動物園の動物には、来園者に親しまれる名前が付いている。別の園へ移ったり、同じ名前の個体がいたりしたとき、記録は混乱しないのだろうか。管理の中心にあるのは愛称だけでなく、個体を追跡するための識別番号と履歴である。
呼び名と識別子は役割が違う
愛称は、人が覚え、話題にするために役立つ。命名の方法は施設や企画によって異なり、世界共通の一つの命名機関が決めるわけではない。一方、診療や繁殖の記録には、どの個体の情報かを確実に対応させる仕組みが必要になる。
人にも氏名だけでなく複数の管理番号があるように、動物にも施設内の番号、血統登録の番号、タグなどの情報が付く。同じ名前であることと、同じ個体であることを切り離すことで、記録を長期にわたってつなげられる。
園を移っても履歴をつなぐ
Species360の動物管理システムZIMSでは、動物や群れの登録にGlobal Accession Numberという識別子が与えられる。施設が変わっても主要な識別子として残り、各施設で付けるLocal IDとは区別される。
同システムの解説は、愛称や血統登録番号などの論理的な識別子と、足環、タグ、トランスポンダーなどの物理的な識別情報も分けている。目の前の個体とデータ上の記録を結び付けるには、両方の確認が重要になる。
名前の後ろに保全の記録がある
親子関係や出生、移動の履歴を追えれば、繁殖計画や集団管理に利用できる。獣医療でも、過去にどの検査や治療を受けた個体かが分からなければ、情報の価値が大きく下がる。記録を残す仕事は展示の裏側にある基盤である。
すべての動物園が同じシステムを使うわけではなく、種によって個体単位と群れ単位の管理も異なる。名前を聞いて親しみを感じる来園者の視点と、長い履歴を正確につなぐ管理の視点は、同じ動物を別の目的から見ているのである。
ZIMSの識別番号は、動物の学名や種の分類を決める番号とは異なる。愛称、個体の識別、種の分類は、それぞれ別の情報である。
参考資料
- Species360:Best Practices in Animal Husbandry and Inventory Records Keeping
- Species360:Adding and Editing Identifiers
参考資料確認日:2026年10月14日。
