母関数を用いた調和振動子の波動関数の規格化定数の導出

調和振動子の固有関数の規格化定数をエルミート多項式の母関数を用いて導出する方法のメモです。

 

 手順

調和振動子の固有関数$$u_{n}(x)=c_{n} H_{n}\left(x \sqrt{\dfrac{m \omega}{\hbar}}\right) e^{-\frac{m \omega x^{2}}{2 \hbar}}$$の表式に含まれる規格化定数$c_n$を求めるために、エルミート多項式の指数型母関数(ここでは$g(x,t)$とする)を用いて直交関係を導きます。そのための準備として、次の積分$$I=\int_{-\infty}^{\infty} g(x, t) g(x, s) e^{-x^{2}} d x$$を母関数$g(x,t)$の定義式により計算し、次に母関数をエルミート多項式の級数で表すことにより、積分$I$を別の形から考察することになります。

 

 導出例

エルミート多項式の母関数は$$g(x,t) \equiv e^{2 t x-t^{2}} \equiv \sum_{n=0}^{\infty} H_{n}(x) \dfrac{t^{n}}{n !}$$で与えられるから、これを積分$I$に代入すると、$$\small \begin{aligned}
I &=\int_{-\infty}^{\infty} e^{2(t+s) x-t^{2}-s^{2}-x^{2}} d x \\
&=\int_{-\infty}^{\infty}\left(\sum_{m=0}^{\infty} H_{m}(x) \dfrac{t^{m}}{m !}\right)\left(\sum_{n=0}^{\infty} H_{n}(x) \dfrac{s^{n}}{n !}\right) e^{-x^{2}} d x \quad \cdots (*)
\end{aligned}$$となる。

また、$$\small \begin{aligned}
I &= \int_{-\infty}^{\infty} e^{2(t+s) x-t^{2}-s^{2}-x^{2}} d x \\
&=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x-(t+s))^{2}+2 t s} d x \\
&=e^{2 t s}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x-(t+s))^{2}} d x \\
&=\sqrt{\pi} e^{2 t s} \quad \left(\because \text{一般に}\int_{-\infty}^{\infty} e^{-ax^{2}} d x = \sqrt{\dfrac{\pi}{a}}\,\right)\\
&=\sqrt{\pi} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{(2 t s)^{n}}{n !}
\end{aligned}$$と整理できるので、式$(*)$は次のように書ける。$$\small \sum_{m=0}^{\infty} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{t^{m} s^{n}}{m ! n !} \int_{-\infty}^{\infty} H_{m}(x) H_{n}(x) e^{-x^{2}} d x =\sqrt{\pi} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{(2 t s)^{n}}{n !}$$ $$\small \therefore \sum_{m=0}^{\infty} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{t^{m} s^{n}}{m ! n !} \int_{-\infty}^{\infty} H_{m}(x) H_{n}(x) e^{-x^{2}} d x =\sqrt{\pi} \sum_{m=0}^{\infty} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{t^{m} s^{n}}{m ! n !} 2^{n} n ! \, \delta_{m n}$$

この両辺は恒等的に一致するから、変数$t$(もしくは$s$)に関する恒等式と見なして各項の係数を比較することにより、以下に示すエルミート多項式の直交関係が得られる。$$\small \int_{-\infty}^{\infty} H_{m}(x) H_{n}(x) e^{-x^{2}} d x=\sqrt{\pi} 2^{n} n ! \, \delta_{m n} \quad \cdots (**)$$

波動関数は$$u_{n}(x)=c_{n} H_{n}\left(x \sqrt{\dfrac{m \omega}{\hbar}}\right) e^{-\frac{m \omega x^{2}}{2 \hbar}}$$で与えられるから、規格化条件$$\int_{-\infty}^{\infty} u_{m}^{*}(x) u_{n}(x) d x=\delta_{m n}$$について$m=n$の場合を考えると、$$\small \begin{aligned}
&\quad \, \left|c_{n}\right|^{2} \int_{-\infty}^{\infty} \left\{H_{n}\left(x \sqrt{\dfrac{m \omega}{\hbar}}\right)\right\}^{2} e^{-m \omega x^{2} / \hbar} d x \\
&=\left|c_{n}\right|^{2} \int_{-\infty}^{\infty} \left\{H_{n}\left(x^{\prime}\right)\right\}^{2} e^{-x^{\prime 2}} \sqrt{\dfrac{\hbar}{m \omega}} d x^{\prime} \quad \left(x^{\prime} \equiv x \sqrt{\dfrac{m \omega}{\hbar}}\right) \\
&=\sqrt{\dfrac{\pi \hbar}{m \omega}} 2^{n} n !\left|c_{n}\right|^{2} \quad \left(\because (**)\right) \\
&\equiv 1
\end{aligned}$$となるから$$\small \color{red}{c_{n}=\left(\sqrt{\dfrac{\pi \hbar}{m \omega}} 2^{n} n !\right)^{-1/2}}$$と求められる。

 

 エルミート多項式の母関数について

常微分方程式$$\left( \frac{d^2}{dx^2}-2x\frac{d}{dx}+2n\right) H_n(x)=0$$を満たす多項式$H_n(x)$をエルミート多項式といいます。エルミート多項式の具体的な表式は以下の通りです。$$\begin{array}{l}
H_{0}(x)=1 \\
H_{1}(x)=2 x \\
H_{2}(x)=4 x^{2}-2 \\
H_{3}(x)=8 x^{3}-12 x \\
H_{4}(x)=16 x^{4}-48 x^{2}+12 \\
H_{5}(x)=32 x^{5}-160 x^{3}+120 x \\
\quad \quad \quad \, \vdots
\end{array}$$

ロドリゲスの公式を用いると$$H_n(x)=(-1)^ne^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2}$$と表せるので、エルミート多項式は以下の漸化式を満たします。$$H_{n+1}(x)=2xH_{n}(x)-2nH_{n-1}(x)$$ $$\begin{cases} {\dfrac {d}{dx}}H_{n}(x)=2nH_{n-1}(x) \\ {\dfrac {d}{dx}}H_{n}(x)=2xH_{n}(x)-H_{n+1}(x) \end{cases}$$

エルミート多項式の母関数は$$g(x,t) \equiv e^{2 t x-t^{2}} \equiv \sum_{n=0}^{\infty} H_{n}(x) \dfrac{t^{n}}{n !}$$で与えられますが、これはダミー変数$t$で開いたときの表式です。なお、この式を真面目に導出するには複素関数の知識が必要なので既知としています。$e^{2 t x-t^{2}}$の微分が取り扱いやすいため、母関数を用いる方法は何かと便利で汎用性もあります。母関数は数列を係数に持つ形式的な冪級数を指しますが、今回のエルミート多項式のような「関数列」を係数に持つ母関数も定義できることは知っておいて良いでしょう。

母関数については当サイトの「母関数について」のページにまとめてあるので、詳しく知りたい方は是非ご覧下さい。

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