今回は東北大学の整数問題を取り上げます。指数関数を含むディオファントス方程式が題材で、文理共通の出題でした。
《問題》
$n$を正の整数、$a$、$b$を$0$以上の整数とする。
(1)$n \geqq 3$ のとき不等式 $2^n+n^2+8<3^n$ が成り立つことを示せ。
(2)不等式 $2^n+n^2+8 \geqq 3^n$ を満たす$n$をすべて求めよ。
(3)等式 $2^n+n^2+8 = 3^n +an+b$ を満たす$a$、$b$、$n$の組$(a,b,n)$をすべて求めよ。
(東北大学2020年 前期理系第3問)
《考え方》
誘導に乗りましょう。(1)は数学的帰納法で示します。(2)は(1)の結果から、$n$が$1$または$2$のときを考えればよいことが分かります。(3)は(2)の結果を利用して考えます。場合分け自体は単純ですが解となる組が多いので、数え漏らしが無いように注意しましょう。
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解答例
(1)
$n=3$ のとき、$(\text{左辺})=2^{3}+3^{2}+8=8+9+8=25$、$(\text{右辺})=3^{3}=27$ であるから、$25<27$ より与不等式は成立する。
$n=k \quad (k \geqq 3)$ のとき$$2^{k}+k^{2}+8<3^{k} \quad \cdots ①$$ が成立していると仮定する。
$n=k+1$ のとき、$$\begin{align} &\ \ \ \,\,\, 3^{k+1}-\left\{2^{k+1}+(k+1)^{2}+8\right\} \\ &=3 \cdot 3^{k}-2^{k+1}-(k+1)^{2}-8 \\ &>3\left(2^{k}+k^{2}+8\right)-2^{k+1}-(k+1)^{2}-8 \quad (\because ①) \\ &=2^{k}+2 k^{2}-2 k+15 \\ &=2^{k}+2 k(k-1)+15 \\ &>0 \quad (\because k \geqq 3) \end{align}$$よって $2^{k+1}+(k+1)^{2}+8<3^{k+1}$ が成り立つ。
以上より数学的帰納法により、$3$以上のすべての整数$n$に対して不等式$$2^n+n^2+8<3^n$$が成り立つことが示された。
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(2)
(1)の結果から、$2^n+n^2+8 \geqq 3^n$ を満たす正の整数$n$は $n=1,\,2$ に限られる。
$n=1$ のとき、$2^{n}+n^{2}+8=11, \quad 3^{n}=3$ であるから適する。
$n=2$ のとき、$2^{n}+n^{2}+8=16, \quad 3^{n}=9$ であるから適する。
よって求める正の整数$n$は $n=\color{red}{1,\,2}$ である。
(3)
$n$ は正の整数、$a$、$b$ は$0$以上の整数だから $an+b \geqq 0$ である。
よって,等式$$2^{n}+n^{2}+8=3^{n}+a n+b$$を満たす $n$ は不等式 $2^n+n^2+8 \geqq 3^n$ を満たすものに限るので、$n=1,\,2$ に限られる。
(ⅰ)$n=1$ のとき$$11=3+a+b \quad \therefore \quad a+b=8$$ $a$、$b$ は$0$以上の整数だから、これを満たす組は $(a, b)=(0,8)$、$(1,7)$、$(2,6)$、$(3,5)$、$(4,4)$、$(5,3)$、$(6,2)$、$(7,1)$、$(8,0)$ となる。
(ⅱ)$n=2$ のとき$$16=9+2a+b \quad \therefore \quad 2a+b=7$$ $a$、$b$ は$0$以上の整数だから、これを満たす組は $(a, b)=(0,7)$、$(1,5)$、$(2,3)$、$(3,1)$ となる。
以上より、求める組$(a,b,n)$は$$\begin{align}
(a, b, n) =\,& \color{red}{(0,8,1),(1,7,1),(2,6,1),(3,5,1),(4,4,1),} \\
&\color{red}{(5,3,1),(6,2,1),(7,1,1),(8,0,1),} \\
&\color{red}{(0,7,2),(1,5,2),(2,3,2),(3,1,2)}
\end{align}$$の計13組である。
(コメント)
今年の東北大の数学は易化傾向が目立ちました。本問も整数問題としてはそこまで難しくはなく、高得点帯での争いになったことと思います。数学に賭けていた受験生は憂き目を見る結果となったでしょう。例年はもっと捉えどころの無い問題が出ますが、今年はどれも手を付けやすい問題が並びました。数学に関しては、来年は難化することが予想されます。
本問のように、不等式によって解の候補を絞らせるタイプの不定方程式の問題は2016年に類題があります。東北大では過去問の類題が出題されることがあるので、過去問対策は入念にやっておきましょう。
“東北大学2020年前期数学(文系第2問,理系第3問)” への1件の返信