前回の問題は不等式での処理が解答の決め手でした。今回は各位の和に関する一風変わった問題です。
《問題#20》
数字根とは、ある自然数の各位の和を求め、さらにの各位の和を求める、・・・という操作を繰り返し行い、最終的に得られる桁の数のことを指す。例えば、の数字根はであるが、これはのように計算される。
を自然数とするとき、の数字根として得られる値をすべて求めよ。
(創作問題)
「数字根」という単語はあまり見慣れないかもしれませんが、の倍数の判定法などで、皆さんも知らず知らずのうちに恩恵を受けているはずですよ。あることに気付けば楽勝な問題ですね。
創作整数問題#19(解き方)
(前の投稿のコメントに関して)
元々は「整数」ではなく「自然数」とする予定でしたが、何故か問題文が「整数」という表記になってしまっていたので、やや絞り込みが煩雑ですが、ここではを「整数」として解いていくことにします。(指摘して下さった たけちゃん さんに感謝致します)
《作問者の一言》
折角なので、作問の経緯から解説していきましょう。
例えば、今年の北大理系数学で「が平方数となるような自然数をすべて求めよ」という問題が(誘導付きで)出題されました(文系の問題だと「」)。これはという不等関係から答を導くことができるという仕組みになっています。この場合だと上記の不等式により、与式が平方数になるとしたらの3つの場合しかあり得ないことが分かります。
このように一つの文字から成る整式であれば、を含む平方数で挟みこむことができます(平方数の挟み込みについては当ホームページの「整数第2章第4節 2.不等式の利用」の項でも取り扱っています)。これと同様の問題を立方数で作ってみた、というのが今回の問題#19です。実際、例えば2001年の一橋大学後期に、「正の整数」という限定付きではありますが、次のような立方数をテーマとする問題が出題されています。
(参考問題)を正の整数とする。はある整数の乗である。を求めよ。(2001年一橋大学(後期第1問))
一方で本問の場合は単に「整数」としかないので、負の立方数まで考慮する必要があり、候補の数が倍増(場合によっては倍以上!)してしまいます。これを何とかして不等条件で処理していきます。以下、解答のアウトラインです。
《考え方》
まず最初に注目すべきなのは与式の次数と最高次の項の係数ですが、次数は、係数はなので、との形の整式によってというように挟み込めそうです(ただしはを満たす整数)。そこで次に2次以下のの部分に注目します。はすべての整数について負になることはないので、下限についてが決定します(のとき①の左辺について展開するととなり確かに成立)。問題は上限ですね。そこで①の右辺を展開すると、 となります。これをに関する二次不等式と見なせば、必要条件としてが得られます(ただしは判別式)。前者からが直ちに分かります(∵は正の整数)ので、について調べます。判別式はなので、という条件はと書き直すことができます。しかしこの不等式は初等的に解くことができないので、「は整数」であることを思い出し、評価することにしましょう。不等式②の両辺をで割るととなります。ここで「はを満たす整数」と定めてあり、上述の通りが確定しているので、は正の整数となります。よって③の両辺は単調増加ですから、少なくともが必要で、これよりを得ます(実際とすると、③の左辺は、右辺はとなり確かに成立しています)。のとき、が成り立つので、結局③の右辺についてが言えますから、②を満たす最小の正の整数はであることが分かります。つまり、が以上のときはとなるため、最終的にが得られます。長い道のりでしたが、ここまで来れば後は単純作業です。計個の二次方程式をサクサク解いてを得ます。
(コメント&反省)
仮にが「自然数」であれば、と候補が少なくなり、「」のときと「」のときを調べて「」、というように簡単に答えられるのですが、「整数」としたことで絞り込みが非常に面倒になってしまいました。反省です。
必要条件からの候補を削減できないか、検討してみましょう。まず、与式が任意の整数について偶数になることに気付きます。なので偶数です。偶数であり、かつ立方数になるということは、これがの倍数であるということを意味しています。つまりがの倍数でなければならないので、少なくともがの倍数となることが必要です。これより、は「奇数」または「の倍数」に絞られることが分かります。ただ、これだけではの部分まで候補を絞れずなかなか活かせなさそうです。結局のところ個の方程式を黙々と解いた方が下手なことをするよりも速そうです。
ともかく本問の主眼は、大抵の1元3次式はの式で挟み込める、ということに尽きます。係数が穏やかでなければその限りではありませんが、恐らくそんな問題は出ないでしょう・・・。本問のようになどと置いてもなかなか進展しない問題に遭遇したときは、同次式による挟み込みで処理できないか疑ってみるようにしましょう。
因みに、②を無理やり解くとを得ます。とても素人の手に負える値ではありませんね(笑)。