5乗根の和に関する問題(藤田医科大学2017年数学第3問)

藤田医科大学の前期試験から5乗根の和に関する問題を紹介します。


《問題》

$\alpha=\sqrt[5]{\dfrac{5 \sqrt{5}+11}{2}}$、$\beta=\sqrt[5]{\dfrac{5 \sqrt{5}-11}{2}}$ のとき、次の問いに答えよ。

(1)$\alpha\beta$ を求めよ。

(2)$\alpha-\beta-1$ は正か、負か、$0$かを判定せよ。

(藤田医科大学2017年 第3問)


《考え方》

5乗根が登場しますが見かけ倒しの問題です。(2)では(1)の結果を上手く利用して解決しましょう。また、$\alpha$ と $\beta$ の対称式から $\alpha-\beta$ の値を求める方法もあるので、別解として紹介しておきます。


解答例

 

(1)

$$\begin{align}
\alpha\beta &=\sqrt[5]{\dfrac{5 \sqrt{5}+11}{2}\cdot\dfrac{5 \sqrt{5}-11}{2}} \\
&=\sqrt[5]{\dfrac{125-121}{4}} \\
&=\sqrt[5]{1} \\
&=\color{red}{1} \color{black}\quad \cdots (\text{答})
\end{align}$$

 

(2)

(1)より $\beta=\dfrac{1}{\alpha}$ であるから、$$\begin{align}
\alpha-\beta-1 &=\alpha-\dfrac{1}{\alpha}-1 \\
&=\dfrac{\alpha^{2}-\alpha-1}{\alpha}
\end{align}$$となる。$\alpha>0$ より $\alpha-\beta-1$ の符号は $\alpha^{2}-\alpha-1$ の符号に一致する。$\alpha>0$ のとき $\alpha^{2}-\alpha-1$ は $\alpha=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}$ の前後で符号が変わるので、$\sqrt[5]{\dfrac{5 \sqrt{5}+11}{2}}$ と $\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}$ の大小を比較すればよい。

ここで、$$\left(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^{5}=\dfrac{5 \sqrt{5}+11}{2}$$であるので、$$\sqrt[5]{\dfrac{5 \sqrt{5}+11}{2}}=\dfrac{\sqrt{5}+1}{2}$$が成り立つ。したがって$$\alpha^{2}-\alpha-1=0$$となるから、$$\alpha-\beta-1=\color{red}{0}$$と判る。

 

(答)$0$

 

 

(2)別解

$$\begin{cases}
\alpha^{5}+\beta^{5}=5 \sqrt{5} \quad \cdots ①\\
\alpha^{5}-\beta^{5}=11 \quad \cdots ②
\end{cases}$$であり、②より、$$\small (\alpha-\beta)\left(\underline{\alpha^{4}+\alpha^{3} \beta+\alpha^{2} \beta^{2}+\alpha \beta^{3}+\beta^{4}}\right)=11$$を得る。ここで下線部は$$\alpha^{4}+\beta^{4}+\alpha\beta\left(\alpha^{2}+\beta^{2}\right)+\alpha^{2} \beta^{2}$$と変形できるが、$\alpha\beta=1$ より$$\alpha^{4}+\beta^{4}+\left(\alpha^{2}+\beta^{2}\right)+1$$となる。ここで $t=\alpha-\beta\,(>0)$ と置くと、$$\begin{align} \alpha^{2}+\beta^{2}&=(\alpha-\beta)^{2}+2 \alpha \beta \\ &=t^{2}+2 \end{align}$$ $$\begin{align}\alpha^{4}+\beta^{4} &=\left(\alpha^{2}+\beta^{2}\right)^{2}-2 \alpha^{2} \beta^{2} \\ &=\left(t^{2}+2\right)^{2}-2 \\ &=t^4+4t^2+2 \end{align}$$と表せるから、下線部は $t^{4}+5 t^{2}+5$ となる。よって、$$t(t^{4}+5 t^{2}+5)=11$$ $$\therefore t^{5}+5 t^{3}+5t-11=0$$ $$\small \therefore (t-1)\left(t^{4}+t^{3}+6 t^{2}+6 t+11\right)=0$$と式変形できる。$t>0$ であるからこの方程式の解は $t=1$ に限られ、$$\alpha-\beta=1$$を得る。したがって、$$\alpha-\beta-1=\color{red}{0}$$と判る。

 


(コメント)

共役な$n$乗根の和や差は整数などの簡単な数になることがあります。本問はそうした事実を背景とする問題です。3重根の場合だと、2002年大阪教育大後期、2009年東北大後期、2015年横浜市立大(医)、2017年和歌山大学(文系)などに類題があります。

 

(2)は別解のように対称式を使って差を求めることもできますが、計算量が多くなるのであまりお勧めできません。なお、二重根号の外し方については前回の記事「二重根号を外す色々な方法」で詳しく扱っていますので、是非参照してみて下さい。途中の$(t-1)$の括りだしでは組み立て除法を使うのが良いでしょう。

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