【順像法と逆像法①】直線の掃過領域を例に理解する

図形の通過領域を求める方法である「順像法」と「逆像法」は、軌跡・領域の単元で重要となる考え方です。今回はパラメータ表示された直線を例に、2つの手法の違いについて視覚的に詳しく解説します! さらに、包絡線を用いた領域の求め方も併せてご紹介します!


 

 「領域」について

まず、そもそも「領域」とは何でしょうか?

大抵の教科書には次のように書いてあります。

「領域」とは

$x$、$y$ に関する不等式があるとき、座標平面上でその不等式を満たす点 $x$、$y$ の集合を、その不等式の表す領域という。

例えば、$$y \leqq x^2$$という不等式が表す領域を$xy$平面上に図示すると以下のようになります。

この不等式は座標平面上の領域に読み替えると、「$y$ が $x^2$ 以下となる領域」という意味になります。因みに英語では「領域」のことを “domain” と呼ぶので、問題文ではしばしば「領域$D$」などと名付けられます。

(余談:正領域と負領域)

ある点が領域に含まれるかどうかを簡単に判定する方法があります。例えば、領域 $D$:$y \leqq x^2$ の場合、$$y-x^2 \leqq 0 \quad \cdots (★)$$と変形し、左辺を$f(x,y)$と置きます。この2変数関数$f(x,y)$に点の座標を代入してその正負を調べれば、その点が領域に含まれるかどうかが判別できます。

 

試しに$(-1,-1)$を代入してみます。$$\small f(-1,-1)=-1-(-1)^2=-2 \leqq 0$$より不等式$(★)$を満たすので、点$(-1,-1)$は領域 $D$ に含まれることが分かります。

 

次に、$(0,1)$を代入してみます。$$\small f(0,1)=1-(0)^2=1 > 0$$より不等式$(★)$を満たさないので、点$(0,1)$は領域 $D$ に含まれないことが分かります。

 

このように領域を表す不等式を変形し、陰関数の正負で領域内に属するかどうかを判定できます。


領域を表す不等式は別に一つだけとは限りません。むしろ二つ以上の不等式で表現されることの方が多いです。例えば次のような場合を考えてみましょう。$$D:\begin{cases} y \leqq x \\ x^2+(y-1)^2<0 \end{cases}$$この領域を図示すると以下のようになります。赤と青の2つの領域が重なる部分が領域 $D$ です。破線部の境界線上は含みません。

基本的に連立不等式で表現される領域はすべて「かつ」で結ばれているので、すべての不等式を満たす領域(積集合)が領域 $D$ となります。


領域の復習はこのくらいにしておきましょう。実際の試験では以下のような問題が出題されます。

問題

$a$を実数とし、以下の方程式で表される直線 $l$ を考える。$$l:y=2ax-a^2$$ $a$が任意の実数値をとるとき、直線 $l$ が通過する領域を求めよ。

この問題を解くには幾つか方法があります。そのうちで最もシンプルなのが「順像法」という手続きによるものです。

 

 順像法

順像法」は別名「ファクシミリの方法」とも呼ばれます。何故そう呼ばれるのかは後ほど説明します(他にも「正像法」とか「順手流」、「自然流」などの呼び名がありますが、考え方さえ知っていれば名前自体はどうでも良いので全部覚える必要はありません)

順像法の概要は次の通りです。

「順像法」の手順

① $x$(もしくは$y$)を固定する

② パラメータをすべての範囲にわたって動かし、$y$(もしくは$x$)のとりうる範囲(値域)を調べる

③ 得られた値域の上限・下限を境界線として領域を決定する

$x$を固定する」というのは $x$ を定数と見なす、という意味です。例えば、実数$x$は $1.5$ や $\dfrac{3}{7}$ や $-\sqrt{2}$ など様々な値をとりますが、それをある一定値に固定して考えるということです。

また、手順の②でやっているのは、与式を $y=f(a)$ という$a$の関数と考えて値域を調べる作業です。$f(a)$の次数や形によって、平方完成すればよいのか、それとも微分して増減を調べる必要があるのかが変わってきますので、臨機応変に対応しましょう。


早速、順像法を用いて先ほどの問題を解いてみましょう。

本問で登場するパラメータは$a$で、$a$は全実数を動くことに注意します。

問題(再掲)

$a$ を実数とし、以下の方程式で表される直線 $l$ を考える。$$l:y=2ax-a^2$$ $a$が任意の実数値をとるとき、直線 $l$ が通過する領域を求めよ。

順像法による解答例

$x=t$($t$は実数)と固定するとき、$$\begin{align} y &= 2at-a^2 \\ &= -(a-t)^2+t^2 \end{align}$$のように式変形できる。$a$はすべての実数にわたって動くので、$y$の値域は$$(-\infty <)\ y \leqq t^2 \quad$$となる(最大値をとるのは $a=t$ のとき)。

 

これはすべての$t$で成立するから、求める領域は$$y \leqq x^2$$となる。

図示すると以下のようになります。なお、図中の直線は $y=2ax-a^2$ です(図中の点$\mathrm{P}$は自由に動かせます)。

この図からも、直線 $l$ が通過する領域が $y \leqq x^2$ であることが見て取れると思います。


ところで、順像法による解答は理解できていますか?

解答では具体的に何をしているかと言うと「$x=t$ という$x$軸に垂直な直線上で条件を満たす点(下図中の点$\mathrm{Q}$)を求める、という操作を全実数$t$について行っている」というだけです。この場合の「条件」は「直線 $l$ が通過する」であり、赤と緑の2本の直線は $l$ に対応しています。

図を使って体感した方が早いと思います。上の図で点$\mathrm{P}$を動かさずに点$\mathrm{Q}$を色々と動かしたとき、点$\mathrm{Q}$を通る赤と緑の2本の直線も一緒に動きます。この2直線が問題文中の「直線 $l$」に相当しています。

点$\mathrm{Q}$をずっと上に持っていくと、ある点$\mathrm{P}$で止まり、2直線はお互いに一致します。これが領域の上限に相当します。要するに、点$\mathrm{P}$より上側の領域には直線 $l$ 上の点は存在しない、つまり、直線 $l$ は点$\mathrm{P}$より上側の領域を通過しない、ということを意味します。

これを$x$軸の左端から右端までくまなくスキャンするように調べ上げることで、直線の通過領域を求めることができます。これが「順像法」の考え方です。「順像法」が「ファクシミリの方法」とも呼ばれているのは、値域を調べる手順がファックスを送るときに紙をスキャンする様子に似ているためです。

順像法だと問題設定によっては多数の場合分けが発生するケースもありますが、基本的に全ての問題は順像法で解くことができます

それはそうと、今時カラーのFAXって使う人居るんですかね…(笑)

 逆像法

領域を求めるもう一つの強力な手法を紹介します。それは「逆像法」と呼ばれる方法で、順像法の考え方を逆さまにしたような考え方であることから、「逆手流」などと呼ばれることもあります。

逆像法の概要は次の通りです。

「逆像法」の手順

① 与方程式(もしくは不等式)をパラメータについて整理する

② パラメータが実数として存在する条件を判別式などで求める

③ 得られた$x$、$y$の条件(不等式)から領域を決定する

与方程式(不等式)をパラメータについて整理するというのは、元々$x$と$y$の式だと思っていた与式を、パラメータを変数とする方程式に読み替えることを指します。

例えば、$y = 2ax-a^2$ という直線 $l$ の方程式は、$a$が単なる係数で、メインは$x$と$y$の式、という風に見えますが、これを$$a^2-2xa+y = 0 \quad \cdots (*)$$と変形してやれば、$a$に関する二次方程式として見ることもできますよね。

いま、$a$は実数でなければならないので、$a$の方程式$(*)$は少なくとも1つ以上の実数解を持つ必要があります。方程式$(*)$はちょうど$a$に関する二次方程式になっていますから、ここで実数解をもつ条件を調べます。

判別式 $D/4 = (-x)^2-1 \cdot y$ について $D \geqq 0$ が必要なので、$$x^2-y \geqq 0 \quad \cdots (**)$$が必要条件となります。逆に$(**)$が成り立つとき、方程式$(*)$を満たす実数$a$は必ず存在するので、これは十分条件でもあります。

したがって、方程式$(*)$を満たす実数$a$が存在することと条件$(**)$は同値なので、条件$(**)$を満たすような$x$、$y$の存在領域が求める領域そのものとなります

以上の流れを答案風にすると次のようになります。

問題(再掲)

$a$ を実数とし、以下の方程式で表される直線 $l$ を考える。$$l:y=2ax-a^2$$ $a$が任意の実数値をとるとき、直線 $l$ が通過する領域を求めよ。

逆像法による解答例

直線 $l$ の方程式は$$a^2-2xa+y = 0 \quad \cdots ①$$と変形できる。$a$は実数であるから方程式$①$は少なくとも1つ以上の実数解を持つ必要がある。故に判別式より、$$D/4 = (-x)^2-1 \cdot y \geqq 0$$ $$\therefore y \leqq x^2 \quad \cdots ②$$を得る。$②$が成り立つことと、方程式$①$を満たす実数$a$が存在することは同値であるから、求める領域は$$y \leqq x^2$$となる。

あまりにもあっさりしていて、初見だと何が起こっているのか訳が分からないと思います。これも図を使って理解するのが良いでしょう。

順像法のときは先に点$(x,y)$を決めてから、これを通るような直線を考えていました。つまり、順像法では点$(x,y)$を軸に平行な直線上に固定し、$a$の値を色々と動かして可動範囲をスキャンするように探す、というやり方でしたよね。

これに対して、逆像法ではパラメータ$a$を決めて直線 $l$ を固定してから、その上の点$(x,y)$を隅々まで探す、というイメージで掃過領域を求めます。

例えば、下の図で点$\mathrm{R}$が $y \leqq x^2$ の領域(赤塗りの部分)にあるときは、直線 $l$ 上に点$\mathrm{R}$を乗せることができます。

しかし、$y>x^2$ の領域(白い部分)に点$\mathrm{R}$があるときは、いくら頑張っても直線 $l$ は点$\mathrm{R}$を通過できません。このことこそが$a$が実数となるような$x$、$y$が存在しないという状況に対応しています(※このとき、もし直線 $l$ が点$\mathrm{R}$を通過するなら$a$は虚数になります!)。

下図中の点は2つとも動かせます。是非、実際に手を動かして遊んでみて下さい!

先程から直線 $l$ が2本表示されていることについて疑問を持っている人がいるかもしれません。ある点$(x,y)$を通るような直線 $l$ が2本存在するということは、$x,y$がその値をとるときに$a$の二次方程式$$a^2-2xa+y = 0$$が異なる2つの実数解をもつということを意味しています。

 

実際、$y<x^2$ のとき$$a=x \pm \sqrt{x^{2}-y}$$という異なる2つの解が存在するため、これに対応して点$(x,y)$を通る直線 $l$ も異なる2本が存在します。


さて、ここで一つ注意事項があります。逆像法は確かに領域をズバッと求めることのできる強力な手法ですが、パラメータの式が複雑なときはあまり威力を発揮できないことがあります。

例題では、直線 $l$ の方程式が$$a^2-2xa+y = 0$$と2次式に変形できたので解の実数条件に持ち込むことができました。しかしこれが$a$の3次式や4次式になると、逆像法では手に負えなくなります(一般に、3次以上の方程式では解の存在条件を調べるのが難しいためです)。

例えば、実数$a$が $0<a<2$ の範囲を動くときの直線 $l:y = ax+a^3$ の掃過領域を求めるといった場合では、逆像法だとかえって解答が面倒になってしまいます。

逆像法は、パラメータが1文字で2次以下、もしくは、パラメータが2文字でかつ対称式によって表せる、という条件の下で主に有効な手法です。使っていくうちに何となく感覚として身に付くとは思いますが、前もって覚えておくと良いでしょう。

 

 順像法と逆像法のまとめ

では、ここで順像法と逆像法の要点をおさらいしておきましょう。

「順像法」の要点

 

① $x$(もしくは$y$)を固定する

② パラメータをすべての範囲にわたって動かし、$y$(もしくは$x$)の値のとりうる範囲(値域)を調べる

③ 得られた$x$、$y$の不等式から領域を決定する

 

順像法では点$(x,y)$を軸に平行な直線上に固定し、$a$の値を色々と動かして点の可動範囲をスキャンするように隈なく探す手法。基本的に全ての問題は順像法で解答可能。複雑な場合分けにも原理的には対応できる。

「逆像法」の要点

 

① 与方程式をパラメータについて整理する

② パラメータが実数として存在する条件を判別式などで求める

③ 得られた$x$、$y$の不等式から領域を決定する

 

パラメータを変数と見て実数条件に読み替え、点$(x,y)$の存在領域をパラメータに関する方程式の解の配置問題に帰着して求める手法。ただし、逆像法はパラメータが1文字で2次以下、もしくは2文字でかつ対称式によって表せる場合に有効。複雑な場合分けはやや苦手。

簡単にまとめましたが、実際に色々な問題に触れ、それぞれの方法に慣れておくことが大切です。

 

 包絡線による方法【発展的内容】

最後にオマケとして包絡線(ほうらくせん)を用いた領域の求め方を紹介します。この方法の背景となる数学的な理論は高校範囲を超えるので、実際の入試では検算くらいにしか使えません。難しいと感じたら読み飛ばしてOKです。


まず「包絡線」について簡単に説明しておきます。

$t$をパラメータとします。方程式 $f_t(x, y)=0$ の左辺を、$t,x,y$の3変数からなる関数$F(t,x,y)$と見なし、さらに$F(t,x,y)$が微分可能であるとします。$t$で微分可能な関数$F(t,x,y)$について、$$\begin{cases} F(t,x,y)=0 \\ \dfrac{\partial }{\partial t}F(t,x,y)=0 \end{cases}$$を満たすような点の集合から成る曲線を、曲線群 $f_t(x, y)=0$ の包絡線と言います。

厳密な理論をすっ飛ばすと、パラメータを含む曲線群 $f_t(x, y)=0$ の包絡線は以下の手順で求めることができます。

包絡線の求め方

① $F(t,x,y)=0$ の両辺を$t$で微分する($x, y$は定数と見なす)

② 微分した結果を$t$について解く

③ ②で得られた式を $F(t,x,y)=0$ に代入して$t$を消去する

この手順に従って直線群 $l_a:y=2xa-a^2$ の包絡線を求めてみましょう(パラメータは$a$です)。式を整理すると$$a^2-2xa+y=0$$となるので$$F(a,x,y)=a^2-2xa+y$$と置きます。以下、手順に従います。

①:$F(a,x,y)=0$ を$a$で微分すると$$2a-2x=0$$となる

②:$a=x$ を得る

③:$a^2-2xa+y=0$ に $a=x$ を代入して整理して$$y=x^2$$を得る。

これより、直線群 $l_a:y=2xa-a^2$ の包絡線は放物線 $y=x^2$ であることが分かりました。実際、直線 $l$ はこの放物線の接線として振る舞うので、正しく包絡線が求められています。

以上のことから、直線 $l$ は放物線 $y=x^2$ にピッタリくっつきながら動くことが分かります。よって直線 $l$ の掃過領域は $y \leqq x^2$ と即答できます。

または、放物線の方程式が予め分かっていれば、直線の方程式と連立して重解をもつことを示せば包絡線になっていることが言えます。

※以上のことは全く自明ではないので厳密に証明する必要はありますが、答えのアタリを付けたり、検算に使ったりするくらいには使えます。もちろん、この事実を知らなくても大学受験に臨む上では全く問題無いので、そういうもんなのか、と思っておくだけでも十分です。

 



(コメント)

やはり一纏めの記事にすると結構なボリュームになりますね! 順像法や逆像法は教科書ではあまりマジメに取り扱われていない内容なので、勉強の仕方に困る受験生は多いと思います。今回の記事がそんな方々の理解の助けになれば幸いです。領域を求める問題を順像法と逆像法の両方で解き比べてみて、勘を養っておくと良いと思います。

 

難関大学では点の存在領域や直線の通過する領域を求めさせる問題がそれなりの頻度で出題されています。特に東大は直線や曲線の掃過領域を図示させる問題が出題されやすいので、しっかり対策しておくべきです。

 

余談ですが、教科書ではあまり「掃過」という用語を見掛けない気がします。あまり一般的ではないのでしょうか…?(^_^;)

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