n乗根絡みの極限(2020年東北大学AO入試II期(医)数学第1問(2))

昨年行われた東北大学医学部のAO入試から。


 

$a_n=\dfrac{1}{n^2}\sqrt[n]{(n^2+1^2)(n^2+2^2)(n^2+3^2)\cdots (n^2+n^2)}$
($n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots$)のとき、$\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n$ を求めよ。

(2020年東北大学AO入試II期(医) 第1問(2))

 

 考え方

見るからに区分求積法が利用できそうな式の形をしています。こういうタイプの問題では、シグマで表記したときにどこが変数で置き換えられるかを見抜くことが第一の関門です。このとき、積分区間の範囲に注意する必要があります。そして第二の関門は言わずもがな積分計算ですね。今回の積分は部分積分を利用します。


解答例

 

$$\small a_n=\sqrt[\Large{n}]{\left\{1+\left(\dfrac{1}{n}\right)^2\right\}\left\{1+\left(\dfrac{2}{n}\right)^2\right\}\cdots \left\{1+\left(\dfrac{n}{n}\right)^2\right\}}$$と変形し、両辺に自然対数をとると$$\small \log a_n=\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log\left\{1+\left(\dfrac{k}{n}\right)^2 \right\}$$となる。これより、$$\small \begin{eqnarray*}
\lim_{n \to \infty}\log a_n&=&\int_0^1\log\left(1+x^2 \right)\,dx\\
&=&\left[x\log (1+x^2) \right]_0^1-\int_0^1x\cdot \dfrac{2x}{1+x^2}\,dx\\
&=&\log 2-2\int_0^1\left(1-\dfrac{1}{1+x^2} \right)dx
\end{eqnarray*}$$となる。ここで $x=\tan\theta$ と置換すると $\small \displaystyle \dfrac{1}{1+x^2}=\cos^2\theta $ および $\small \displaystyle \dfrac{dx}{d\theta}=\dfrac{1}{\cos^2\theta} $ となるから$$\small \int_0^1\dfrac{1}{1+x^2}\,dx=\int_0^{\frac{\pi}{4}}1\,d\theta=\dfrac{\pi}{4}$$と計算できる。よって$$\small \lim_{n \to \infty}\log a_n=\log 2-2+\dfrac{\pi}{2}$$となるから$$ \begin{align} \lim_{n \to \infty}a_n &=e^{\log 2-2+\frac{\pi}{2}} \\
&=\color{red}{2e^{-2+\frac{\pi}{2}}} \end{align}$$と求められる。

 


 

$n$乗根絡みの極限の問題では区分求積法を利用する場面が多くあります。$n$乗根に対数をとると $\small \dfrac{1}{n}$ が出てくるので区分求積法はスムーズに連想したいところ。被積分関数が対数関数なので部分積分が有効そうだと見当が付くはずです。あとは基本的な計算問題ですね。

区分求積法の内容とは関係無いですが、今回得られた極限値について「$2e^{-2+\frac{\pi}{2}}$ と $1$ の大小を比較せよ」といった問題を付け足しても面白いかもしれません。これは、$\small e^x>1+x+\dfrac{1}{2}x^2$ から $e>2.5$ を示して $\pi >3$ を利用するだけで大小判定が可能なので、管理人ならノーヒントで出題します。

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