常用対数の仮数に関する整数問題(1961年北海道大学文類数学I第3問)

温故知新というほど有難いものかは分かりませんが、たまには趣向を変えて大昔の問題を扱ってみます。


 

$3$桁の整数$A$、$B$があって、$B$は$900$より大きく、$B$の常用対数の仮数は$A$の常用対数の仮数の$2$倍である。$A$、$B$を求めよ。

(1961年 北海道大学 文類数学I第3問)

 

考え方

今から60年以上も前の入試問題ですが、文系数学ということであれば意外と差の付きそうな良い問題だと思ったので紹介します。まずは自力で解いてみてください。

ここで対数の「仮数」とは、対数の小数部分のことです。例えば $\log_{10}2023=3.3059 \ldots$ における仮数は $0.3059 \ldots$ です。仮数に対して、対数の整数部分を「指標」と呼びます。$\log_{10}2023$ の指標は$3$です。

方程式を立てることができれば、あとは単純な不定方程式の問題です。まずは仮数を文字で置いて$A$、$B$の常用対数を表わしてみましょう。これら2本の式を連立して解き進めていきます。


解答例

整数$A$、$B$はともに$3$桁の整数であるから、常用対数の指標は$2$である。ここで$A$の常用対数の仮数を$a$とすると、$$\begin{cases} \log_{10}A=2+a & \cdots ①\\ \log_{10}B=2+2a & \cdots ② \end{cases}$$と表せる。$2 \times ①-②$ より、$$2\log_{10}A-\log_{10}B=2$$ $$\therefore \log_{10}\dfrac{A^2}{B}=2$$ $$\therefore \dfrac{A^2}{B}=10^2$$ $$\therefore A^2=10^2 B$$を得る。右辺が$10$の倍数であることから、少なくとも$A$は$2$の倍数かつ$5$の倍数となる。よって $A=10C$($C$は $10 \leq C < 100$ を満たす整数)と置けるから、$$C^2=B$$が成り立つ。いま、$B>900$ であるから $900<C^2<1000$ が必要となるが、$30^2=900$、$31^2=961$、$32^2=1024$ より、これを満たす整数$C$は$31$に限られる。ゆえに、求める整数$A$、$B$は$$\color{red}{A=310, \ B=961}$$である。


コメント

さて、皆さん正しい答えは求められたでしょうか? $3$桁の整数に常用対数($10$を底とする対数)をとると、指標(整数部分)は$2$となります。

実際、$\log_{10}310=2.49136 \ldots$、$\log_{10}961=2.98272 \ldots$ と条件を満たしており、正しく求められていることが分かります。3桁の整数の場合、$A^2=10^2 B$ という関係式が成り立つならば、常に$B$の仮数は$A$の$2$倍になることが従います。

本問の類題として、次のような問題を作ることができます。

 

$4$桁の整数$A$、$B$があって、$B$は$9000$より大きく、$B$の常用対数の仮数は$A$の常用対数の仮数の$3$倍である。$A$、$B$を求めよ。

 

解法はオリジナルの問題とほとんど同じです。

» 答えはこちら

答えは $A=2100$、$B=9261$ です。

$20^3=8000$、$21^3=9261$、$22^3=10648$ となることから絞り込むことができます。

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では、次の問題はどうでしょうか。

 

互いに異なる$5$桁の整数$A$、$B$があって、$B$の常用対数の仮数は$A$の常用対数の仮数の$4$倍であるという。このような整数$A$、$B$の組の総数を求めよ。

 

» 答えはこちら

答えは $7$ 組です。

$A=1000C$ と置くと、$10^4<C^4=B<10^5$ という必要条件から $10<C \leq 17$ が得られます。

因みに、$B$の常用対数の仮数が$A$の常用対数の仮数の $n-1$ 倍であるような互いに異なる$n$桁の整数$A$、$B$が存在するのは $n=25$ のときまでです。これは $11^{n-1}<10^n$ が成り立つ$n$の範囲から分かります。

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一見簡単な問題であっても、条件を緩めたり、一般化して拡張したりすることで、より深く楽しむことができます。皆さんも数学自給率を上げて素敵な日曜数学ライフを送りましょう!

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