前回に続き、本稿では今年2023年の共通テスト数学ⅡBを解説していきます。管理人が問題を解いた際の雑感なども書き連ねていきます。
※数学ⅠAはこちらから。
全体の概観
今年の数学ⅡBの平均点は61.48点となり、数学ⅠAと同様に前年比+18.42点という大幅な易化となりました。時間が足りなくなるような試験問題ではありませんでしたが、実は問題冊子のページ数は昨年比で増えています(29ページ → 32ページ)。
昨年の反省を踏まえて、以下では、各大問の区切りの良いところまで解説を紹介した後に管理人の雑感を簡単に述べる、という形にしたいと思います。問題文は掲載していませんので、適宜お手元に用意してください。
※問題はこちらから閲覧できます。(大学入試数学問題集成様より)
目次
・数学ⅡB第1問〔1〕【三角関数】
・数学ⅡB第1問〔2〕【対数・指数】
・数学ⅡB第2問〔1〕【微分法】
・数学ⅡB第2問〔2〕【積分法】
・数学ⅡB第3問【確率分布と統計】
・数学ⅡB第4問【数列】
・数学ⅡB第5問【ベクトル】
数学ⅡB第1問〔1〕【三角関数】
(1)
また、
(2)
また、
基本的な三角関数の問題です。単位円を描いて角度の範囲を確認しながら解いていきましょう。
(3)
問題文より
(4)
つまり
のときである。
また(3)から、
のときである。以上より、
のときである。(解答欄ソ~チ)
(4)では前問までの結果を利用します。(2)や(3)の時点で計算ミスをしているとその後が全滅しかねない意外と怖い問題だったかもしれません。(3)では
数学ⅡB第1問〔2〕【対数・指数】
(1)
(2)
定義より、
※
対数の定義に関する極めて基本的な問題でした。これは落とせません。
数学ⅡB第2問〔1〕【微分法】
(1)
(2)
図のように円柱の高さを
(1)より、
ごく普通の最小・最大の問題です。円錐に内接する円柱という問題設定もよく見かけるもので手こずった受験生は少ないものと思います。
数学ⅡB第2問〔2〕【積分法】
(1)
(2)
気温の積分値が開花の目安になるという面白い設定の問題です。(ii)では定量的な議論は不要で、
数学ⅡB第3問【確率分布と統計】
(1)
定義に従うと、
問題文中の「方針」に従うと、
(2)
ピーマンを
これより、ピーマン分類法によれば
問題文の誘導に従って
この問題を選択した人は少ないかもしれませんが、二項分布、正規分布の定義と性質が理解できていれば、それほど難しくはなかったかと思います。
数学ⅡB第4問【数列】
(1)
1年目のはじめに入金した
(2)
10年目の終わりの預金額は
金利という珍しい題材からの出題でした。等比数列のポイントが押さえられていれば、問題自体に難しいところはほとんどありませんね。
ところで、預金に1%も金利が付くなんて超低金利時代の現代では考えられないかもしれませんが、40年ほど前では定額貯金に5~6%もの金利が付いていました。金利5%というのは15年で元本が倍になる計算です(税金を考慮しない場合)。それから、どうでも良いですが、初めに問題文を読んだ際に前問の「ピーマン」と本問の「
数学ⅡB第5問【ベクトル】
(1)
(2)
(1)の①式より、
(3)(ⅰ)
式も煩雑ではなく、内積の定義式さえ分かっていればサクサク解けるはずです。
(3)(ⅱ)
特に、
よって、
後半は難しめですが、直線
全体としては(前年比で)かなり控えめなレベルの問題になった印象を受けました。ただし、問題冊子のページ数は昨年よりも増加しています…。今回の平均点は61.48点とかなり高水準であるため、2次試験のボーダーラインも高水準になると思われます。数学の得意な人にとってはほとんど差が付かなかった試験になったと言えそうです。来年の数学ⅡBはやや難化することが予想されます。
差が付きそうな問題は第1問の〔1〕でしょうか? 特段難しいという訳ではありませんが、誘導に乗りにくくケアレスミスを誘発しやすい問題だったと思います。第5問のベクトルも完答できていない人は意外と多そうです。問題の題材に目を向けると、ソメイヨシノの開花日時や預金の金利計算など、読解力を測るという共通テストらしい工夫のある問題が目立ちました。第1問〔2〕では背理法の証明を空欄補充する問題が出題されました。今回の問題は易しいものでしたが、同様の証明過程の空欄補充は今後のトレンドになる可能性があります。
“2023年共通テスト数学ⅡBの解説と雑感” への2件の返信