有機化学:酸化数から還元剤とヒドロホウ素化を理解する

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

有機化学では、電子が式に現れなくても酸化還元が起こります。炭素の酸化数を数える方法から始め、H⁺、H⁻、B–Hの違いへ進みます。

結合電子を電気陰性な原子へ割り当てる

酸化数は、異なる原子間の結合電子を電気陰性度の高い原子へすべて割り当てたときの帳簿です。炭素については、C–H一本につき−1、C–Oなど電気陰性度の高い原子への単結合一本につき+1、C–Cは0として数えます。二重結合は二本分です。実際の部分電荷や形式電荷とは区別します。

一炭素化合物で数える炭素の酸化数−4。C–Hが4本です。

酸化数が増える変化が酸化、減る変化が還元です。酸素の増減だけでは判断できない反応にも使えます。

H⁺が付いただけで、還元とは限らない

水がH⁺を受け取ってH₃O⁺になっても、酸素の酸化数は−2のままです。電子対を伴わないH⁺の移動は、それだけで還元を意味しません。アルケンへのHBr付加では、Hが付く炭素の酸化数は下がり、Brが付く炭素では上がるため、二炭素を合わせれば変化は相殺します。

NaBH₄とBH₃は、電子の受け渡しが違う

BH₄⁻のB–H結合は、適切な求電子的カルボニル炭素へ水素をヒドリド相当として渡せます。アルデヒドやケトンの還元に使われますが、単純な非活性化アルケンを同じように容易に還元する試薬ではありません。

一方、BH₃は電子不足なホウ素を持ち、アルケンのπ電子と相互作用しながらBとHが協奏的に付加します。通常はBが置換の少ない炭素に付き、HとBは同じ面から付くsyn付加です。その後の酸化でC–BをC–Oへ変換すると、逆マルコニコフ型のアルコールが得られます。(OpenStax:8.5 ヒドロホウ素化による水和)

ジボランB₂H₆やBH₃錯体は、反応条件で利用されるホウ素試薬です。名称に水素やホウ素が共通していても、BH₄⁻と同じ電子状態・反応性ではありません。

アルコールとチオールでは、酸化される場所が違う

第一級アルコールでは、炭素上のHが減ってアルデヒド、さらにカルボン酸へ進む酸化が代表的です。チオールR–SHでは、二分子からジスルフィドR–S–S–Rを作る酸化が起こります。このとき主に硫黄の酸化状態が変化します。タンパク質のジスルフィド結合も、この結合形式です。

2 R–SH → R–S–S–R + 2H⁺ + 2e⁻
考えてみよう:プロトン化で分子の正電荷が増えたら、酸化された?

電荷だけでは判断できません。各原子の酸化数を追います。水のプロトン化のように、全体の電荷が増えても酸化還元ではない変化があります。