LaTeXスタイルの数式内で利用可能な書体

ウェブサイト上でMathJaxを使用している方向けに、LaTeXスタイルの数式内で利用可能な書体を一覧にしました。MathJaxでは以下のすべての書体をサポートしており、デフォルトで利用することができます。


※LaTeX文書用のパッケージを読み込むには、プリアンブルに

\usepackage{amsmath}

と書きます(この例ではamsmathパッケージを読み込んでいます)。数式を含むLaTeX文書を作成する際は最低限amsmathとamssymbはセットで読み込むようにします。パッケージの詳細な仕様については公式のドキュメントをご確認下さい。

 

指定なし

\[\small \begin{array}{c} {ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
{0123456789} \end{array}\]デフォルトの書体ですが、数式中で\mathnormalコマンドを使って敢えて指定することも可能です。

 

\mathbf:太字

$$\small \begin{array}{c} \mathbf{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathbf{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathbf{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書でもMathJaxでもデフォルトで使用可能。ベクトルや行列の表記などで用いられます。数字も太字になります。

(例)$$\mathbf{F C}=\mathbf{S C}_{\boldsymbol{\varepsilon}}$$

 

\boldsymbol:太字斜体

$$\small \begin{array}{c} \boldsymbol{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\boldsymbol{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\boldsymbol{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書内で利用するにはamsmathパッケージかbmパッケージの読み込みが必要です(MathJaxではデフォルトで使用可能)。こちらもベクトル表示などでお世話になることが多い書体です。数字は太字になるだけで斜体にはなりません。

(例)$$y = \boldsymbol{w}^{\top} \boldsymbol{x} + \varepsilon$$

 

\mathrm:ローマン体

$$\small \begin{array}{c} \mathrm{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathrm{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathrm{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書でもMathJaxでもデフォルトで使用可能。通常、LaTeX文書内の英字は\textrmコマンドを使わなくてもデフォルトでローマン体になります。数式中では\mathrmコマンドで指定します。

(例)$$\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}}}{3}$$

 

\mathit:イタリック、斜体

$$\small \begin{array}{c} \mathit{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathit{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathit{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書でもMathJaxでもデフォルトで使用可能。数字が斜体になる以外は、何も指定しない場合とほとんど変わりませんが、文字間隔が狭くなるので少しだけコンパクトに見えます。\textitコマンドは引用文などで使い、\mathitコマンドは数式中に斜体の英文字や記号を入れたいときに使います。

(\textitの場合)$$\textit{Einstein published four groundbreaking papers in 1905.}$$(\mathitではスペースが潰されます)$$\mathit{Einstein published four groundbreaking papers in 1905.}$$

(指定なし)$distance = speed \times time$

(\textit)$\textit{distance} = \textit{speed} \times \textit{time}$

(\mathit)$\mathit{distance = speed \times time}$

 

\mathsf:サンセリフ体(sans-serif)

$$\small \begin{array}{c} \mathsf{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathsf{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathsf{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書でもMathJaxでもデフォルトで使用可能。セリフの無いコンパクトなデザインの書体です。セリフ(serif)というのは明朝体の「ウロコ」のような飾りに相当する部分を指します。このような飾りがついている書体はセリフ体と呼ばれ、セリフがないものはサンセリフ体と呼ばれます。「sans(サン)」とはフランス語で「無い」を意味します。

(例)$$\mathsf{\dfrac{6n}{4}=\dfrac{3n}{2}=\left(1+\dfrac{1}{2}\right)n}$$

 

\mathbb:黒板太字

$$\small \begin{array}{c} \mathbb{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathbb{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathbb{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書内で利用するにはamssymbパッケージの読み込みが必要で、小文字と数字は使えません。MathJaxではデフォルトで使用可能。数学で集合の記号として使われる書体です。書体は英字だけでなく数字にも反映されます。MathJaxでは英数字すべてで書体が適用されます。

(例)$$\mathbb{Q}(\sqrt{m}) = \{a+b\sqrt{m} \mid a, b \in \mathbb{Q}\}$$

 

\mathtt:タイプライター体、等幅書体

$$\small \begin{array}{c} \mathtt{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathtt{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathtt{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書でもMathJaxでもデフォルトで使用可能なタイプライター風の書体です。文書中にプログラムのソースコードなどを挿入する場合に使う機会があるかもしれません。

(例)$$\begin{array}{l} \mathtt{\#include <stdio.h>} \\
\\
\mathtt{main( )} \\
\mathtt{\text{\{}} \\
\quad \mathtt{printf(\text{“}{hello, world\backslash n}\text{”});} \\
\mathtt{\text{\}}} \end{array}$$

 

\mathcal:カリグラフィ体(calligraphy)

$$\small \begin{array}{c} \mathcal{ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathcal{abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathcal{0123456789} \end{array}$$LaTeX文書内ではamsmathパッケージかamssymbパッケージの読み込みが必要で、大文字のみカリグラフィ体になります(小文字と数字は記号化する)。MathJaxでは小文字と数字も表示されますが、数字には若干の影響があります。演算子として使われることが多い書体です。

(例)$$F(s)=\mathcal{L}[f(t)]=\int_{0}^{\infty} f(t) e^{-s t} dt$$

 

\mathscr:スクリプト書体、花文字

$$\small \begin{array}{c} \mathscr {ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathscr {abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathscr {0123456789} \end{array}$$花文字をLaTeX文書内で利用する際はmathrsfsパッケージを読み込む必要があります(大文字のみ表示可能)。MathJaxではデフォルトで使用可能で、小文字と数字にも書体が適用されます。

スクリプト体は手書き風の筆跡を模した書体です。「スクリプト」とは「手書き」を意味します。数学では集合など、物理ではハミルトニアンなどの演算子を表す記号として用いられる書体です。

(例)$$\mathscr{H}\left|\Phi_{\alpha}\right\rangle=\mathscr{E}_{\alpha}\left|\Phi_{\alpha}\right\rangle \quad \alpha=0,1, \ldots$$

 

\mathfrak:フラクトゥール体(fraktur)

$$\small \begin{array}{c}\mathfrak {ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ} \\
\mathfrak {abcdefghijklmnopqrstuvwxyz} \\
\mathfrak {0123456789} \end{array}$$フラクトゥール体をLaTeX文書内で利用する際はamssymbパッケージを読み込む必要があります。MathJaxではデフォルトで使えます。

「フラクトゥール」はドイツ文字とも呼ばれる書体で、ブラックレターや “Old English” と同じ意味で使われている呼び名です。フラクトゥールは100年以上前の(特にドイツの)書籍や出版譜などで頻繫に見られます。第二次世界大戦の頃まではドイツで常用されており、終戦と同時に反ナチスの流れで廃れていきましたが、今でも新聞の見出しなどで使われています。アメリカ最大級のメディアである “The New York Times” のロゴに使われている独特な書体はオールドイングリッシュ体という種類の書体でフラクトゥールの仲間です。数学においてフラクトゥール体はイデアルや群の記号など、主に群論の分野で利用されています。

(例)$$p\mathcal{O}=\mathfrak{p}_{1}\mathfrak{p}_{2}\cdots\mathfrak{p}_{q-1}\Longleftrightarrow p\equiv 1\pmod{q}$$ $$\text{“} \mathfrak{1984} \text{” by George Orwell}$$


以上、数式内でのコマンドを紹介してきましたが、テキスト内で書体を変更する場合は \textrm などmath系ではなくtext系のコマンドを利用する習慣を付けましょう。

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