k(n-2k)の部分和が2024になる条件(2024年一橋大学前期数学第1問)

一橋数学の第1問には毎年、整数分野の問題が配置されます。今年も例年通り、シンプルな整数問題が出題されました。西暦の年号に関する問題は2年ぶりです。


問題

$\displaystyle \sum_{k=1}^{m}k(n-2k)=2024$ を満たす正の整数の組$(m,n)$を求めよ。

(2024年 一橋大学 前期第1問)

 考え方・解答例

まず、右辺は定数なので素因数分解してしまいましょう。$$2024=2^3 \cdot 11 \cdot 23$$次に、左辺を計算して多項式の形に直します。$k$はいわゆる「ダミー変数」で、最終的には$$\dfrac{1}{6}m(m+1)(3n-4n-2)$$という$m$と$n$の式になります。よって、ディオファントス方程式$$m(m+1)(3n-4m-2)=2^4 \cdot 3 \cdot 11 \cdot 23$$の正の整数解を求めるというのが本問の内容となります。左辺が積の形になっているので、解の候補の絞り込みはしらみつぶしでも良いでしょう。今回の場合は $m$ と $m+1$ が隣接する整数であることに着目するのが良さそうです。


解答例

$$\begin{align}
& \ \ \ \ \ \sum_{k=1}^m k(n-2 k) \\
& =\sum_{k=1}^m\left(n k-2 k^2\right) \\
& =n \cdot \frac{1}{2} m(m+1)-2 \cdot \frac{1}{6} m(m+1)(2 m+1) \\
& =m(m+1)\left(\frac{1}{2} n-\frac{2 m+1}{3}\right) \\
& =\frac{1}{6} m(m+1)(3 n-4 m-2)
\end{align}$$であり、$$2024=2^3 \cdot 11 \cdot 23$$であるから、与方程式は$$(\ast):m(m+1)(3n-4m-2)=2^4 \cdot 3 \cdot 11 \cdot 23$$と書き直せる。よって方程式$(\ast)$を満たすような正の整数の組$(m,n)$を求めればよい。

いま、$m(m+1)>0$ かつ、式$(\ast)$の右辺が正であることから$$3n-4m-2>0$$が従う。$m^2<m(m+1)(3n-4m-2)$ より、$$m^2<2^4 \cdot 3 \cdot 11 \cdot 23=12144$$すなわち$$m<\sqrt{12144}<\sqrt{12321}=111$$が必要となる。よって、$110$以下の整数$m$で、$m$ と $m+1$ がともに $2^4 \cdot 3 \cdot 11 \cdot 23$ の約数になるようなものを調べればよい。

$m$の取り得る値は以下の20個となる。$$\begin{array}{c|c|c|c|c|c}
1 & 2 & 4 & 8 & 16 \\
\hline 3 & 6 & 12 & 24 & 48 \\
\hline 11 & 22 & 44 & 88 & \\
\hline 23 & 46 & 92 & & \\
\hline 33 & 66 & & & \\
\hline 69 & & & & \\
\end{array}$$このうち $m+1$ もこの表の中に現れるようなものは$$m=1,2,3,11,22,23$$の6つのみである。

(ア)$m=1$ のとき、$3n-4m-2=2^3 \cdot 3 \cdot 11 \cdot 23$ を解くと、$$n=2026$$となる。

(イ)$m=2$ のとき、$3n-4m-2=2^3 \cdot 11 \cdot 23$ を解くと、$$n=678$$となる。

(ウ)$m=3$ のとき、$3n-4m-2=2^2 \cdot 11 \cdot 23$ を解くと、$$n=342$$となる。

(エ)$m=11$ のとき、$3n-4m-2=2^2 \cdot 23$ を解くと、$$n=46$$となる。

(オ)$m=22$ のとき、$3n-4m-2=2^3 \cdot 3$ を解くと、$$n=38$$となる。

(カ)$m=23$ のとき、$3n-4m-2=2 \cdot 11$ を解くと、$$n=\dfrac{116}{3}$$となる。

以上(ア)~(カ)より、求める正の整数の組$(m,n)$は$$\color{red}{(m,n)=(1,2026),(2,678),(3,342),(11,46),(22,38)}$$の計5組である。


コメント

一橋大学の数学で「(多項式)=(定数)」というタイプの1行問題が出題されるのは2013年以来かと思います。約数の組が式の形に由来する条件を満たすものを選び取る、というところで見逃しが無いように注意したいですね。

かくいう管理人も本問を最初に解いたときは $m=23$ の場合を見逃していました。この場合は解が得られないとはいえ、数え漏らしは論証の不備になって減点対象となります。


余談ですが、今年の東大文系第4問と一橋大第5問は非常に似た問題でした。これは円周等分点を頂点とする四角形(後者は三角形)が内接円の中心を含む確率を求めさせる問題です。

また、京大理系第3問と阪大理系第3問でともに「ねじれの位置」を題材にする出題があったほか、東工大第2問と京大理系第5問でともに「双曲線関数」を題材にする出題がありました。このようにある種のシンクロニシティ(?)が見られたことを話題にしている方をいくらか見かけました。

個人的には単なる偶然なのかなという気がしていますが…。

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