世の中には「有名問題」として知られている問題が多数存在し、良くも悪くもその分野の代表例として紹介されます。例えば「$\sqrt{2}$が無理数であることを示せ」などといった証明問題は数ある有名問題の中でもその代表格ですね。この記事では整数分野の有名問題の中でもやや悪質(?)なものをちょっぴりご紹介します(笑)。
1問目は昨日と同様、整式の素数判定問題です。整数分野では有名問題の一種と言って差し支えないでしょう。剰余類を考えても良いですが・・・?
《問題》
$n^5+n^4+1$ が素数となるような正の整数$n$をすべて求めよ。
(業界有名問題)
(コメント)
よっしゃmodやんけ!・・・と思ったら最期、泥沼です(笑)。決して良問とは言えませんが、私たちに因数分解の大切さを教えてくれる問題です。実は$$\begin{align} & \ \ \ \ \ \ \ n^5+n^4+1 \\ &=(n^2+n+1)(n^3-n+1) \end{align}$$となるので $n \geqq 2$ のとき明らかに合成数です。したがって $n=1$ のときの$3$に限られます。残念ながらこういう問題では因数分解に気付けないとどうしようもありません。どういうモチベーション(動機)でこの因数分解を閃くのかは私でもよく分かりません・・・(笑)。
《問題》
$n^4+4$ が素数となるような正の整数$n$をすべて求めよ。
(業界有名問題)
(コメント)
これもmodではなく因数分解の問題です。$$\begin{align} & \ \ \ \ \ \ \ n^4+4 \\ &=(n^2+2)^2-4n^2 \\ &=(n^2+2n+2)(n^2-2n+2) \end{align}$$となるので $n \geqq 2$ のとき明らかに合成数です。したがって $n=1$ のときの$5$に限られます。これは「複二次式」の式変形がモチベーションとなっており、前の問題よりは何とかなるかなと思います。この問題は2004年の宮崎大で出題されたことがあります。
《問題》
等式$$\left(\sqrt{n^2-7n+11}\right)^{n^2-8n+7}=1$$を満たすような自然数$n$をすべて求めよ。
(業界有名問題)
(コメント)
「ルートの中身は正!」と条件反射的に考えてしまうと引っかかってしまう問題です。$n^2-7n+11>0$ として解くと$n$の値として$1$、$2$、$5$、$7$を得ますが、虚数の場合を考慮すると $n=3$ も答えになります。これは1998年の学習院大の問題なのですが、実際の採点現場はどのようになっていたのでしょうか・・・。今となっては知る由もありません。
(まとめ)
(最近の話ではありませんが)世の中には「解なし」を答えにする大学もあることですし、幾重にも重なる教授陣のチェックを潜り抜けてしまう出題ミスなども無い訳ではありません(この間もどこかの大学の図形問題(?)で出題ミスがありましたね)。受験生にとって入試とは人生を左右する大一番ですから、こういうことがあると憤りたくなるのも分かりますが、人間とは間違えてしまう程度の生き物であるという認識を強く持ち、試験場ではどっしりと構えて欲しいものです。律儀に最初の問題から順番に解く必要は全く無く、できる問題から解けるだけ解いていくというスタンスはこういう面でも非常に重要なのです。
(2018/07/19追記)
出題ミスについては当サイトの「2018年大学入試総括(主に数学)」の記事を参考にしてみてください。