今回は今年の神戸大学の後期入試から整数問題をピックアップします。
《問題》
$m$、$n$ を $0<m<n$ をみたす整数とする。$\alpha$、$\beta$ を $0< \alpha< \dfrac{\pi}{2}$、$0< \beta< \dfrac{\pi}{2}$、$m=\tan\alpha$、$n=\tan\beta$ をみたす実数とする。以下の問に答えよ。
(1)$\tan\dfrac{7\pi}{12}$ の値を求めよ。
(2)$\alpha+\beta>\dfrac{7\pi}{12}$ であることを示せ。
(3)$\tan(\alpha+\beta)$が整数となるような組$(m,n)$をすべて求めよ。
(神戸大学2019年理系 後期第1問)
《考え方》
後期試験ということなら(3)が誘導無しで出題されてもおかしくない設定の問題です。幸いなことに非常に丁寧に誘導が付けられていますので、フォローするだけで難なく解答できると思います。タンジェントの加法定理は覚えておきたいところですが、もし忘れてしまったとしても、その場で導出できれば問題ありません。
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解答例
(1)
$$\begin{align} & \ \ \ \tan\dfrac{7\pi}{12} \\ &=\tan\left(\dfrac{\pi}{3}+\dfrac{\pi}{4} \right) \\ &=\dfrac{\tan\dfrac{\pi}{3}+\tan\dfrac{\pi}{4}}{1-\tan\dfrac{\pi}{3}\cdot\tan\dfrac{\pi}{4}} \\ &=\dfrac{\sqrt{3}+1}{1-\sqrt{3}\cdot 1} \\ &=\color{red}{-2-\sqrt{3}} \end{align}$$
(2)
$m$は $1\,\left(=\tan\dfrac{\pi}{4}\right)$ 以上の整数だから$$\tan\dfrac{\pi}{4}\leqq m=\tan\alpha$$が成り立つ。また、$n$は $2\,\left(>\tan\dfrac{\pi}{3}\right)$ 以上の整数だから$$\tan\dfrac{\pi}{3}< n=\tan\beta$$が成り立つ。
関数 $\tan x$ は $0< x< \dfrac{\pi}{2}$ の範囲で単調増加であるから、これより$$\dfrac{\pi}{4}\leqq \alpha,\ \dfrac{\pi}{3}< \beta$$が言える。よって、$$\alpha+\beta >\dfrac{\pi}{4}+\dfrac{\pi}{3}=\dfrac{7\pi}{12}$$である。
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(3)
$mn \geqq 2$ であるから$$\tan(\alpha+\beta)=\dfrac{m+n}{1-mn}< 0$$であり、$\dfrac{7\pi}{12}< \alpha+\beta$ を満たすので、$$-2-\sqrt{3}<\dfrac{m+n}{1-mn}<0$$となる。これより、取り得る整数値は$$\dfrac{m+n}{1-mn}=-3,\ -2,\ -1$$に絞られるので、それぞれ整理して$$(3m-1)(3n-1)=10,$$ $$(2m-1)(2n-1)=5,$$ $$(m-1)(n-1)=2$$を得る。このうち、$m\geqq 1$、$n\geqq 2$、$m<n$ を満たすような整数の組は、$$(m,\ n)=\color{red}{(1,\ 2),\ (1,\ 3),\ (2,\ 3)}$$となる。
(コメント)
$\tan$関数と整数の相性は悪くないので、しばしば整数問題の題材となります(1984年の一橋大の整数問題などは有名です)。本問に関しては丁寧過ぎとも言える誘導設問が設置されており、角度の範囲にさえ気を付ければ、後期試験としてはかなりストレートフォワードに解ける問題でした。
また、今年から神戸大では解答例を公開しているようです。但し、文系科目や、何故か物理と地学は解答例が公開されていません。入試の透明性向上を図った措置と思いますが、まずはその一歩から、というところでしょうか。