新型コロナウイルスとは?【新型肺炎騒動について】

新型肺炎コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染拡大が止まりそうにありません。ここ数週間で、東アジアをはじめ、世界中で広がり続けている新型コロナウイルスについて、デマを含む様々な情報が広く出回っています。私たちは何を信じ、何を心がけ、どのように行動すればいいのでしょうか。

ウイルスの予防法も載せていますので、かなり長文ですがお付き合い下さい。

(※以下の内容は2020年3月上旬頃の情報であることに留意して下さい! ― 2021/08/23追記)


まずはじめに強調しておきたいことは、全世界を混乱に陥れている新型肺炎コロナウイルスは人間に本来備わっている免疫によって撃退することができる、すなわち治る病気だということです。

このウイルスに感染すると一刻も早く罹患者の隔離が必要なほど重大な病気だ、という印象がメディアを中心に広く流布してしまっており、そのような危機感を不必要に煽る報道やSNSへの投稿によって、街からマスクやら生理用品やらトイレットペーパーやらティッシュペーパーやらが消えるなどという騒ぎになっています。

パニックにならないということは基本的で重要な疫病対策です。かつて栄華繁栄を極めた古代ローマ帝国も、何らかの疫病によって滅亡が始まったと考えられているくらいです。文明崩壊の端緒はおよそ人々の衝動的な行動(パニック)や暴動によるものです。不安に思っている人も多いでしょうが、まずは落ち着きましょう。

このウィルスにはエンベロープ(ウイルスの遺伝子を守る脂質の殻:後述します)が存在し、市販のアルコールによってエンベロープを分解して消毒することができます。手洗いうがいも非常に有効です。今回の新型肺炎コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じように対策できるタイプのウイルスだということを、まず初めに認識しておきましょう。

なぜここまで多くの人々を恐怖に陥れているのか、なぜ政府はここまでして対策に乗り出さなければならないのか、というのには主に2つ理由があります。

1つは、このウイルスがこれまでに知られていないウイルスでありワクチンが存在しないため、重篤化した場合に回復させる手段が(今のところ)確立されていないからです(この薬は効きそうだ、というのは幾つか論文として報告されています)。「このウイルスに罹(かか)ったら一巻の終わりだから」というわけではありません。

2つ目は、罹患(りかん)者の約5割は無症状だという点です。そのため、自分が知らず知らずのうちにウイルスをばら撒いてしまう可能性があるのです。無自覚なキャリア(ウィルスの保有者)が現在国内に多数存在していることが想定され、クラスター(感染者の集団)をいち早く追跡・特定することが感染拡大を防止する上で非常に重要となります。潜伏期間について詳しく分かっていないという点も未知のウィルスとして恐怖を煽る材料になっています。

現在、感染経路を特定できない市中感染が国内各地で発生しており、もはや感染者を一人ずつ隔離しても意味が無い状況です。市中感染が確認されている段階では、感染者の増加を抑えるとともに、重篤患者に優先的に治療を施して死亡者を減らすように動くことが感染症対策として適切なのです。後述しますが、もし軽症者を含む希望者全員に検査を実施すると医療機関がパンクして既存の医療体制が維持できなくなり、今回の新型コロナウイルスだけでなく癌など他の病気に関する医療体制も圧迫してしまいます。現時点ではこの点があまり国民に理解されておらず、意図的に検査数を少なくしているのではないか、という疑念に繋がってしまっているのが現状です。近年医師不足が深刻化しているという報道も聞いたことがあると思います。現場は常に人手不足なのです。この辺りの事情について政府から詳しい説明が無いのも問題ですが。

勿論、このウイルスに感染しないに越したことはありませんが、必要以上に慌てる必要はありません。

以上のことを、まずはちゃんと認識しておきましょう。医療機関のスタッフは現場で必死に頑張っています。私たちにできることは、パニックになることなく衛生をしっかり確保して人混みを避けつつ生活する、という個人個人の取り組みです。全てを行政に任せっきりにして文句を垂れ流し続けていても構いませんが、それでは結局私たちが一番損をすることになります。各自ができることをしっかりと十分にやった上で行政に文句を言いましょう。


 

 コロナウイルスとは

コロナウイルスのイラスト
(アメリカ疾病予防管理センター(CDC)より引用)

コロナウイルス(英語では “coronavirus” 略称:CoV)とは、ゲノムとしてリボ核酸(RNA)を有するRNAウイルスの一種で、哺乳類や鳥類に感染して病気を引き起こすウイルスのグループの1つです。ヒトが感染した場合は一般的な風邪のような軽度の気道感染症しか引き起こしませんが、コロナウイルスの仲間であるSARS、MERSや、今回流行しているCOVID-19といった形態のものは致命的な症状を引き起こすことが知られています。

今回の新型肺炎ウイルス「COVID-19」は普通の風邪の症状の他に、肺炎を併発しやすいことがわかっています。そのため気管の機能が弱い人や高齢者は症状が重篤化しやすい傾向があり、高い死亡率(WHOの発表では3%前後)に繋がっていると考えられています。大量に検査している韓国の発表では0.6%となっており、実際にはインフルエンザより少し致死率が高い程度でしょう。

ウイルスには幾つか種類があります。ウイルスの分類方法はいわゆる「ボルティモア分類」に従っており、ゲノムの種類と発現様式によって以下の7群に分類されます。

第1群 2本鎖DNA
第2群 1本鎖DNA
第3群 2本鎖RNA
第4群 1本鎖RNA+鎖
第5群 1本鎖RNA−鎖
第6群 1本鎖RNA逆転写
第7群 2本鎖DNA逆転写

新型肺炎ウイルス「COVID-19」を含むコロナウイルス科はこのうちの第4群に分類されます。

以下ではコロナウイルスの構造について確認します。コロナウイルスの断面は下図のようなイメージとなっています。

コロナウイルスの断面図
(Wikipedia「Coronavirus」の頁より引用)

黄色の部分は「スパイクタンパク質」、水色の部分は「ヘマグルチニンタンパク質 」と呼ばれ、感染先の細胞を認識して吸着する部分です。これらのタンパク質はエンベロープ(Viral envelope)と呼ばれる脂質二重膜の殻に埋め込まれています。

このエンベロープは内部のゲノム(コロナウイルスの場合はRNA)を保護するように球状になっていますが、新しく標的細胞を感染させるときは細胞膜と融合してエンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込むこと)が起こり、細胞内にウイルスのRNAが送り込まれます。これが細胞内のリボソームに結合してRNAが複製されます。複製されたRNAは、エキソサイトーシス(細胞が細胞外に物質を放出すること)によって標的細胞からウイルスが放出されます。このようにしてウイルスが増殖していきます。

エンベロープを有するのはコロナウイルスの特徴の一つです。他にもインフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス科や、天然痘ウイルス、 麻疹ウイルス、エボラウイルスなどはエンベロープをもっています。

すべてのウイルスがエンベロープを有している訳ではなく、食中毒を引き起こすノロウイルスや、プール熱の原因となるアデノウイルスなどはエンベロープをもちません。また、ピコルナウイルス科はコロナウイルスと同じ第4群に分類されますが、エンベロープはもちません

エンベロープはアルコール(と少しの水)によって化学的に破壊されて機能を失うため、エンベロープを有しているコロナウイルスに対してはアルコール消毒がとても有効です。可能であれば部屋を出入りするたびにアルコール消毒するのが良いでしょう。

 

 どうやったら予防できるのか

コロナウイルスを予防するためには、まずどのように感染するのかを知っておく必要があります。

ウイルスには飛沫感染するものと空気感染するものが存在します。今回の新型コロナウイルスは飛沫感染するウイルスです。「エアロゾル感染」という単語を聞いたことがある人もいると思いますが、飛沫感染の一種だと考えて下さい。

飛沫というのは具体的には唾などの「しぶき」のことです。自分はそんなに汚い喋り方はしてない、と思っていても、喋っているだけで目に見えないほど小さい飛沫は生じてしまうものなのです。皆さんは自覚がないだけで、知らず知らずのうちに周囲に飛沫を撒き散らしています。

「飛沫感染」というのは、そのようにして生じた飛沫にウイルスが乗って、空気中を漂っているうちに他人の粘膜に付着し感染してしまうことを指します。字面だけ見ると汚い感じがしますが、実際にそういう経路で感染が起きています。

※ 因みに、空気感染する代表的な病気は以下の3つです。

・はしか(ウイルス)
・水ぼうそう(ウイルス)
・結核(菌)

空気感染するウイルスは非常に感染力が高いのですが、これまでの調査・研究から、新型コロナウイルスでは空気感染は起きていないと結論されています。

ウイルスは主に口から体内に侵入します。ではマスクをしていれば良いのかというと必ずしもそうではありません。実はマスクではウイルスを100%防ぐことはできないのです。

でも花粉は防げますよね?・・・そう思った貴方、結構鋭いです。

花粉(30~40μm)とウイルス(数十nm~数百nm)ではその大きさにかなり違いがあり、多くのウイルスは花粉の1/1000~1/100程度(※注)の大きさしかありません。マスクは一見すると鼻~口元にかけてを密に覆っているように見えますが、実はウイルスからしてみるとスカスカなのです。そのため、マスクはウイルスを完全にブロックすることはできません。

※注: 1000 nm (ナノメートル) = 1 μm (マイクロメートル)

しかし先程述べたように、この新型コロナウイルスは飛沫感染により広がります。飛沫の大きさは一般的に数μm~数十μm程度なのでマスクによって大部分の飛沫は空気中への拡散を防止することができます。また、自分から生じる飛沫だけでなく他人から生じた飛沫もブロックすることができるため、人前で喋る場合や、どうしても人混みの中に行かなければならない場合はマスクをした方が良いでしょう。

ここで注意したいのは、マスクをしたことにより、かえって顔やマスクを触る頻度が増加してしまうことがあるという点です。特にマスクがずれてきたときや、一時的に外したいときなどにマスクの中央部分を触ってしまう人が多いですが、その部分にこそ大量の飛沫が付着しているのです。そのままの手で目をこすったりすると、そこからウイルスに感染してしまう可能性があります。それではマスクをする意味が全くありませんし、マスクを付けたことがかえって裏目に出てしまいます。

マスクを付けるときや外すとき、かけ直すときなどはマスクの取り扱い・触り方に十分注意して下さい。あまりマスクを過信することがないように注意しましょう。マスクの正しい取り扱い方をネットに掲載しているHPは沢山あります。詳しくは「ウイルス・菌を防ぐマスクの正しい使い方」(ウイルス・菌対策研究所HPより)などを参考にして下さい。マスクに関する意識調査も掲載されていますので是非ご覧下さい。

この新型肺炎ウイルスについてはエアロゾル(一般的な「飛沫」より小さい空気中を漂う微粒子)でも感染が起こり得るとの情報もあり、正直マスクだけで完全にウイルスを遮断するのは困難(というか無理)です。自分の免疫系をできるだけ弱らせないことも、感染しないうえで重要です。きちんと睡眠時間を確保し、バランスのとれた食生活を心掛けましょう。閉鎖された空間では特に感染しやすいことが報告されています。適宜に窓を開けるなどして対策して下さい。

感染を防ぐ上で最も重要なのは頻繁な手洗いうがいです。家に帰ってきたときは特に入念に手洗いうがいを行い、可能であればさらにアルコール消毒もできる良いでしょう。アルコール消毒液が手に入るなら、ドアノブやスイッチなど、多くの人が触れる部分を徹底的に消毒することをお勧めします。

なお、ビールやワイン、日本酒などのお酒には当然アルコールが入ってはいますが、いくら飲んでもウイルスに対しては全く効果はありません。アルコール度数が70%程度の飲料であれば殺菌・消毒効果はありますが、服用するのもどうかという感じはします・・・。どちらかというと手に塗った方が良いのではないでしょうか。

20年前に流行したSARSの場合は罹患者の排泄物から感染が広がったというケースも少なからず報告されています。特に大便の後は必ず手を洗い、更にトイレ全体や自分の身体全体をアルコール消毒するべきです。

また、厚生労働省がアナウンスしているように、

・換気が悪い場所
人が密に集まって過ごす場所
不特定多数の人が接触するおそれが高い場所

など感染リスクの高い場所(いわゆる「三密」)を避けるように心掛けるべきです。厚生労働省の資料にもある通り、飛沫感染を避けるためにはライブハウスやビュッフェ形式のレストラン、スポーツジムなどはできれば利用を避けるのが賢明です。当然、お店側も十分対策しているでしょうが、来店する人全員が衛生的な対応をしてくれるとは限りません。最近報道があったように、検査の結果が陽性で自宅待機を要請されていたにもかかわらず居酒屋等に出入りする真に愚かな人間蒲郡市の例)も世の中にはいますので、そこは各自がどう判断するかだと思います(ここまでされてしまうと危機管理もへったくれもありませんが)。

上記の3条件を満たす場所としては通勤電車も挙げられます。政府のイベント自粛要請が発表された当初から、満員電車にはなぜ何の要請も行われないのか、という疑問がネット上に噴出していました。これに関しては疑問の余地はありますが、強いて言えば(発声・飲食を伴わないため)電車に乗っているだけでは飛沫を生じにくいこと、滞在時間が限定的であることなどが政府も強く言えない理由かと思われます(この辺りの問題についてはさらに後述します)。

本当に社員を守る気概のある企業であればテレワークを積極的に推進するはずです。感染者の出た「電通」がテレワークを導入したのはある意味当然のことですが、外出の回数を最小限に抑えるためにもテレワークは取り入れられるべき働き方と言えるでしょう。ウイルスによって働き方改革が進むというのも何だか皮肉な話ですね。

 

 

 希望者全員が検査を受けられる訳ではないのはなぜか

ウイルス検査は「PCR検査」という形で行われます。PCRとは「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase chain reaction)のことで、ごく少量の遺伝子をPCRによって増幅させることで同定する検査方法がとられています。大学で生物系の実験をやったことがあれば少し馴染みがあるかもしれませんね。この検査法は現状の方法では時間(検体のやり取りを含めると少なくとも1日以上)がかかることや精度がそれほど高くないこともあり、陽性なのに陰性(偽陰性)と判断されたり、陰性なのに陽性(偽陽性)と判断されるケースがあります。

偽陽性であっても陽性と判断されれば入院などの隔離措置を取らざるを得ないため、本来は慎重に行わなければいけない検査なのです。そのため、医師の判断→保健所の判断という二重の障壁を敷いています。また、保健所で1日あたりに検査できる回数にも限りがあります。国内でこれだけ(爆発的に)感染拡大が起きるというのはなかなか想定していなかったというのが実際のところでしょう。政府は検査体制の増強を約束していますが、今後どうなるかは分かりません。

ネット上では、予定通りのオリンピック開催を目指している日本政府が、わざと検査数を減らして患者数を少なく見せかけようとしている、といった陰謀論が一時期流布しました。政府としては一刻も早くこの事態を収束させようと躍起になっているため、むしろ検査数を増やすのではないかと考えてしまいますが。(※オリンピック後に感染のピークを持ってこようとしているという見方もあるようですが、どうやったらそんなことができるのでしょうか?)

ただ、現在の検査体制から考えると、実際に感染している人は公表されている数の数倍~数十倍になっている可能性があります。それは否定できません。

対応が後手に回っている理由としては、どちらかと言うと、中国の習近平氏の国賓としての来日日程が4月に迫っていたことが影響していると思います。日本政府としては中国もとい、ウイルスとの我慢比べに敗れたという結果に終わりました。習近平氏の来日が延期されるのとほぼ同じタイミングで中韓からの入国者隔離措置を発表したことから察するに、中国政府を忖度していたのは明々白々でしょう。この点では日本国民は自分たちの生命が軽視されていると憤るべきです。

現在、保健所はフル稼働しています。希望者全員がウイルス検査を受けられる訳ではないのはなぜかについて、BuzzFeed Newsで特集が組まれています。参考までにご覧下さい。

新型コロナ、なぜ希望者全員に検査をしないの?  感染管理の専門家に聞きました」BuzzFeed News より

また、新型コロナウイルスについて分かりやすくまとめられている記事がnewspicksにおいて無料公開されています。時系列に沿った事態の推移も追うことができます。(※編注:現在では既に無料公開を終了してしまったようです

【無料公開中】最新版:新型コロナのすべて」newspicks

 

 

 なぜトイレットペーパーはスーパーの棚から消えたのか

最近トイレットペーパーがどこも品薄で、困っている人は多いと思います。事の発端は恐らくSNSでしょう。

「マスクと同じ紙製品のトイレットペーパーが品薄になる」

という主張は一見合理的に見えます。同様に生理用品も買占めが相次ぎました。典型的なデマなのですが、どこがウソだか分かりますか?

実は(?)、

マスクは紙製品ではありません。

これを知らない人が意外と多くてそれだけでも驚きなのですが、このデマを鵜呑みにしてトイレットペーパーの買い占め・転売が横行したのですからとんでもない話です。実際にマスクのパッケージの裏の原材料欄にはすべてPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)と書いてあります。大抵のマスクは不織布でできています(実際には紙マスクもありますがかなり少数派です)。

マスクは確かに品薄になっていてネットオークションサイトにおいて不当な価格で転売されていたりしますが、トイレットペーパーまで品薄になるとは思いもよりませんでした。オイルショックならぬコロナショックと言うべき騒動です。一方、生理用品はマスクと同じ不織布で製造されており品薄が懸念されていましたが、供給体制の問題はないため、品薄は一時的なものだと思われます。

マスクは全国的に転売されており、メルカリやヤフオクでは最近になって自主規制を行うようになりました。政府が煽り運転より(?)重い罰則規定を設ける動きが出たためかと思います。どこぞの静岡県議会議員がマスクを転売していた件もあり、今後の規制強化が待たれます。余談ですが、マスクの転売は中国でも(かなり)盛んです。ネット上には中国人によるマスク買い占めを何とか阻止する店の取り組みについても紹介されており物議を醸しています。

トイレットペーパーはアメリカやオーストラリアでもスーパーの棚から消えています。こちらは紙製品がどうこうというより、単に持久戦のために買いだめに走っている印象ですが。またオーストラリアでは使い捨て指サック感覚で使うためにコンドームがバカ売れしています。エレベータのスイッチなど不特定多数の人が触れる部分を触るときに使うようです。因みに、指サック自体は海外ではあまり流通していません。

ともかく、必要としている人・機関に必要なモノが必要な分だけ行き渡る体制が早めに整うことを期待しています。

 

 

 全国一律休校措置に効果はあるのか

この疑問に関しては正直何とも言い難い部分があります。北海道知事や大阪府知事が小中学校を一斉休校にしたこと受けての措置だと考えられますが、全国一律にという点に関しては正直どこまで疫学的に正当性があるかは微妙なところです。

休校措置を取ることによって子供達の生命を守る、という説明が安倍総理大臣からありましたが、説明の仕方が不十分というか下手だと思います。この判断自体かなり急なものでしたので、記者会見が開かれるということで、国民は当然その意図や理由について、きちんと説明がなされるものと考えていたと思います。記者への質問対応もまばらに記者会見を終えてしまったのは正直マイナスポイントでしかありません。

教育現場は当然ながらパニックです。成績をどのようにつけるのか、卒業式をどうするのか、何も決まらないまま翌週からいきなり休校にするというのはどう考えても無茶苦茶な話です。

暇を持て余した中高生が押し寄せるであろう各種レジャーランドやアミューズメントパークが感染拡大を防止するために営業を自粛したことは評価できますが、カラオケなどは学生に対してどのように対応していたのでしょうか。市中感染が相次ぐ中で対策もなしに営業するのはカラオケに来た客に飛沫感染して下さいと言っているようなものです。

現状日本国内においては、どれだけ多くの患者・キャリア(ウィルスの保有者)がいるのか全くもって不明な状況です。PCR検査を積極的に(求める全ての人に)実施しない理由は先ほど説明しましたが、全体的に政府の説明はあまり具体的ではなく、施策の意図がつかめない部分があります。それは総理大臣の要請とそれに続く記者会見についても同じです。

特に全国の小中学校・高校の一斉休校要請に関しては、「やってる感」、「取り組んでる感」を演出するための一種のパフォーマンスであると断定されても文句は言えない発表内容だったのではないかと個人的には思います。専門家会議を経ていない決定とのことで、お粗末な対応だと思われても仕方ないでしょう。

一応、好意的に解釈するならば、行政としては商業活動を強制的に停止することができず、行政の意向で停止できる機関は役所か小中学校(+高校)ぐらいしかないというのが実際のところです。政府には企業の活動を強制停止させるほどの権力は無いのです(そんなことをすれば憲法違反です)。そこで学校をまずストップすることで商業活動や人の移動を間接的に制限しようとする意図があったのではないでしょうか。これに関しては全くの憶測です。現状ではあまり評価されていない施策ですが、後々これが功を奏したと言われるようになるかもしれません。

現在の日本政府はいわゆる「大きな政府」ではありません。経済活動を強制的に中断・停止させるような権限は政府には無いですし、休業に伴う経済的損失を補償できる能力がこの国にあるとは考えにくいです。政府として国民に対して直接何かできることといえば、国民の皆さんにお願いすることくらいしかありません。だからこそ国民の自主的な自宅待機、集会の自粛などが求められているのです。結局、この施策の良し悪しというのは事態が完全に収束した後にしか判断できないものだと思います。今は国民の力を合わせて事態収束に向けて努力するのが先決でしょう。経済的損失の補償についてはその後に幾らでも求めれば良い。そのためにも政府は積極的に正確かつ迅速に最新の情報を国民に提供すべきです。

 

 

 私見など

この数週間で、人々は精神的に疲弊しています。

相当数の大学で卒業式や入学式が延期もしくは中止になっています。ほとんどの場合は中止でしょう。中には後期試験がなくなったところもあります。受験を予定していた学生の中には人生が変わってしまった人もいるでしょう。

ライブ、コンサート、演奏会の類はほとんど全て中止となり、中には当日直前に中止が決定したものもありました。これはあくまでも政府の要請ということであり全く法的な拘束力を持ちませんが、多くの主催者は日本の悲惨な現状を重く受け止め、断腸の思いで開催中止に踏み切っています。

一方、ネット上には心ない意見もたくさんあります。あくまでも政府の要請でしかない(法的拘束力は無い)のだから、どうしてもやりたかったのならやれば良かったじゃないか、SNS上で政府の決定に文句を垂れるくらいならやれば良かったじゃないか、など。音楽関係者への中傷も現実に起きている問題です。

こういう心ないコメントをする人間は微塵も考えていないのだと思いますが、開催に踏み切った場合のリスクを考慮すれば自粛せざるを得ないのが実情です。この場合の具体的なリスクとは、もしキャリア(ウィルスの保有者)がライブやコンサートを訪れていた場合、その人がスーパースプレッダーになってしまう可能性です。現に一部のライブハウスではそのような現象が確認されており否定の余地はありません。もしそうなってしまった場合の賠償責任は誰が負うのか、誰にどのように補償すれば良いのか、など現実的なリスクはまだ沢山あるでしょう。仮にそうなってしまった場合、業界への風評被害も懸念されます。

また、ネット上には、なぜ満員電車に関しては特に政府から意見がつかないのか、注文がつかないのか、という不平が散見されます。満員電車に対してはなぜ政府が要請しないのか。これに関しては私個人としても少し説明不足に感じられる点は否めません。経済活動の停滞を招いてしまう懸念があるというのはもっともな意見ですが、それはその他の集会に関しても該当しています。一つ擁護するとすれば、密集こそしているものの長時間同じ人間が滞在するわけではなく、濃厚接触の可能性は相対的に小さいという点でしょうか。ただ、テレワークは当然推奨すべき勤務形態であることは間違いありません。

世代間の相互不理解も目立つようになってきています。メディアの報じ方にもやや問題がありますが、厚生労働省の発表内容を見る限りでは(厚労省のホームページは今やや繋がりにくい状態です)、若者に対して自粛を要請するものであるということは明白です。これを読んだ人の中には若者がキャリアとなっていて危険だという印象を受ける人もいるでしょう。現に50、60代の人間に悪態をつかれたという若者もいるようです。


インターネットが身近になった時代だからこそ求められる情報リテラシーは、どのように身に付ければよいのでしょうか。SNSが台頭してきた10年ほど前から言われている問題ですが、メディアの多様化する現代において、これは結構難しい問題だと思います。

病院に来た人・連絡した人が全員ウイルス検査を受けられるわけではない、というのは事実です。でもそれは意地悪をしている訳ではなく、人的資源を重病者に回して医療崩壊を防止するのに必要だからなのです。実際に韓国では日本と同様の国民の不満に応えて検査を大量に行ったため、陽性の患者を受け入れられる病院が足りていない状況です。市中感染の拡大している状況では、重病者を優先的に入院させることのできる体制を整えなければ、死亡者が瞬く間に増えています。日本国内の病床の数には制限があります。病院の数に限りがあるのですから当然ですね。病院側の人的な負担も考慮しなければなりません。

また、今回のコロナウイルスは、ウイルスとしては未知ですが、ウイルスの種類としては既知です。 ここを勘違いしている人が多いのですが、この点を好意的に解釈すると、最近話題の総理大臣の発言と厚生労働省の見解の不一致は単なる行き違いだったのかなと思います。(まあしかしこの国の総理大臣がこの違いを理解して発言しているとも思えませんが)

補足しておきますが、今回の新型肺炎コロナウイルスは10年ほど前に流行した新型インフルエンザウイルスと類似の構造(エンベロープ)を有しており、アルコールで消毒することが可能です。最悪の場合、死に至ってしまうのはインフルエンザでも同じです。衛生管理をしっかり行って各自の努力で感染を防ぐことが何よりも大切です。死者数ベースで見れば、世界に比べて日本はかなり善戦しています。


12月の末から1月にかけては中国の武漢で中国当局による必死の封じ込めが行われていましたが、 2月の春節(2月12日)を前に人々が中国国内外に大移動を始めたことで水際対策もあまり意味がないものになってしまいました。中国国内の患者数のデータの信憑性に関してはそのまま信じることができない部分があります。今回もSARSのときと同様、ウイルスの報告を揉み消そうとしたことが初動の遅れにつながっていると言われています。WHOの対応の鈍さも今回の新型肺炎禍拡大を助長している要因の一つです。SARSのときのように、いつまた「このウイルスは中国を陥れるための何者かによる陰謀だ」などというプロパガンダを唱え始めるとも限りません。

安倍政権の初動の遅れは批判に値します。オーストラリアやニュージーランドは中国からの入国制限を早い段階で実施するなど、かなり対応が早かったですからね。なぜここまで入国制限が遅れたかと言えば、上述の通り中国政府への忖度があったからでしょう。あるいは、今となっては考えにくいですが、日本政府が新型肺炎ウイルスを甘く見ている(見ていた)ことが理由でしょうか。

数ヶ月後にオリンピックを開催するほどの余裕が世界にあるかというと、恐らく厳しい状況でしょう。日本が回復しても世界のどこかではまだ感染が続いている可能性は十分あり、その中で人の大移動を伴うオリンピックを強行するのは無理があります。SMBC日興証券の試算によれば、東京五輪を中止した場合の損失は7.8兆円に上るとのことです。現政権のことですから、天秤にかければ開催の方に振り切れるのだと思いますが、仮に実施できたとしてもかなり縮小した形態での運営にならざるを得ないでしょう。その場合でも開催しないよりマシと果たして言えるかどうか。五輪が近付くにつれて官邸主導による事態の矮小化が進まないかが懸念されます。

日経平均株価は先週だけで3000円以上値下がりし、2万円台に突入しています。アメリカやヨーロッパにも感染が拡大しており、日本では近く中国と韓国に対する事実上の入国制限・検査の重点化が発動される見通しです。経済の先行きに対する不安感が今後小さくなるとは考えられず、今週はさらに割り込んで久しぶりに1万9000円台まで到達するのではないかと予想されます。日本やアメリカでは財政出動を示唆する動きがあり、市場ではしばらく激しい乱高下が続きそうです。

今年2月末からのエンターテインメント産業への打撃は相当なものでしょう。東日本大震災のときも全国に自粛ムードが広がりましたが、今回は全国的に感染が広がっている点や、いつになったら終息するのか誰も見通せないという点において、自粛の質も程度も大きく異なります。国内に限らず、今回の新型肺炎により経済は世界規模で甚大な被害を受けています。世界の特定の地域でウイルスを封じ込めれば良いという訳でもなく、その後何らかの経済的特需が生まれる保証もないため、その他の国の対応次第では感染者・死者数が爆発的に増加し、世界恐慌に陥る可能性もあります。経済的な打撃による自殺者数も侮れません。下手をすれば肺炎による死者数を上回る可能性もあります。更にオリンピックの中止ともなれば日本のGDP成長率は信じられないほど大幅なマイナスとなるでしょう。ただでさえ増税の影響で消費が落ち込んでいるというのに、今回のコロナウイルスの影響でさらに下振れし、リーマンショック級の下落を記録するでしょう。結果論ですが、増税のタイミングとしては最悪だったと言わざるを得ません。



厚生労働省が3月1日に公開した資料「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」の「国民の皆さまへのお願い」の項から抜粋します。

換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まることを避けてください。

◇ イベントを開催する方々は、風通しの悪い空間や、人が至近距離で会話する環境は、感染リスクが高いことから、その規模の大小にかかわらず、その開催の必要性について検討するとともに、開催する場合には、風通しの悪い空間をなるべく作らないなど、イベントの実施方法を工夫してください。

実際、これらは遵守すべき注意事項です。政府としては経済活動の制限をできるだけ抑制することで経済への影響できるだけ小さくしたいという意図があります。それは全国民がそう思っているでしょう。できるだけ早くこの疫病を鎮圧したい、そう思って国民は娯楽を自粛し耐えている。そんな状況で、なぜ政治家は政治資金パーティーを決行してしまうのか。理解に苦しみます。政府はやはり新型肺炎ウイルスを甘く見ているのか?そう思われるのも仕方ないでしょう。

不幸なニュースはまだあります。ハーバード大学のレターにおいて、春になってもウイルスが消滅するとは限らない、と注意喚起されています。今回の新型肺炎コロナウイルスはSARSと同種の人獣共通感染症であり、インフルエンザなどの季節性のウイルスとは異なるため、夏以降も収束しない可能性が高いでしょう。全世界での感染拡大状況を見るに、こうなるともうオリンピックどころの話ではなくなります。せめて100年前の「スペイン風邪」の再来にならぬよう防疫に徹するしかありません。

理想的な民主主義国家においては、国難の際に指導者が発揮する指導力は政府に対する国民の信頼度に掛かっています。何をやっているのか分からない、何のためにやっているのか分からない。国民がそんな状態では国をまとめることができません。要するに国民は不安なのです。少なくとも、国民に安心感を与える材料を提示できない政治家はリーダーに向いていません。それはどこの国でも同じです。



 

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