2次式f(n)が平方数となるような正の整数nの個数(2025年東京大学前期理系数学第4問)

今年の東大理系数学の整数問題は論証題でした。


問題

この問いでは、0 以上の整数の 2 乗になる数を平方数と呼ぶ。\( a \) を正の整数とし、
\[
f_a(x) = x^2 + x-a
\]とおく。

(1) \( n \) を正の整数とする。\( f_a(n) \) が平方数ならば、\( n \leq a \) であることを示せ。

(2)\( f_a(n) \) が平方数となる正の整数 \( n \) の個数を \( N_a \) とおく。次の条件 (i), (ii) が同値であることを示せ。

(i) \( N_a = 1 \) である。

(ii) \( 4a + 1 \) は素数である。

(2025年 東京大学 理科前期第4問)


(1)

$ f_a(n) = n^2+n-a $ が平方数であると仮定する。まず $f_a(n)$ が平方数なら、特に $f_a(n) \ge 0$ である。

$n > a$ と仮定する。このとき \[ n^2 + n-a > n^2 + n-n = n^2. \] すなわち $f_a(n)$ は $n^2$ よりも大きくなる。次に、$n^2 + n-a$ と $(n+1)^2$ を比較する。 \[ (n+1)^2 = n^2 + 2n + 1. \] ここで $n \ge 2$ ならば \[ n^2 + n \le n^2 + 2n < n^2 + 2n + 1 = (n+1)^2. \] したがって \[ n^2 + n-a \le n^2 + n \le (n+1)^2-1 < (n+1)^2. \] よって \[ n^2 < f_a(n) = n^2 + n-a < (n+1)^2. \] すると、$f_a(n)$ は $n^2$ と $(n+1)^2$ の間にある整数となるが、そこには新たな平方数は存在しない(連続する平方数の差は $2n+1$ であることから、$n^2+1,\,n^2+2,\dots,(n+1)^2-1$ のいずれも平方数ではない)。

これは「$f_a(n)$ が平方数」と矛盾する。以上の矛盾は「$n > a$」を仮定したところから生じたので、これは誤りである。従って $n \le a$ が成り立つ。

以上により、「$f_a(n)$ が平方数となるならば必ず $n \le a$ である」ことが示された。

(2)

「$N_a=1 \Longrightarrow 4a+1$ は素数」の証明:

$N_a=1$ とは、「$f_a(n)$ が平方数となる正の整数 $n$ がちょうど1つしか存在しない」という意味である。そこで $f_a(n)=k^2$ をみたすペア $(n,k)$ は一意的となる。

$f_a(n)=k^2 \Longrightarrow n^2 + n-a = k^2$.
これを両辺4倍して $(4a+1)$ を加えると、
\[
\begin{aligned}
4(n^2 + n-a) + (4a+1)
&= 4n^2 + 4n -4a + (4a+1) \\
&= 4n^2 + 4n +1 \\
&= (2n+1)^2.
\end{aligned}
\]よって
\[
(2n+1)^2-4k^2
= 4a+1.
\]

左辺は
\[
(2n+1)^2-(2k)^2
= \bigl((2n+1)-2k\bigr)\,\bigl((2n+1)+2k\bigr).
\]ここで $(2n+1)\pm 2k$ はともに正の整数であり(実際 $n^2+n-a=k^2\ge0$ なら $n$ はそれなりに大きくなるため $2n+1>2k$ が成り立つとみなせる)、したがって $4a+1$ の正因数分解を一つ与えている。

「$f_a(n)=k^2$ となる $(n,k)$ が一意しかない」という仮定より、上のような正因数分解
\[
4a+1
=\bigl((2n+1)-2k\bigr)\,\bigl((2n+1)+2k\bigr)
\]も($1\times(4a+1)$ のような自明な因数分解を除けば)ちょうど一通りしか現れない。したがって $4a+1$ は素数である。($4a+1$ が素数でないときに生じる「$4a+1=rs$ という形の因数分解」が排除されている)


「$4a+1$ は素数 $\Longrightarrow N_a=1$」の証明:

$4a+1$ が素数であると仮定すると、正の因数分解
\[
4a+1 = uv, \quad u,v \in \mathbb{Z}^+
\]は $u=1,v=4a+1$(あるいは $u=4a+1,v=1$)しか存在しない。いま、
\[
(2n+1)^2-(2k)^2 = 4a+1
\]すなわち\[
\bigl((2n+1)-2k\bigr)\,\bigl((2n+1)+2k\bigr) = 4a+1
\]となるなら、上記の素数分解から
\[
(2n+1)-2k = 1, \quad (2n+1)+2k = 4a+1
\]に限られる。よって$$2n+1 = 1 + 2k$$であり、$$1 + 2k + 2k = 4a+1$$ $$\therefore 4k = 4a$$ $$\therefore k=a$$より\[
2n+1 = 1 + 2a
\Longrightarrow
n = a.
\]が導かれる。

したがって $(n,k)=(a,a)$ のとき $f_a(a) = a^2+a-a = a^2$ が平方数になる。さらに(1)の結果から「$n \le a$」という制約があり、$n=a$ 以外では $f_a(n)$ が平方数にならない。よって $f_a(n)$ が平方数になる正整数 $n$ は $n=a$ ただ1つであり、したがって $N_a=1$ である。


以上により、「$N_a=1$ である」ことと「$4a+1$ が素数である」ことは同値であることが示された。


☑コメント

(1)は、隣接する平方数の間には平方数が存在しないという単純な論理で矛盾を導き、背理法で処理することができます。累乗数ではよくある式変形なので、できなかった人はマスターしておきたいところです。

問題は(2)でしょうか。$f_a(n)=n^2+n-a$ が平方数 $k^2$ となるという条件は、ある正の整数 $n$、$k$ に対して
\[
(2n+1)^2-(2k)^2 = 4a+1
\]が成り立つことに相当します。この左辺は
\[
(2n+1-2k)\,(2n+1 + 2k)
\]
を積の形に変形することができ、これは $4a+1$ の正の因数分解となっています。

問題文で与えられている $N_a=1$ とは「$f_a(n)$ を平方数にする $n$ がちょうど1個しかない」ことを意味しており、これは結局 $4a+1$ に対応する非自明な因数分解が1通りのみであるかどうか、と同値になっています。つまり、この「因数分解が1通りしかない」とは、$4a+1$ が素数であることに他ならないのです。

証明は上記の解答例のように、十分性と必要性に分けて行うのが分かりやすいでしょう。


 

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