金沢大学2017年前期 文系第2問

整式の倍数判定の問題です。指示通り数学的帰納法を用いて証明しましょう。$7$が素数なのでフェルマーの小定理とも関係の深い問題とも言えます。


《問題》

次の問いに答えよ。ただし、${}_m \mathrm{C}_k$は$m$個から$k$個取る組合せの総数を表す。

(1)$k=1,2,3,4,5,6$ に対して、${}_7 \mathrm{C}_k$は$7$の倍数であることを示せ。

(2)$p$は素数とし、$k$は $1 \leqq k \leqq p-1$ を満たす自然数とする。${}_p \mathrm{C}_k$は$p$の倍数であることを示せ。

(3)すべての自然数$n$に対して、$n^7-n$ は$7$の倍数であることを示せ。

(金沢大学2017 前期文系第2問)


《考え方》

(1)は確認するだけでOKです。

(2)は先日の「創作整数問題#5」でも触れた内容です。二項係数${}_p \mathrm{C}_k$は$$\begin{align}{}_p \mathrm{C}_k&=\dfrac{p!}{(p-k)!k!}\\&=p\cdot\dfrac{(p-1)!}{(p-k)!k!}\end{align}$$と表せます。 $1 \leqq k \leqq p-1$ および$p$が素数であることからこの分母$(p-k)!k!$の素因数には$p$が含まれません。二項係数${}_p \mathrm{C}_k$は整数ですから$\dfrac{(p-1)!}{(p-k)!k!}$は整数でなければなりません。したがって${}_p \mathrm{C}_k$は$p$の倍数となります。

(3)合同式を使えばすぐに片付きそうですが、ここでは(2)を有効利用する方針で解いてみます。そこで $$a_n=n^7-n$$ として、差 $a_{n+1}-a_n$ を考えます。これを計算しますと、$$\begin{align}& \ \ \ \ \ a_{n+1}-a_n \\ &=(n+1)^7-(n+1)-\{n^7-n\} \\ &=(n+1)^7-n^7-1 \\ &={}_7 \mathrm{C}_1 n^6+{}_7 \mathrm{C}_2 n^5+{}_7 \mathrm{C}_3 n^4 \\ & \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ +{}_7 \mathrm{C}_4 n^3+{}_7 \mathrm{C}_5 n^2+{}_7 \mathrm{C}_6 n \end{align}$$となります。これに(2)の結果を $p=7$ として適用すると、これは$7$の倍数になっていることが言えます。よって差 $a_{n+1}-a_n$ は$7$の倍数です。よって数学的帰納法を使うには$a_n$が$7$の倍数であることを示せば良いことになります。

ここで、$a_1=0$、$a_2=126=7 \cdot 18$ となり $n=1,2$ のとき、$a_1$、$a_2$が$7$の倍数であり、差 $a_2-a_1$ も$7$の倍数なので帰納的に差 $a_{n+1}-a_n$ が$7$の倍数であることが言えますから、結局すべての自然数$n$について$a_n$が$7$の倍数であることが言えます。よって示されました。


(コメント)

$p$が素数なら $n^p-n$ が$p$で割り切れるという事実は整数分野では頻出事項です。実際の試験では上記のようなアウトラインを書くだけでなく、しっかりと論証してください。

 

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