2次曲線である円や楕円、双曲線はいずれも1文字の媒介変数で表示することができます。今回はそれぞれの2次曲線の媒介変数表示と導出方法をご紹介します!
2次曲線とは
実数の変数$x$、$y$を用いて$$Ax^2+Bxy+Cy^2+Dx+Ey+F=0$$という形の方程式で表される曲線は「2次曲線」と呼ばれます。ここで$A$~$F$は実数の定数で、これらの値によって曲線の形が決まります。
例えば、方程式$$4x^2-4xy+3y^2+x-3y-5=0$$によって陰関数表示される曲線は次のような楕円になります。
また、方程式$$x^2+3xy-2y^2+x-2y+9=0$$によって陰関数表示される曲線は次のような双曲線になります。
(メモ)
※これらのグラフは「desmos」というオンラインアプリを用いて表示しています。desmosで描画した曲線はパラメータを自由にいじって形を変えることができます。多項式だけでなく様々な関数がサポートされているので、触ったことが無いという方は是非一度遊んでみることをお勧めします!
このような2次曲線は実数の媒介変数(パラメータ)を1つだけ用いて表示することができることが知られています。
円の媒介変数表示
円の方程式 $x^{2}+y^{2}=a^{2}$($x \ne -a$)を媒介変数$t$で表示すると次のようになります。$$\color{red} x=\dfrac{a\left(1-t^{2}\right)}{1+t^{2}}, \quad y=\dfrac{2 a t}{1+t^{2}}$$これらを円の方程式に代入すると、ちゃんと両辺が一致することが分かります。
それもそのはずで、この媒介変数表示は$$\left(1-t^{2}\right)^{2}+(2 t)^{2}=\left(1+t^{2}\right)^{2}$$という恒等式から導かれています。この恒等式は任意の$t$について成り立つので、上記の媒介変数表示で表される点の軌跡(下図赤色の曲線)は$t$を全実数の範囲で動かしたときに円全体を描きます。
※$t$の値は青色の点をドラッグすれば動かせます。
点$(-a,0)$を通る傾き$t$の直線 $y=t(x+a)$ と円 $x^{2}+y^{2}=a^2$($x \ne -a$)の共有点を考えることにより、$t$をパラメータとした円の媒介変数表示を与えることができます。
(メモ)
ここで、タンジェントの半角を利用する有名な変数変換「ワイエルシュトラス置換」について触れておきます。
円の方程式 $x^{2}+y^{2}=1$ は角$\theta$を用いて三角関数により$$\begin{cases} x=\cos \theta \\ y= \sin \theta \end{cases}$$と媒介変数表示することができます。こちらは円上のすべての点が表現可能です。ここで$$t=\tan \dfrac{\theta}{2} \quad (-\pi<\theta<\pi)$$と変数を変換すると、このとき$$\begin{cases} \cos \theta=\dfrac {1-t^{2}}{1+t^{2}} \\ \sin \theta=\dfrac {2t}{1+t^{2}} \end{cases}$$と表現できることが知られています(詳しい導出はこちら)。この関係を使って$$\begin{cases} x=\dfrac{a\left(1-t^{2}\right)}{1+t^{2}} \\ y=\dfrac{2 a t}{1+t^{2}} \end{cases}$$を導くことができます。
楕円の媒介変数表示
楕円 $\dfrac{x^{2}}{a^{2}}+\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=1$($x \ne -a$)の媒介変数表示は、三角関数を使えば$$\begin{cases} x=a\cos \theta \\ y= b\sin \theta \end{cases}$$と表示できるので、上記の $t=\tan \dfrac{\theta}{2}$ という変換を施して$t$による媒介変数表示$$\color{red} x=\dfrac{a\left(1-t^{2}\right)}{1+t^{2}}, \quad y=\dfrac{2 b t}{1+t^{2}}$$が得られます。
円の場合と同様に、傾き$t$の直線と楕円の交点から媒介変数表示を求めることもできます。
双曲線の媒介変数表示
双曲線 $\dfrac{x^{2}}{a^{2}}-\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=1$ は三角関数を使えば$$\begin{cases} x=\dfrac{a}{\cos \theta} \\ y= b\tan \theta \end{cases}$$と表示できるので、変換 $t=\tan \dfrac{\theta}{2}$ により、$$\color{red} x=\dfrac{a\left(1+t^{2}\right)}{1-t^{2}}, \quad y=\dfrac{2 b t}{1-t^{2}} \quad\left(t^{2} \neq 1\right)$$という媒介変数表示が得られます。$t=\tan \dfrac{\theta}{2}$ のときに $\tan \theta = \dfrac{2t}{1-t^{2}}$ となることは、定義式 $\tan \theta = \dfrac{\sin \theta}{\cos \theta}$ に$\sin \theta$と$\cos \theta$の媒介変数表示を代入すれば分かります。$t^{2} \neq 1$ という制約が課されるのは、$\tan \dfrac{\theta}{2} = \pm 1$ のとき $\dfrac{\theta}{2}=\pm\dfrac{\pi}{4}$ となり $y= b\tan \theta$ が発散する(実数値を持たない)ためです。
また、漸近線に平行な直線 $y=-\dfrac{b}{a}x+t$ と双曲線 $\dfrac{x^{2}}{a^{2}}-\dfrac{y^{2}}{b^{2}}=1$ の交点を考えることにより、$$\color{red} x=\dfrac{a}{2b}\left(t+\dfrac{b}{t}\right), \ y=\dfrac{1}{2}\left(t-\dfrac{b}{t}\right) \quad (t \ne 0)$$などの媒介変数表示が得られます。標準形の直線の方程式から出発すればもう少し対称性のある表示になります。$t=0$ のときは直線 $y=-\dfrac{b}{a}x+t$ が漸近線に一致し、双曲線との交点を持たないため除外する必要があります(得られた式の形を見ても $t \ne 0$ が必要であることが分かりますね)。
この他にも、双曲線関数を用いた$$\color{red} x=\dfrac{a(e^{t}+e^{-t})}{2}, \ y=\dfrac{b(e^{t}-e^{-t})}{2}$$というパラメータ表示が知られています。ここで、$y=\dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}$ は「カテナリー曲線」や「懸垂線」などと呼ばれる曲線で、双曲線関数 $y = \cosh x$ と相似な曲線です。
2次曲線の解析的・幾何的な性質は非常に面白いのですが、媒介変数表示は数Ⅲのやや発展的な内容のためか、知識があやふやな人が多い単元でもあります。入試で出題されても慌てないように基本事項は頭に入れておきましょう。教科書的な導出を解説しているウェブサイトはネットを漁れば無数にヒットする上に、どの説明も大した違いは無いので、どれかピンとくるものを参考にすれば良いでしょう。
2次曲線に親しむためには自分でグラフを色々と描いてみるのが一番良いと思います。最近では陽関数も陰関数もラクラク描画をこなす便利なオンラインアプリが無料で(!)利用できます。冒頭で紹介した「desmos」というオンラインアプリもその一つです。せっかくインターネット全盛の時代に生きているのですから、使わないのは損というものです。特に受験生の方や、受験生を指導する立場の方に積極的に使って欲しいと思います。