2007年灘中の整数問題について

今回は一昔前の灘中入試で出題された整数問題について取り上げます。出典は中学入試ですが題材は高校数学でも通用するものです。

 

 2007年灘中学校(1日目)第3問

 

$207$、$2007$、$20007$、$\cdots$、このように先頭が$2$で末尾が$7$、間はすべて$0$である整数のうち、$27$で割り切れるが、$81$では割り切れないものを考える。この中で最も小さい数は $\small \boxed{  }$ である。

 

「2007年」に引っ掛けた面白い問題です。正攻法は$9$で割ったときの商がさらに$3$や$9$で割り切れるかどうかを調べる方法でしょう。

問題文にあるような整数を$9$で割ったときの商を求めると、以下のようになります。

$207 = 9 \times 23$
$2007 = 9 \times 223$
$20007 = 9 \times 2223$
$200007 = 9 \times 22223$
$2000007 = 9 \times 222223$
$20000007 = 9 \times 2222223$

ここから、割られる数の$0$の個数と、商に現れる$2$の個数は一致することが観察されます。これより、$22 \ldots 223$ が$3$で割り切れて$9$では割り切れないようなものを求めればよいことが分かります。

ここで$3$の倍数判定法と$9$の倍数判定法が役に立ちます。$22 \ldots 223$ の各位の和が$3$で割り切れるが$9$では割り切れないようなものが求めるべき整数です。

間の$0$の個数が増えると商の各位の数の和は$2$ずつ増えていきます。

$23 \to 5$
$223 \to 7$
$2223 \to 9$
$22223 \to 11$
$222223 \to 13$
$2222223 \to 15$

$2222223$でやっと「各位の和が$3$で割り切れるが$9$では割り切れない」という条件を満たします。よって、求めるべき整数は、間に$0$が$6$個ある $\color{red}{20000007}$ ということになります($20007$は$81$で割り切れるのでダメ)。

 

 一般化

ここからは数式を使って一般化してみます。

十進法表記で$2$と$7$の間に$0$が$n$個あるような整数は $2 \times 10^{n+1}+7$ と表せます。これを$a_n$と置きます。つまり $a_n=2\underbrace{00 \ldots 00}_{n\text{個}}7$ です。

等比数列の和の公式から$$\dfrac{10^{n+1}-1}{10-1}=\underbrace{111 \ldots 111}_{n+1\text{桁}}$$と表せるので、$10^{n+1}$について整理して$$10^{n+1}=9 \times \underbrace{111 \ldots 111}_{n+1\text{桁}}+1$$を得ます。これを$a_n$に代入すると$$\begin{align} a_n &=2 \times (9 \times \underbrace{111 \ldots 111}_{n+1\text{桁}}+1)+7 \\ &= 2 \times 9 \times \underbrace{111 \ldots 111}_{n+1\text{桁}}+9 \\ &= 9 \times (\underbrace{222 \ldots 222}_{n+1\text{桁}}+1) \\ &= 9 \times \underbrace{222 \ldots 223}_{n+1\text{桁}} \end{align}$$となります。

これより、元の整数の$0$の個数と商に現れる$2$の個数が一致することが分かります。$\underbrace{222 \ldots 223}_{n+1\text{桁}}$ の各位の数の総和は $2n+3$ となるので、冒頭の灘中の問題は $2n+3$ が$3$で割り切れて$9$では割り切れないような$n$を求める問題に帰着します。


では、さらに高次の$3$の冪(ベキ)の剰余(=割った余り)はどうなるでしょうか。

$a_n=9 \times \underbrace{222 \ldots 223}_{n+1\text{桁}}$ であることは分かっているので、$q_n=\underbrace{222 \ldots 223}_{n+1\text{桁}}$ と置いて、$q_n$が$3^k$で割り切れて$3^{k+1}$で割り切れないような最小の$n$を調べれば良いでしょう。列挙すると次のようになります。

$k=1$:$n=6$(←灘中の問題に相当)
$k=2$:$n=3$
$k=3$:$n=12$
$k=4$:$n=147$
$k=5$:$n=66$
$k=6$:$n=309$
$k=7$:$n=1767$
$k=8$:$n=6141$
$k=9$:$n=12702$
$k=10$:$n=32385$

ここから規則性を見出すのは少し難しいと思います。灘中の問題設定に拘らなければ、どのような$n$について$q_n$が$3$の冪で割り切れるのかを調べさせる整数問題が(高校生向けに)作れそうです。

例えば、$q_n$が$9$で割り切れるためには$n$が $9m+3$ 型の整数($9$で割った余りが$3$)であることが必要ですが、これを証明させる問題は大学入試にも堪え得るレベルかもしれません。つまり、$2\underbrace{00 \ldots 00}_{9m+3\text{個}}7$ という形で表される整数は常に$81$の倍数になるということです。

他方、$q_n$が$3$で割り切れるためには$n$が $3m$ 型の整数($3$の倍数)であることが必要なので、$a_n$が$3^{3}$で割り切れて$3^{4}$で割り切れないような$n$を探すことは、「$9$で割った余りが$3$でないような$3$の倍数」を探すことに相当します。そのような整数で最小のものは$6$なので、冒頭の問題の答えは$20000007$になるという訳です。


十進法表記したときに先頭が$2$で末尾が$7$、間に$n$個の$0$が並ぶ $n+2$ 桁の整数$a_n$が$3$の冪で割り切れるための$n$の条件を列挙しておきます。$m$は$0$以上の整数を表します。

$3$ → 任意の$n$
$9$ → 任意の$n$
$27$ → $n=3m$
$81$ → $n=9m+3$
$243$ → $n=27m+12$
$729$ → $n=81m+66$
$2187$ → $n=243m+66$
$6561$ → $n=729m+309$
$19683$ → $n=2187m+1767$
$59049$ → $n=6561m+6141$
(キリがないのでここまで)

これは、上記で見たように、十進法表記したときに上$n$桁が$2$で末尾が$3$であるような $n+1$ 桁の整数$q_n$が$3$の冪で割り切れるための条件でもあります。興味のある方は証明を与えてみて下さい。

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