複雑な定積分の極限値(2017年日本医科大学前期数学第3問)

本日は2017年の日本医科大学の前期試験から、一見すると手の付けにくそうな定積分の極限に関する問題を取り上げます。


《問題》

次の極限値を求めよ。limxππx(x2+πt)et2(x3πx2+πxππ)t2logtdt

(2017年日本医科大学 前期第3問)


《考え方》

解き方は大きく分けて2つ考えられます。1つは平均値の定理を利用する方法、もう1つは微分係数の定義に持ち込む方法です。いずれの方法でも意外にあっさり解けてしまうので、両方の考え方をマスターしておきましょう。ヒントが一切与えられていないので差が付く問題です。


解答例①

f(t)=(x2+πt)et2(x3πx2+πxππ)t2logtと置く。π<x のとき、πtx におけるf(t)の最大値をM、最小値をmと置くと、mf(t)M より、m(xπ)πxf(t)dtM(xπ)が成り立つ。これより、πxf(t)dt=f(c)(xπ)πcx を満たすような実数cが存在する。π>x のときは不等号の向きが変わるだけで、同様に実数cが存在することが言える。

 

ここでf(c)(xπ)=(x2+πc)ec2(x3πx2+πxππ)c2logc(xπ)=(x2+πc)ec2(x2+π)c2logcであり、xπ のとき cπ となるから、極限値はlimxππx(x2+πt)et2(x3πx2+πxππ)t2logtdt=(π+ππ)eπ(π+π)πlogπ=2eππlogπと求められる。

 


解答例②

 

まずπx(x2+πt)et2(x3πx2+πxππ)t2logtdt=πx(x2+πt)et2(xπ)(x2+π)t2logtdt=1x2+π(x2πxet2t2logtdtxπ+πxxet2tlogtdtxπ)のように変形する。

 

ここで πxet2t2logtdt=F(x)xxet2tlogtdt=G(x) と置くと、F(π)=0G(π)=0 であるからlimxπF(x)xπ=limxπF(x)F(π)xπ=F(π)=ex2x2logx limxπG(x)xπ=limxπG(x)G(π)xπ=G(π)=ex2xlogxと計算できる。

 

したがって、極限値は1π+π(πeππlogπ+πeππlogπ)=2eππlogπとなる。

 


(コメント)

ヒントが全く与えられておらず、とっかかりの少ない問題です。しかし求めるのは極限値なので、はさみうちの原理や微分係数の定義などに持ち込めないか、という視点でアプローチすることができると思います。はさみうちの原理を用いる場合は平均値の定理を利用することになります。一方で、不定積分を仮定して導関数の定義から極限値を求める方法も有効なので、一度さらっておくと良いでしょう。

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