今年の首都大学東京の理系ではユークリッドの互除法に関する問題が出題されましたが、文系では多項式の解と係数の関係に関する有名な整数問題が出題されました。多くの大学の過去問に類題があるので、対策していた人にとってはかなり有利な問題だったと思います。
《問題》
整数を係数とする3次式について、以下の問いに答えなさい。
(1)有理数 が方程式 の1つの解であるとき、 は整数であることを示しなさい。
(2)整数 、、 のいずれも で割り切れないとき、方程式 は有理数の解をもたないことを示しなさい。
(首都大学東京2018年文系 第2問)
《考え方》
(1)
こういうタイプの問題では、有理数を互いに素な整数、でと置くのが定石です。これより方程式 は と式変形できます。よってはの約数となりますが、整数、は互いに素なので に限られます。したがって、有理数 が方程式 の1つの解であるとき、 は整数であることが示されました。
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(2)
与えられた条件を式に直してみましょう。、、はそれぞれ以下のようになります。これらがで割り切れないとき、 で考えたときの値であるはいずれもで割り切れません。
(1)より、方程式 が有理数 を解としてもつとき、解は整数となります。そこで整数により、方程式 が 、 を解にもつ場合をそれぞれ考えます。
まず のとき、となりますが、先程確かめた通りはで割り切れないのでこれはで割り切れません。また、 のときとなりますが、 もで割り切れないので、いずれの場合もで割り切れません。
したがってこれらはで割り切れない整数値を取るので、になることはありません。よって方程式 は整数解をもちませんから、有理数の解をもたないことが示されました。
(コメント)
(2)は典型題ですので、似た問題をどこかで見かけたことがあるという方も多いのではないでしょうか。例えば、1980年の三重大にほとんど同じ問題が出題されていますし、本問が「で割り切れないとき」としているのに対して1981年の東京女子医大では偶奇の別による同様の問題が出題されています。最近では2001年の神戸大、2003年の鹿児島大(鹿児島大の問題は2次式のバージョンで、残念ながらやや悪問です・・・)などで出題歴があります。・・・あまり最近でもないですかね?
多項式に関する問題として、本問とは趣向が異なるものを1つだけ提示しておきます。1997年の名古屋大の問題です。本問よりもやや難しいかもしれませんが、一度は解いておくべき良問です。
《問題》
(1)多項式 (、、は実数)を考える。、、 がすべて整数ならば、すべての整数 に対し、 は整数であることを示せ。
(2)、、 がすべて整数の場合はどうか?
(名古屋大学1997年前期 理系(選択)第4問)
(雑談)
ありがたいことに、当サイトには全国各地からアクセスがあるのですが、たまにアメリカやドイツ、オーストラリアなどからも複数のユーザーに閲覧して頂けているようです。これは当サイトのコンテンツが数学だからなのでしょうか・・・?