3次方程式の解の公式

本稿では3次方程式の解の公式、いわゆる「カルダノの公式」を導出していきます!チルンハウス変換についても少し触れています。(※4次方程式の解の公式はこちら


3次式に関する以下の公式はよく知られています。a3+b3+c33abc=(a+b+c)(a2+b2+c2abbcca)しかし、ここから3次方程式の解の公式が導かれるということはあまり知られていないように思います。

そこで今回は、次の補題を用いて3次方程式の解の公式を導いてみます。但し、方程式の係数は実数とします。

補題
1の3乗根のうち虚数のものをωとおくとa3+b3+c33abc=(a+b+c)(a+bω+cω2)(a+bω2+cω)が成り立つ。

まず、(a+bω+cω2)(a+bω2+cω)=a2+b2+c2abbccaが成り立つことを示します。これは、左辺を展開して ω3=1ω2+ω+1=0 を用いれば良いでしょう。または、次のように右辺を因数分解することによっても証明できます。a2+b2+c2abbcca=0aについて解くとa=b+c2±32(bc)iとなります。ここで ω=1+3i2 と置くと、ω2=13i2 と表されるので、これより a=bωcω2,bω2cω となり、(a+bω+cω2)(a+bω2+cω)=a2+b2+c2abbccaが成り立つことが示されます。

これで補題が示されました。

●   ●   ●

補題においてaxbucvと置き換えると、x33uvxu3v3=x3+(u)3+(v)33x(u)(v)=(xuv)(xuωvω2)(xuω2vω)が成り立ちます。よって、3次方程式 x3+px+q=0 の解は{3uv=pu3+v3=q()と置けば、x=u+v, uω+vω2, uω2+vωと表すことができます。

さらに具体的な解を求めてみましょう。()より{u3+v3=qu3v3=p327を得るので、u3v3tの2次方程式t2+qtp327=0の2解であることが分かります。これを解いて{u3=q2+q24+p327v3=q2q24+p327を得るので、{u=q2+q24+p3273v=q2q24+p3273と求められます。

以上より、r=q24+p327 と置くと、3次方程式x3+px+q=0の解は
x={q2+r3+q2r3ωq2+r3+ω2q2r3ω2q2+r3+ωq2r3と求めることができます。

これは「カルダノの公式」と呼ばれ、一般の3次方程式は次のような置換(チルンハウス変換)によって x3+px+q=0 という形に式変形できるので、これが3次方程式の解の公式となります。

n次方程式a0xn+a1xn1+a2xn2++an1x+an=0に対して x=ta1nCn1a0 と置換すると n1 次の項を消去することができます。これをチルンハウス変換と呼びます。

3次方程式のチルンハウス変換
ax3+bx2+cx+d=0において x=tb3a と置くと、a(tb3a)3+b(tb3a)2+c(tb3a)+d=at3+(b23a+c)t+(2b327a2bc3a+d)となるので、p=b23a2+caq=2b327a3bc3a2+da と置くと方程式はt3+pt+q=0の形に帰着します。

カルダノの公式を背景に持つ入試問題は時々出題されるので、知っておいて損は無い話題だと思います。「3次方程式の解析解(厳密解)を求めてみる」の記事も参考にして下さい。

 

“3次方程式の解の公式” への4件の返信

  1. チルンハウス変換のところで、
    n次方程式 a0x^n + a1x^(n-1) + a2x^(x-2) +・・・
    の3項目のxのpowerは、
    x-2ではなくn-2
    と思われます。

    1. 平方完成難渋中の子 さん

      ご指摘の点について確認したところ、誤植でしたので修正しました。
      コメントして頂き、ありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

©Copyright 2017-2025 理系のための備忘録 All Rights Reserved.