今年も受験シーズンがやってきました。受験生の皆さん、まずは共通テストお疲れ様でした。持てる力を存分に発揮できたことと思います。本稿では今年2023年の共通テスト数学ⅠAを解説していきます。管理人が問題を解いた際の雑感なども書き連ねていきます。
※数学ⅡBはこちらから。
全体の概観
昨年(2022年1月)の共通テスト数学ⅠAの平均点は37.96点と久しぶりの30点台という酷い有様でした。今年はというと、最終的な平均点は55.65点となり、数字の上では前年比+17.69点という大幅な易化となりました。実際、時間が全く足りないというタイプの試験問題ではなく、全体的にバランスの良い構成だったと思います。
昨年の反省を踏まえて、以下では、1題ずつ解説を紹介した後に管理人の雑感を簡単に述べるという形にしたいと思います。問題文は掲載していませんので、適宜お手元に用意してください。
※問題はこちらから閲覧できます。(大学入試数学問題集成様より)
目次
・数学ⅠA第1問〔1〕【数と式】
・数学ⅠA第1問〔2〕【平面図形・空間図形】
・数学ⅠA第2問〔1〕【データの分析】
・数学ⅠA第2問〔2〕【2次関数】
・数学ⅠA第3問【場合の数】
・数学ⅠA第4問【整数】
・数学ⅠA第5問【平面図形】
数学ⅠA第1問〔1〕【数と式】
以下、
〔1〕は不等式に関する計算問題でした。登場する文字が多いですが、特段難しいという訳ではありませんでした。
数学ⅠA第1問〔2〕【図形と計量】
正弦定理を用いると
※あるいは、
ここまでは単純な三角比の計算問題でした。(2)からは空間図形の問題になります。
三角錐
数学ⅠA第2問〔1〕【データの分析】
まず下図のように、各データの値(下側赤字)、データ値の累積(上側青字)、四分位範囲(上側緑字)を計算する。
これより、第1四分位数が含まれる階級は「② 1800以上2200未満」、第3四分位数が含まれる階級は「⑤ 3000以上3400未満」と分かる。また、
基本的な問題です。
(下図は問題文に示されている箱ひげ図である)
設問(i)は②が正答である。(解答欄エ)
⓪について、地域Eの第1四分位数は2000を上回っているため、小さい方から5番目は2000以上である可能性が排除できないので不適。
①について、地域Eと地域Wのデータの範囲は明らかに等しくないので不適。
③について、地域Eの第3四分位数と地域Wの中央値が同程度であることに注目すると、地域Wの方が2600未満の市の割合が多いとは言えない。
(ii)は分散の定義を問う問題である。偏差
要点を押さえられていれば、特に躓く点は無いと思います。
相関係数
「データの分析」の単元としては、昨年に比べてかなり平易な問題でした。相関係数については、データ点のバラつきから0.5よりは小さいと判断して、大雑把に目視で見積もった人もいたかも知れませんね…
数学ⅠA第2問〔2〕【2次関数】
放物線
問題文中の放物線
選択肢⓪は
選択肢①は
選択肢②は正答である。(解答欄サ)
選択肢③は
やや目新しい設定の問題でした。誘導がかなり丁寧なので、計算ミスにだけ注意したいですね。
「プロ選手のシュートの高さ」は
数式の見かけは複雑そうですが、落ち着いて丁寧に計算すればOKです。最後の概算が大雑把すぎて不安だという人は小数点以下第2位まで考慮した
数学ⅠA第3問【場合の数】
(下図は問題文に示されている球の繋ぎ方である)
(1)
図Bについて①→②→③→④と色を塗っていく方法を考えると、①は5通り、②は①以外の色で4通り、③は②以外の色で4通り、④は③以以外の色で4通りとなり、総数は
(2)
図Cについて①→②→③と色を塗っていく方法を考えると、①は5通り、②は①以外の色で4通り、③は①と②以外の色で3通りとなり、総数は
(3)
図Dについて、赤を2回使うのは「あ)①と③に赤を塗る」または「い)②と④に赤を塗る」の場合に限られる。
あ)のとき、②と④の色の塗り方は、赤以外の色を塗ればよいから
い)のとき、①と③の色の塗り方は、あ)の場合と同様に
よって求める場合の数は
(4)
図Eにおいて、赤を3回、青を2回使う場合、まず①は赤と青以外の色を塗らなければならないので
(5)
図Fにおいて、色の塗り方は図Bと共通であり、③と④が同じ色になる場合の数は図Cと共通(選択肢②)で
(6)
(5)の議論をそのまま利用すると、場合の数について以下の関係が成り立つ。
よって、
綺麗な誘導が付いている問題でした。上手に誘導に乗れた人は高得点だったと思います。なお、球には番号が付いており、すべての球は区別されています。数珠順列ではないので注意。
数学ⅠA第4問【整数】
以下、
正方形を作るとき、辺の長さについて
次に、赤い長方形を横に
また、縦の長さが横の長さよりも
問題設定を正しく把握して不定方程式に還元できれば、ごく普通の整数問題です。(2)からは別の長方形が登場します。
下図のように、赤い長方形を縦に
全体が長方形になるとき、縦の長さが一致しなければならないから、
次に、全体が長方形になるときを考える。
上記の内容から、作られる正方形の1辺の長さは
昨年のような桁数が巨大で煩雑な計算も無く、かなり解きやすかったのではないかと思います。(2)が少しややこしい印象を受けますが、誘導がとても丁寧なので不定方程式を立式する手順には困らないはず。
不定方程式は係数が大きいままだと解を求めにくいので、倍数の制約から置き換えにより係数を小さくしていくのが定石です。(2)の最後は
数学ⅠA第5問【平面図形】
直線
また、
したがって
ここまでは基本的な平面図形の証明問題です。円の中心を通る直線が弦と垂直に交わるとき、この直線は弦の垂直二等分線になります。
問題文の手順2の通りに作図すると以下のようになる。ここで、直線
いま、直線
よって、四角形
また、(1)と同様に
以上より、線分
(2)は(1)の考え方を利用する問題でした。直線
以上、今年(2023年)の共通テスト数学ⅠAを一通り解説しました。今回に関しては昨年のような小言コメントは不要でしょう(笑)。何かと昨年の問題と比較してしまいがちですが、分量や問題の質は全体的にバランスの取れた良い試験だったと思います。今後も、しっかり勉強してきた受験生が報われるような作問に努めていただきたいと思います。
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