前回に続き、本稿では今年2023年の共通テスト数学ⅡBを解説していきます。管理人が問題を解いた際の雑感なども書き連ねていきます。
※数学ⅠAはこちらから。
全体の概観
今年の数学ⅡBの平均点は61.48点となり、数学ⅠAと同様に前年比+18.42点という大幅な易化となりました。時間が足りなくなるような試験問題ではありませんでしたが、実は問題冊子のページ数は昨年比で増えています(29ページ → 32ページ)。
昨年の反省を踏まえて、以下では、各大問の区切りの良いところまで解説を紹介した後に管理人の雑感を簡単に述べる、という形にしたいと思います。問題文は掲載していませんので、適宜お手元に用意してください。
※問題はこちらから閲覧できます。(大学入試数学問題集成様より)
目次
・数学ⅡB第1問〔1〕【三角関数】
・数学ⅡB第1問〔2〕【対数・指数】
・数学ⅡB第2問〔1〕【微分法】
・数学ⅡB第2問〔2〕【積分法】
・数学ⅡB第3問【確率分布と統計】
・数学ⅡB第4問【数列】
・数学ⅡB第5問【ベクトル】
数学ⅡB第1問〔1〕【三角関数】
(1)
$x=\dfrac{\pi}{6}$ のとき、$$\sin x=\sin\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{2}$$および$$\sin 2x=\sin\dfrac{\pi}{3}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$$となることから、$\sin x \,\color{red}{<}\,\color{black}{\sin 2x}$ が成り立つ。(解答欄ア)
また、$x=\dfrac{2}{3}\pi$ のとき、$$\sin x=\sin\dfrac{2}{3}\pi=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$$および$$\sin 2x=\sin\dfrac{4}{3}\pi=-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$$となることから、$\sin x \,\color{red}{>}\,\color{black}{\sin 2x}$ が成り立つ。(解答欄イ)
(2)
$$\begin{align}
\sin 2x-\sin x &= 2 \sin x \cos x -\sin x \\
&=\color{red}{\sin x(2\cos x -1)}
\end{align}$$となる。(解答欄ウ、エ)
$\sin x>0$ かつ $2\cos x -1>0$ となるのは「$0<x<\pi$」かつ「$0<x<\dfrac{\pi}{3}$ または $\dfrac{5\pi}{3}<x<2\pi$」のときであるから、求める範囲は$$\color{red}{0<x<\dfrac{\pi}{3}}$$である。
また、$\sin x<0$ かつ $2\cos x -1<0$ となるのは「$\pi<x<2\pi$」かつ「$\dfrac{\pi}{3}<x<\dfrac{5\pi}{3}$」のときであるから、求める範囲は$$\color{red}{\pi<x<\dfrac{5\pi}{3}}$$である。(解答欄オ~キ)
基本的な三角関数の問題です。単位円を描いて角度の範囲を確認しながら解いていきましょう。$\dfrac{\pi}{3}$とすべきところを$\dfrac{\pi}{6}$と勘違いする人が時々いるので要注意。
(3)
$\alpha$、$\beta$は$$\begin{cases} \alpha+\beta=4x \\ \alpha-\beta=3x \end{cases}$$を満たすから、辺々を加える、もしくは差を取って、$$\begin{cases} \alpha=\dfrac{7}{2}x \\ \beta=\dfrac{1}{2}x \end{cases}$$と表せる。誘導に従うと、$$\sin 4x-\sin 3x=2\cos\dfrac{7x}{2}\sin \dfrac{x}{2}$$と表せるから、$\sin 4x-\sin 3x>0$ が成り立つためには、$\cos\color{red}{\dfrac{7x}{2}}$ と $\sin \color{red}{\dfrac{x}{2}}$ が同符号であればよい。
問題文より $0 \leqq x \leqq \pi$ であり、このとき $0 \leqq \dfrac{x}{2} \leqq \dfrac{\pi}{2}$ となるから $\sin \dfrac{x}{2}$ は正である。したがって $\cos\dfrac{7x}{2}>0$ の条件を考えればよい。(問題文中の条件④の場合のみを考えればよい)
$\cos\dfrac{7x}{2}>0$ となるのは「$0<\dfrac{7}{2}x<\dfrac{\pi}{2}$ または $\dfrac{3}{2}\pi<\dfrac{7}{2}x<\dfrac{5}{2}\pi$」の場合であり、これより「$\color{red}{0<x<\dfrac{\pi}{7}}$ または $\color{red}{\dfrac{3}{7}\pi<x<\dfrac{5}{7}\pi}$」を得る。(解答欄ク~セ)
(4)
$y=2x$ と置くと $0\leqq y\leqq 2\pi$ となるから、$\sin 2y-\sin y> 0$ となるのは(2)より
$0< y<\dfrac{\pi}{3}$ または $\pi< y<\dfrac{5}{3}\pi$
つまり
$0< x<\dfrac{\pi}{6}$ または $\dfrac{\pi}{2}< y<\dfrac{5}{6}\pi$
のときである。
また(3)から、$\sin 3x>\sin 4x$ となるのは
$\dfrac{\pi}{7}<x<\dfrac{3}{7}\pi$ または $\dfrac{5}{7}\pi<x<\pi$
のときである。以上より、$\sin 3x>\sin 4x>\sin 2x$ を満たすのは
$\dfrac{\pi}{7}< x<\dfrac{\pi}{6}$ または $\dfrac{5}{7}\pi< x<\dfrac{5}{6}\pi$
のときである。(解答欄ソ~チ)
(4)では前問までの結果を利用します。(2)や(3)の時点で計算ミスをしているとその後が全滅しかねない意外と怖い問題だったかもしれません。(3)では $\sin 3x<\sin 4x$ の場合を考えているので、$\sin 3x>\sin 4x$ を満たす$x$の範囲はその補集合(ただし等号成立を除く)となります。
数学ⅡB第1問〔2〕【対数・指数】
(1)
$a>0$、$a \neq 1$、$b>0$ で、$a^x=b$ のとき $x=\log_a b$ と表すのが対数関数の定義であるから「② $a^x=b$」が正答となる。(解答欄ツ)
(2)
定義より、$\log_5 25=\color{red}{2}$ であり、底の変換公式から $\log_9 27 =\dfrac{\log_3 27}{\log_3 9}=\color{red}{\dfrac{3}{2}}$ となる。
※ $9^{\frac{3}{2}}=27$ に$9$を底とする対数をとってもよい。
$$\log_2 3=\dfrac{p}{q}$$ $$\therefore 2^{p/q}=3$$ $$\therefore \color{red}{2^{p}=3^{q}}$$である。(解答欄ニ:⑤)
$a$と$b$の偶奇が異なる場合、$a^{p}=b^{q}$ を満たすような自然数$p$、$q$は存在しないから、$\log_a b$ はつねに無理数である。(解答欄ヌ:⑤)
対数の定義に関する極めて基本的な問題でした。これは落とせません。
数学ⅡB第2問〔1〕【微分法】
(1)
$f(x)=x^2(k-x)$ は$(0,0)$、$\color{red}{(k,0)}$を解にもつ。(解答欄ア:④)
$$\begin{aligned} f^{\prime}(x)&=2x(k-x)-x^2 \\ &=\color{red}{-3x^2+2kx} \\ &=-3x\left(x-\dfrac{2}{3}k\right)\end{aligned}$$であり、$x=\color{red}{0}$ のとき$f(x)$は極小値 $\color{red}{0}$ をとり、$x=\color{red}{\dfrac{2}{3}k}$ のとき$f(x)$は極小値 $\color{red}{\dfrac{4}{27}k^3}$ をとる。(解答欄イ~ク)
(2)
図のように円柱の高さを$h$と置くと、断面となる2つの相似な三角形について$$9-x:h=9:15$$が成り立つから$$\therefore h=15-\dfrac{5}{3}x$$と表せる。よって$$\begin{aligned} V&=\pi x^2 \left(15-\dfrac{5}{3}x\right) \\ &=\color{red}{\dfrac{5}{3}\pi x^2 (9-x)} \end{aligned}$$を得る。(解答欄ケ~サ)
(1)より、$V$は定数倍した$f(x)$において $k=9$ とした場合に相当するから、$x=\dfrac{2}{3}\cdot 9=\color{red}{6}$ のとき最大値 $\color{red}{180 \pi}$ をとる。(解答欄シ~ソ)
ごく普通の最小・最大の問題です。円錐に内接する円柱という問題設定もよく見かけるもので手こずった受験生は少ないものと思います。
数学ⅡB第2問〔2〕【積分法】
(1)
$$\begin{aligned} \displaystyle \int_{0}^{30} \left(\dfrac{1}{5}x+3\right) dx &=\left[\frac{x^2}{10}+3x\right]_0^{30} \\
&=\dfrac{30^2}{10}+3\cdot30 \\
&=\color{red}{180} \end{aligned}$$ $$\begin{aligned} & \quad \int \left(\frac{1}{100}x^2-\frac{1}{6}x+5\right) dx \\ &=\color{red}{\dfrac{1}{300}x^3-\dfrac{1}{12}x^2+5x}+C \end{aligned}$$(解答欄タ~ネ)
(2)
$n$日後に開花するとすると、$$\int_0^n \left(\frac{1}{5}x+3\right) dx = 400$$より、$$\left[\frac{1}{10}x^2+3x\right]_0^n=400$$ $$\therefore \dfrac{n^2}{10}+3n-400 = 0$$ $$\therefore n^2+30n-4000=0$$ $$\therefore (n-50)(n+80)=0$$ $n$は正なので $n=50$ となり、開花するのは「④ 50日後」と分かる。(解答欄ノ:④)
$\displaystyle \int_{0}^{30} \left(\dfrac{1}{5}x+3\right) dx=180$ で、$\displaystyle \int_{30}^{40}\left(\dfrac{1}{100} x^2-\dfrac{1}{6} x+5\right) d x=115$ が分かっているので、あと$105$だけ積分値が増えたら開花することが分かる。
$x \geqq 30$ の範囲では$f(x)$は$$f(x)=\dfrac{1}{100}\left(x-\dfrac{25}{3}\right)^2+\dfrac{155}{36}$$となり二次関数として単調増加する(問題文中②式を平方完成した)。したがって$$\color{red}{\displaystyle \int_{30}^{40} f(x)dx \,(=115)<\int_{40}^{50} f(x)dx}$$が成り立つから、ソメイヨシノは「④ 40日より後、かつ50日より前」に開花する。(解答欄ハ、ヒ)
気温の積分値が開花の目安になるという面白い設定の問題です。(ii)では定量的な議論は不要で、$\displaystyle \int_{40}^{50} f(x)dx$ を計算しなくても$105$より大きいか小さいかを関数の増え方から判断するだけで解答できます。
数学ⅡB第3問【確率分布と統計】
(1)
$$\begin{aligned} P(x\geqq m)
&=P(x-m\geqq 0) \\
&=P\left(\dfrac{x-m}{\sigma} \geqq \color{red}{0}\color{black}\right) \end{aligned}$$これは標準正規分布に従う確率変数が$0$以上となる確率に相当するから $\color{red}{\dfrac{1}{2}}$ である。(解答欄ア~ウ)
定義に従うと、$E(\bar{X})=\color{red}{m}$、$\sigma(\bar{X})=\color{red}{\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}}$ となる。(解答欄エ、オ)
問題文中の「方針」に従うと、$P(-z_0 \leqq Z \leqq z_0)=0.901$ より $P(0 \leqq Z \leqq z_0)=0.4505$ となる。よって正規分布表から $z_0=\color{red}{1.65}$ と求められる。(解答欄カ~ク)
$z_0=1.65$ より、$$-1.65 \leqq \frac{m-30}{0.18} \leqq 1.65$$が成り立つ。これを整理すると$$29.703 \leqq m \leqq 30.297$$となるから、「④ $27 \leqq m \leqq 30.3$」を選択すればよい。(解答欄ケ)
(2)
$m=30.0$ なので「ピーマン分類法」に従うと、無作為に1個抽出したピーマンがSサイズである確率は $\color{red}{\dfrac{1}{2}}$ となる。$25$袋作るので、$$\begin{aligned} p_0 &= {}_{50}\mathrm{C}_{\color{red}{25}} \cdot\left(\frac{1}{2}\right)^{25} \cdot\left(1-\frac{1}{2}\right)^{25} \\
&={}_{50}\mathrm{C}_{25} \cdot \frac{1}{2^{50}} \end{aligned}$$と表せる。(解答欄コ~ス)
ピーマンを $50+k$ 個抽出したときのSサイズの個数$U_k$は、二項分布 $B\left(50+k,\,\dfrac{1}{2}\right)$ に従う。よって、平均は $\dfrac{50+k}{2}$、分散は $(50+k)\cdot \dfrac{1}{2}\cdot\left(1-\dfrac{1}{2}\right)=\dfrac{50+k}{4}$ となるので、正規分布で近似できるとすれば $\color{red}{N\left(\dfrac{50+k}{2}, \dfrac{50+k}{4}\right)}$ に従う。(解答欄セ、ソ)
これより、ピーマン分類法によれば$$\small \begin{aligned} p_k &=P(25\leqq U_k\leqq 25+k) \\
&=P\left( 25-\dfrac{50+k}{2}\leqq U_k-\dfrac{50+k}{2}\leqq 25+k-\dfrac{50+k}{2} \right) \\
&=P\left( -\dfrac{k}{2}\leqq U_k-\dfrac{50+k}{2}\leqq \dfrac{k}{2} \right) \\
&=P\left( -\dfrac{k}{2}\cdot\dfrac{2}{\sqrt{50+k}} \leqq Y\leqq \dfrac{k}{2}\cdot\dfrac{2}{\sqrt{50+k}} \right) \\
&=\color{red}{P\left( -\dfrac{k}{\sqrt{50+k}} \leqq Y\leqq \dfrac{k}{\sqrt{50+k}} \right)} \end{aligned}$$と求められる。(解答欄タ)
問題文の誘導に従って $k>0$ の下で不等式$$k^2 \geqq 4(50+k)$$を解くと$$k \geqq 2+2\sqrt{51} \approx 2+2\cdot7.14=16.28$$を得る。故に $k_0=\color{red}{17}$ である。(解答欄チ、ツ)
この問題を選択した人は少ないかもしれませんが、二項分布、正規分布の定義と性質が理解できていれば、それほど難しくはなかったかと思います。
数学ⅡB第4問【数列】
(1)
$$\begin{aligned} a_3 &=1.01a_2 +p \\
&=1.01(1.01a_1+p) +p \\
&=\color{red}{1.01 \{ 1.01(10+p)+p \} +p} \end{aligned}$$ である。(解答欄ア)
$a_{n+1}=1.01a_n+p$ という漸化式が成立し、これは$$\color{red}{a_{n+1}+100p=1.01(a_n+100p)}$$と書き直すことができる。(解答欄イ~オ)
1年目のはじめに入金した$p$万円には $n-1$ 年分の利息が付くので $p\cdot{1.01}^{\color{red}{n-1}}$ となる。また、2年目のはじめに入金した$p$万円には $n-2$ 年分の利息が付くので $p\cdot{1.01}^{\color{red}{n-2}}$ となる。これを繰り返すと$$\small \begin{aligned} a_n
&=10\times 1.01^{n-1}+p\times1.01^{n-1}+p\times1.01^{n-2}+\cdots+p \\
&=\color{red}{10\times 1.01^{n-1}+p \displaystyle\sum_{k=1}^{n} 1.01^{k-1}} \end{aligned}$$と表せる。ここで、$$\begin{aligned} \displaystyle\sum_{k=1}^{n} 1.01^{k-1}&=\dfrac{1.01^n-1}{1.01-1} \\
&=\color{red}{100 (1.01^n-1)} \end{aligned}$$である。(解答欄カ~ケ)
(2)
10年目の終わりの預金額は $1.01 a_{10}$ となるから、$$\color{red}{1.01 a_{10}} \geqq 30$$が成り立てばよい。$a_n$の一般項の式に $n=10$ を代入して整理すると、$$p \geqq \color{red}{\dfrac{30-10\times 1.01^{10}}{101(1.01^{10}-1)}}$$となる。(解答欄コ~セ)
金利という珍しい題材からの出題でした。等比数列のポイントが押さえられていれば、問題自体に難しいところはほとんどありませんね。
ところで、預金に1%も金利が付くなんて超低金利時代の現代では考えられないかもしれませんが、40年ほど前では定額貯金に5~6%もの金利が付いていました。金利5%というのは15年で元本が倍になる計算です(税金を考慮しない場合)。それから、どうでも良いですが、初めに問題文を読んだ際に前問の「ピーマン」と本問の「$p$万」で、わざとダジャレにしたのかと勘ぐってしまいました(笑)
数学ⅡB第5問【ベクトル】
(1)
$\mathrm{M}$は線分$\mathrm{AB}$の中点なので、$$\overrightarrow{\mathrm{AM}} = \color{red}{\dfrac{1}{2}\overrightarrow{\mathrm{AB}} + \frac{1}{2}\overrightarrow{\mathrm{AC}}}$$と表せる。また、内積の定義より、$$\begin{cases} \overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AB}} = |\overrightarrow{\mathrm{AP}}| |\overrightarrow{\mathrm{AB}}| \cos\angle \mathrm{PAB} \\ \overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}} = |\overrightarrow{\mathrm{AP}}| |\overrightarrow{\mathrm{AC}}| \cos\angle \mathrm{PAC} \end{cases}$$であり、いま $\angle \mathrm{PAB}=\angle \mathrm{PAC}=\theta$ であるから、$$\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AB}}}{|\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AB}}|}=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}}{|\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AC}}|}=\color{red}{\cos\theta} \color{black}{\quad \cdots ①}$$が成り立つ。(解答欄ア~オ)
(2)
(1)の①式より、$$\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=3\sqrt{2} \cdot 3 \cdot \dfrac{1}{\sqrt{2}}=\color{red}{9}$$である。また、$\overrightarrow{\mathrm{AP}}\perp\overrightarrow{\mathrm{PD}}$ のとき $\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{PD}}=0$ が成り立つから $\overrightarrow{\mathrm{AD}}=k\overrightarrow{\mathrm{AM}}$ と置くと、$$\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot(\overrightarrow{\mathrm{AD}}-\overrightarrow{\mathrm{AP}})=0$$ $$\therefore k \,\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AM}}-|\overrightarrow{\mathrm{AP}}|^2=0$$ $$\therefore \dfrac{1}{2}k \,\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\dfrac{1}{2}k \,\overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}-18=0$$ $$\therefore 9k-18=0$$ $$\therefore k=\color{red}{2}$$を得る。(解答欄カ、キ)
(3)(ⅰ)
$\overrightarrow{\mathrm{PA}} \perp \overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ のとき、$$\overrightarrow{\mathrm{PA}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{PQ}}= 0$$が成り立つ。いま、$\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=2\overrightarrow{\mathrm{AM}}=\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ であるから、$$\overrightarrow{\mathrm{PA}} \cdot (\overrightarrow{\mathrm{AQ}}-\overrightarrow{\mathrm{AP}})= 0$$ $$\therefore -\overrightarrow{\mathrm{AP}} \cdot (\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\overrightarrow{\mathrm{AC}}-\overrightarrow{\mathrm{AP}})= 0$$ $$\therefore \color{red}{\overrightarrow{\mathrm{AP}} \cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\overrightarrow{\mathrm{AP}} \cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}= \overrightarrow{\mathrm{AP}} \cdot \overrightarrow{\mathrm{AP}}}$$と式変形できる。これは$$|\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta+|\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos \theta= |\overrightarrow{\mathrm{AP}}|^2$$と書き直せるから、両辺を$|\overrightarrow{\mathrm{AP}}|$で割って$$\color{red}{|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta+|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos \theta= |\overrightarrow{\mathrm{AP}}|}$$を得る。(解答欄ク、ケ)
式も煩雑ではなく、内積の定義式さえ分かっていればサクサク解けるはずです。
(3)(ⅱ)
$k \overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AB}} = \overrightarrow{\mathrm{AP}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}}$ のとき、$$k |\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos\theta =|\overrightarrow{\mathrm{AP}}||\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos\theta$$ $$\therefore \color{red}{k |\overrightarrow{\mathrm{AB}}|=|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|}$$となる。(解答欄コ:⓪)
$\overrightarrow{\mathrm{PA}}\perp \overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ のとき前問の結果から$$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta+|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|\cos \theta= |\overrightarrow{\mathrm{AP}}|$$が成り立つから、$$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta+k|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta= |\overrightarrow{\mathrm{AP}}|$$ $$\therefore (1+k)|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|\cos \theta= |\overrightarrow{\mathrm{AP}}|$$を得る。これは$$|\overrightarrow{\mathrm{AB^{\prime}}}|=\dfrac{1}{1+k}|\overrightarrow{\mathrm{AP}}|$$と書き換えられるから、点$\mathrm{B^{\prime}}$は線分$\mathrm{AP}$を$1:k$に内分する点であり、点$\mathrm{C^{\prime}}$は線分$\mathrm{AP}$を$k:1$に内分する点であることが分かる。(解答欄サ:④)
特に、$k=1$ のとき、点$\mathrm{B^{\prime}}$と$\mathrm{C^{\prime}}$はともに線分$\mathrm{AP}$の中点となり一致する。このとき、$\triangle \mathrm{PAB}$と$\triangle \mathrm{PAC}$はそれぞれ $\mathrm{BP}=\mathrm{BA}$、$\mathrm{CP}=\mathrm{CA}$ を満たす二等辺三角形となる。(なぜならば、点$\mathrm{B^{\prime}}$と$\mathrm{C^{\prime}}$は線分$\mathrm{AP}$の中点であり、かつ、それぞれ線分$\mathrm{AP}$に対する点$\mathrm{B}$および点$\mathrm{C}$の垂線の足だからである)
よって、$\overrightarrow{\mathrm{PA}}\perp \overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ のとき、「シ」の解答群のうち②と③が必要性を満たすことが分かる。このうち「③ $\triangle \mathrm{PAB} \equiv \triangle \mathrm{PAC}$」のとき、$\angle \mathrm{APB}$が鈍角であるような三角形の場合、$\overrightarrow{\mathrm{PA}}\perp \overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ は必ずしも成立しない。以上より、同値(必要十分)であるものは「② $\triangle \mathrm{PAB}$と$\triangle \mathrm{PAC}$がそれぞれ $\mathrm{BP}=\mathrm{BA}$、$\mathrm{CP}=\mathrm{CA}$ を満たす二等辺三角形」となる。(解答欄シ:②)
後半は難しめですが、直線$\mathrm{AP}$に対する正射影(ベクトル)を意識すれば見通しよく解答できたかもしれません。最後の設問が少し難しいでしょうか。$\triangle \mathrm{PAB} \equiv \triangle \mathrm{PAC}$ という条件だけでは、点$\mathrm{B^{\prime}}$と$\mathrm{C^{\prime}}$が線分$\mathrm{AP}$の中点になるとは限りません。このことを見落とさないように注意しましょう。
全体としては(前年比で)かなり控えめなレベルの問題になった印象を受けました。ただし、問題冊子のページ数は昨年よりも増加しています…。今回の平均点は61.48点とかなり高水準であるため、2次試験のボーダーラインも高水準になると思われます。数学の得意な人にとってはほとんど差が付かなかった試験になったと言えそうです。来年の数学ⅡBはやや難化することが予想されます。
差が付きそうな問題は第1問の〔1〕でしょうか? 特段難しいという訳ではありませんが、誘導に乗りにくくケアレスミスを誘発しやすい問題だったと思います。第5問のベクトルも完答できていない人は意外と多そうです。問題の題材に目を向けると、ソメイヨシノの開花日時や預金の金利計算など、読解力を測るという共通テストらしい工夫のある問題が目立ちました。第1問〔2〕では背理法の証明を空欄補充する問題が出題されました。今回の問題は易しいものでしたが、同様の証明過程の空欄補充は今後のトレンドになる可能性があります。
“2023年共通テスト数学ⅡBの解説と雑感” への2件の返信