正五角錐の体積の求め方

正五角錐の体積の求め方を解説します。

 

 正五角錐について

「正五角錐」とは「底面が正五角形で、頭頂点から底面に下ろした垂線が底面の中心で交わる角錐」を指します。以下の図は各辺が等しい(側面が正三角形である)正五角錐を描いたものです。ここでは「頭頂点」を点$\mathrm{F}$、「底面の中心」を点$\mathrm{O}$としています。

正五角錐の定義により、正五角錐の側面は必ず二等辺三角形となります。正五角錐の体積は三角錐$\mathrm{OAB-F}$の体積を$5$倍すれば求められるので、求積のためには底面$\triangle \mathrm{OAB}$の面積と高さ$\mathrm{OF}$が分かれば十分です。

 

 全辺が等しい正五角錐の体積

ここで例として、すべての辺の長さが$1$であるような正五角錐の体積を求めてみましょう。このように全ての面が正多角形で全ての辺の長さが等しい凸多面体には「ジョンソンの立体」という名前が付いており、正五角錐は2番目のジョンソンの立体として知られています(1番目は正四角錐)。

 

すべての辺の長さが$1$であるような正五角錐の体積を求めよ。

 

まず底面を考えます。

中心角 $\angle \mathrm{AOB}=\dfrac{2}{5}\pi=72^{\circ}$ の正弦($\sin$)と正五角形の外接円の半径が求められれば$\triangle \mathrm{OAB}$の面積が求められるので、これらの値を求めることを目指します。


正五角形によく使われる方法で進めます。上の図から$\triangle \mathrm{ABD}$を抜き出します。いま、$\mathrm{AB}=1$ です。

正五角形が外接している円を考えると、円周角の定理から$$\angle \mathrm{ADB}=\angle \mathrm{GAB}=\angle \mathrm{DAG}=\dfrac{\pi}{5}\,(=36^{\circ})$$が分かります。$\triangle \mathrm{ABD}$は $\mathrm{DA=DB}$(ともに正五角形の対角線)の二等辺三角形なので$$\angle \mathrm{DAB}=\angle \mathrm{DBA}=\dfrac{2}{5}\pi\,(=72^{\circ})$$であり、$\angle \mathrm{BGA}$は$\triangle \mathrm{AGD}$の外角だから$$\angle \mathrm{BGA}=\angle \mathrm{GDA}+\angle \mathrm{DAG}=\dfrac{2}{5}\pi\,(=72^{\circ})$$が分かります。これより $\angle \mathrm{BGA}=\angle \mathrm{ABG}$ なので$\triangle \mathrm{ABG}$は $\mathrm{AB=AG}$ の二等辺三角形と分かります。$\angle \mathrm{GAD}=\angle \mathrm{GDA}$ から$\triangle \mathrm{ABG}$が二等辺三角形で $\mathrm{GA=GD}$ となることも分かります。

さらに、以上のことから$\triangle \mathrm{ABG}$と$\triangle \mathrm{DAB}$が相似であることが言えます。これより $\mathrm{BG}=x$ と置くと、$$\mathrm{AB}:\mathrm{BG}=\mathrm{DA}:\mathrm{AB}$$ $$\therefore 1:x=1+x:1$$ $$\therefore x^2+x-1=0$$ $$\therefore x=\dfrac{\sqrt{5}-1}{2} \quad (\because x>0)$$と求められます。

ここで$\triangle \mathrm{ABG}$について余弦定理より$$1^2=1^2+x^2-2 \cdot 1\cdot x \cdot \cos 72^{\circ}$$ $$\therefore x^2-2x \cos 72^{\circ}=0$$ $$\therefore \cos 72^{\circ}=\dfrac{1}{2}x=\dfrac{\sqrt{5}-1}{4}$$を得ます。よって$$\begin{aligned} \sin 72^{\circ} &=\sqrt{1-\cos^2 72^{\circ}} \\ &=\dfrac{\sqrt{10+2 \sqrt{5}}}{4} \end{aligned}$$と求められます。

あるいは、頂点$\mathrm{D}$から辺$\mathrm{AB}$に下ろした垂線の足$\mathrm{H}$を考えて求める方法もあります。

このとき $\sin 72^{\circ}=\dfrac{\mathrm{DA}}{\mathrm{DH}}$ となるので、$$\begin{aligned} \sin 72^{\circ} &=\dfrac{\sqrt{5+2 \sqrt{5}}}{2} \div \dfrac{\sqrt{5}+1}{2} \\ &=\dfrac{\sqrt{10+2 \sqrt{5}}}{4} \end{aligned}$$と求められます。$\mathrm{DH}$の長さは三平方の定理で求めましょう。あるいは、計算しやすい $\cos 72^{\circ}=\dfrac{\sqrt{5}-1}{4}$ の方を先に求めて $\sin 72^{\circ}=\sqrt{1-\cos^2 72^{\circ}}$ から求めても良いでしょう。

次に正五角形の外接円の半径($\mathrm{OA}=\mathrm{OB}=a$ と置く)を求めます。

$\angle \mathrm{AOB}=72^{\circ}$ なので$\triangle \mathrm{AOB}$について余弦定理より$$\mathrm{AB}^2=\mathrm{OA}^2+\mathrm{OB}^2-2 \cdot \mathrm{OA} \cdot \mathrm{OB} \cdot \cos 72^{\circ}$$となるから、$$1^2=a^2+a^2-2 \cdot a\cdot a \cdot \cos 72^{\circ}$$ $$\therefore 2a^2-2a^2 \cos 72^{\circ}=1$$ $$\begin{aligned} \therefore a^2 &=\dfrac{1}{2(1-\cos 72^{\circ})} \\ &=\dfrac{2}{5-\sqrt{5}} \\ &=\dfrac{5+\sqrt{5}}{10} \end{aligned}$$より、$a>0$ に注意して$$a=\sqrt{\dfrac{5+\sqrt{5}}{10}}$$を得ます。

いま、$\triangle \mathrm{OAB}$の面積は $\dfrac{1}{2}a^2 \sin 72^{\circ}$で求められるので、底面の正5角形の面積を$S$とすると$$\begin{aligned} S &= 5 \cdot \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{5+\sqrt{5}}{10} \cdot \dfrac{\sqrt{10+2 \sqrt{5}}}{4} \\ &=\dfrac{(5+\sqrt{5})\sqrt{10+2 \sqrt{5}}}{16} \end{aligned}$$となります。

次に正5角錐の高さ$\mathrm{OF}$の長さを求めるために$\triangle \mathrm{OAF}$に注目します。$\triangle \mathrm{OAF}$は直角三角形なので$\mathrm{OF}$は三平方の定理で求めることができて、
$$\begin{aligned} \mathrm{OF} &=\sqrt{\mathrm{AF}^2-\mathrm{OA}^2} \\ &=\sqrt{1-a^2} \\ &=\sqrt{1-\dfrac{5+\sqrt{5}}{10}} \\ &=\sqrt{\dfrac{5-\sqrt{5}}{10}} \end{aligned}$$となります。

以上より、すべての辺の長さが$1$であるような正五角錐の体積を$V$とすると$$\begin{aligned} V &=\dfrac{1}{3}S\cdot \mathrm{OF} \\ &=\dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{(5+\sqrt{5})\sqrt{10+2 \sqrt{5}}}{16} \cdot \sqrt{\dfrac{5-\sqrt{5}}{10}} \\ &=\dfrac{(\sqrt{5}+1)\sqrt{5+\sqrt{5}}\sqrt{5-\sqrt{5}}}{3 \cdot 16} \\ &=\dfrac{(\sqrt{5}+1)\sqrt{25-5}}{3 \cdot 16} \\ &=\color{red}{\dfrac{5+\sqrt{5}}{24}} \end{aligned}$$となることが分かります。割とキレイな結果が得られましたね。


 

正5角形内部の二等辺三角形の相似から$\dfrac{2}{5}\pi$や$\dfrac{1}{5}\pi$の三角比を求める手順は知識として知っておいた方が良いと思います。

なお、表面積は1辺が$1$の正三角形が5つと、1辺が$1$の正5角形が1つなので、$${5{\sqrt {3}}+{\sqrt {25+10{\sqrt {5}}}} \over {4}}$$と求められます。

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