今年の旭川医科大学から。整数問題ではないですが有理数に関する内容だったので取り上げてみます。
《問題》
$p$ は $2^p=3$ を満たす実数とする。このとき、次の各問いに答えよ。
問1 $p$ は無理数であり、$\dfrac{3}{2}<p<\dfrac{8}{5}$ であることを示せ。
問2 次の2式を満たす $x$、$y$ を $p$ を用いて表せ。$$2^{x+y-2}=9^{y-1}, \quad 2^{2 x-1}=3^{3 x-y+1}$$
問3 $a$、$b$ を有理数とする。次の2式を満たす有理数 $x$、$y$ が存在するように $a$、$b$ を求めよ。$$2^{x+y-2}=9^{y-a}, \quad 2^{2 x-b}=3^{3 x-y+1}$$
(旭川医科大学2020年 前期第4問)
《考え方》
誘導が丁寧に付いていますので、流れに乗って解きます。式変形の途中で文字式の割り算が出てくるので、$0$ないことを確かめながら丁寧に答案を作りましょう。
問1の不等式についてですが、これは $8<9$ を先に思い付いている訳ではなく、$2^{\frac{3}{2}}<3$ という示すべき不等式から逆算して得ています。
例えば、$\log_{10}2>0.3$ という不等式を示したいときは、
$\log_{10}2>0.3$
↓
$2>10^{0.3}=10^{\frac{3}{10}}$
↓
$2^{10}>10^{3}$($1024>1000$)
として最後の式(明らかに成り立つ不等式)から逆に辿れば示すことができます。問1ではこれと同じことをやるだけです。問2以降は$p$を使うことを思い付ければ、単なる連立方程式の問題になるので問題無く解答できるはずです。
もし問1が解けなくても、飛ばして問2や問3を無理やり解くことはできます(本問の場合は誘導設問が易しいのであまり考えられないですが…)。点をもぎ取ろうとする姿勢は合格する上で大切です。
● ● ●
解答例
問1
$$2^p=3 \quad \cdots (*)$$を満たす実数 $p$($>0$)が有理数であると仮定し、互いに素な正の整数$m$、$n$を用いて $p=\dfrac{n}{m}$ と表すと、$(*)$より$$2^n=3^m$$となるが、左辺の素因数は$2$のみであり、右辺の素因数は$3$のみである。よってこれは不合理。故に実数 $p$ は無理数である。
また、$8<9$ より$$2^3<3^2 \quad \therefore 2^{\frac{3}{2}}<3$$が成り立ち、$243<256$ より$$3^5<2^8 \quad \therefore 3<2^{\frac{8}{5}}$$が成り立つ。よって$$2^{\frac{3}{2}}<3<2^{\frac{8}{5}}$$ $$\therefore \dfrac{3}{2}<p<\dfrac{8}{5}$$が成り立つ。
□
問2
$9^{y-1}=3^{2y-2}$ であることに注意すると、$$\left\{\begin{array}{l}
2^{x+y-2}=9^{y-1} \\
2^{2 x-1}=3^{3 x-y+1}
\end{array}\right.$$ $$\therefore \left\{\begin{array}{l}
2^{x+y-2}=3^{2y-2} \\
2^{2 x-1}=3^{3 x-y+1}
\end{array}\right.$$となる。ここで$(*)$を用いると$$\left\{\begin{array}{l}
2^{x+y-2}=2^{p(2y-2)} \\
2^{2 x-1}=2^{p(3 x-y+1)}
\end{array}\right.$$ $$\therefore \left\{\begin{array}{l}
x+y-2=p(2y-2) \\
2 x-1=p(3 x-y+1)
\end{array}\right.$$を得る。これより$x$を消去すると$$\small \left(6 p^{2}-8 p+2\right) y=6 p^{2}-11 p+3$$ $$\small \therefore 2(3 p-1)(p-1) y=(3 p-1)(2 p-3)$$と整理できる。$(*)$より $\small (3 p-1)(p-1)\ne 0$ であるから$$y=\dfrac{2 p-3}{2(p-1)}$$を得る。これより$$x=-\dfrac{1}{2(p-1)}$$となる。よって、$$\small (x, y)=\color{red}{\left(-\dfrac{1}{2(p-1)}, \dfrac{2 p-3}{2(p-1)}\right)}$$が求める組である。
問3
問2と同様に式を整理すると$$\small \left\{\begin{array}{l}
x+y-2=p(2 y-2 a) \\
2 x-b=p(3 x-y+1)
\end{array}\right. \quad \cdots (**)$$を得る。$2y-2a \ne 0$ のとき$$\dfrac{x+y-2}{2y-2a}=p$$となる。右辺$p$は問1の結果より無理数であるが、$x$、$y$、$a$、$b$は有理数であるから左辺は有理数となり、不合理である。
したがって、このとき解は存在せず、$2y-2a=0$ が必要である。よって$(**)$の第1式より$$x+y-2=0$$となる。$(**)$の第2式についても同様に考えて$$\begin{cases}
3x-y+1=0 \\
2x-b=0
\end{cases}$$を得る。よって以上の4式$$\begin{cases}
y-a=0 \\
x+y-2=0 \\
3x-y+1=0 \\
2x-b=0
\end{cases}$$を連立して解いて$$\small (x, y)=\left(\dfrac{1}{4}, \dfrac{7}{4}\right),\ (a, b)=\left(\dfrac{7}{4}, \dfrac{1}{2}\right)$$を得る。これは確かに$(**)$を満たす。
よって、$$(a, b)=\color{red}{\left(\dfrac{7}{4}, \dfrac{1}{2}\right)}$$が求める $a$、$b$ の組である。
(コメント)
4元連立方程式が出てくるので少し怯みそうになりますが計算処理自体は易しいです。旭医の合格者の平均得点率は例年6割程度であり、本問はどちらかというと易問に分類されるレベルなので落とせません。あまり時間を掛けずに片付けられるのが理想です。