に限られるが、このとき $\dfrac{1+a+b}{ab}$ の値はそれぞれ $2$、$1$ となり自然数であるから適する。

 

よって $(a,b)=(1,2),(2,3)$ は解である。

 

 

以上より、求める$a$、$b$の組は

 

$(a,b)=\color{red}{(1,1)}$,$(1,2)$,$(2,1)$,$(2,3)$,$(3,2)$

 

となる。

 


(コメント)

似た構図の題材として、今年の一橋大学の整数問題が挙げられます(詳しくは一橋大学2019年数学第1問の記事を参照してください)。文字で初項や第2項が定義されていても実は周期数列となっていることに気が付くことができれば、あとは簡単です。

本問の漸化式は非線形の3項間漸化式であり、普通は一般項を求めることはできません。少し変わった漸化式が出てきた際は無理に解こうとするのではなく、少し数列の様子を観察してみることがとても大切です。本問では親切に誘導設問が付けられていますが、誘導が無い場合にも落ち着いて対応できるようにしておきたいものです。



 

 

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