通過領域のシンプルな良問(2003年千葉大学前期理系数学第2問)

特定の条件を満たすような図形の通過領域を求める問題は難関大で頻出です。今回は千葉大学の入試から通過領域に関するシンプルな良問を取り上げます。


 

放物線 C:y=x2 上の2点ABは、直線ABCで囲まれる図形の面積が16になる、という条件を満たしながらC上を動くとする。このとき、直線ABが通りうる点の範囲を求め、図示せよ。

(2003年千葉大学前期理系 第2問)

 

 考え方

まずは2点ABx座標をabのように置き、問題文の条件を満たすような直線ABの方程式を求めましょう。与えられた条件によりパラメータの一方が消去できます。領域を求める方法は順像法でも逆像法でも構いません。本問の場合は方程式がaの2次式を含むので、どちらかと言えば逆像法による解法が簡明でしょう。


解答例

 

2点ABx座標をabと置き、a<b を仮定する。

 

 

A(a,a2)B(b,b2)より、直線ABの方程式はy=b2a2ba(xa)+a2 y=(a+b)xabとなるから、直線ABと放物線Cとで囲まれる部分の面積SS=ab{(a+b)xabx2}dx=ab(xa)(xb)dx=16(ba)3と表せる。問題文の仮定より S=16 となるから、16(ba)3=16 ba=1を得る。b=a+1 を直線ABの方程式に代入するとy=(2a+1)xa2a となる。

 

aは全ての実数値をとりうるから、直線ABが通過する領域は、式aの2次方程式と見たときに実数解aをもつような点(x,y)の集合に対応する。式aについて整理するとa2(2x1)ax+y=0となる。これが実数解aをもつためには判別式DD0 を満たせばよい。D=(2x1)24(x+y)=4x24y+1より、点(x,y)が満たすべき条件はyx2+14()と求められる。よって、直線ABが通過する領域は下図の斜線部(境界線を含む)である。

 

 


 

逆像法は強力な手法ですが、その理屈を正しく理解できていないと大怪我をしてしまうことがあります。やってることはといえば、以下のような数学的な「意味のすり替え」に過ぎません。

「点(x,y)がある図形(今回の場合は直線)の通過領域に属する」ということは、「点(x,y)を通るような直線 y=(2a+1)xa2a が存在する」ということであり、これはつまり「方程式 y=(2a+1)xa2a を満たすような実数aが存在する」ということを意味します。こうした数学的な意味の取り換えを進めていくことで、最終的に実数条件が登場するのです。

本問のような通過領域の問題を解答するときに、なぜ実数条件を考えなければならないのかを理解しないまま逆像法を使っている人は多い印象です。訳も分からずとにかく変数を実数条件に突っ込めば良いというのは大きな間違いです。いわゆる数学Ⅰ・Aの「解の配置」の問題をみっちり訓練しておくことは、こういう問題でミスをしないようにするためにも重要です。


なお、本問は順像法でも簡単に解けます。以下、xをある定数と見なします。式についてy=(2a+1)xa2a=a2+(2x+1)a+x=(a2x12)2+x2+14 と平方完成できます。aは全実数の範囲を動くので、の最小値は存在せず、a=2x12 のとき最大値 x2+14 をとります。これより、あるxに対してyの取り得る範囲は yx2+14 となり、この結果はすべての実数xについて成立するので、これが求めるべき通過領域に一致します。これが順像法による解き方です。


通過領域問題に苦手意識を持っている人は多いので、攻略するのが早ければ早いほど差が付きます。通過領域の問題の解き方や考え方については「通過領域問題の攻略法」の記事に詳しくまとめてあります。順像法と逆像法の使いどころの解説をシリーズ化してあるので是非参考にして下さい!

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