とある不等式の問題(2)

とある不等式に関する問題を取り上げてみます。

 


次の不等式の問題には幾つかの解法が考えられます。

問題

実数 $a$、$b$、$c$ が $a+b+c=\sqrt[3]{a}+\sqrt[3]{b}+\sqrt[3]{c}$ を満たすとき、不等式 $a^{a} b^{b} c^{c} \geqq 1$ が成り立つことを示せ。


まず与式を用いて$$\small \begin{aligned}
1 &=\dfrac{\sqrt[3]{a}}{a+b+c}+\dfrac{\sqrt[3]{b}}{a+b+c}+\dfrac{\sqrt[3]{c}}{a+b+c} \\
&=\dfrac{a}{a+b+c} \cdot \dfrac{1}{\sqrt[3]{a^{2}}}+\dfrac{b}{a+b+c} \cdot \dfrac{1}{\sqrt[3]{b^{2}}}+\dfrac{c}{a+b+c} \cdot \dfrac{1}{\sqrt[3]{c^{2}}} \quad \cdots (*)
\end{aligned}$$のように整理しておきます。

ここで加重AM–GM(加重算術幾何平均)の不等式$$\small \dfrac{w_{1} x_{1}+w_{2} x_{2}+\cdots+w_{n} x_{n}}{w} \geqq \sqrt[w]{x_{1}^{w_{1}} x_{2}^{w_{2}} \cdots x_{n}^{w_{n}}}$$の利用を考えます。これにおいて $\small w_{1}=\dfrac{a}{a+b+c}$、$\small x_{1}=\dfrac{1}{\sqrt[3]{a^{2}}}$ のように置いていくと、$$(*) \geqq \left(\dfrac{1}{a^{a} b^{b} c^{c}}\right)^{\frac{2/3}{a+b+c}}$$が成立します。これより$$1 \geqq \dfrac{1}{a^{a} b^{b} c^{c}}$$ $$\therefore \quad a^{a} b^{b} c^{c} \geqq 1$$を得るので、めでたく証明できました。


次のような方法もあります。

任意の実数$t$に対して不等式 $e^{t} \geqq 1+t$ が成り立ち、$t=\log x^{-\frac{2}{3}}$ を代入すると$$\dfrac{2}{3} \log x \geqq 1-x^{-\frac{2}{3}}$$が成立します。ここで $x=a$ として両辺に$a$を掛けると$$\dfrac{2}{3} a \log a \geqq a-a^{\frac{1}{3}}$$を得ます。これと同じ式を$b$、$c$についても導いて辺々を加えると$$\small \dfrac{2}{3} (a\log a+b\log b+c\log c) \geqq a+b+c-(a^{\frac{1}{3}}+b^{\frac{1}{3}}+c^{\frac{1}{3}})$$となります。この右辺は与式より$0$に一致するので、$$\dfrac{2}{3} (a\log a+b\log b+c\log c) \geqq 0$$ $$\therefore \log a^a+\log b^b+\log c^c \geqq 0$$ $$\therefore \log a^a b^b c^c \geqq 0$$ $$\therefore a^a b^b c^c \geqq 1$$となることが導けます。


この他にも $f(x)=x-\sqrt[3]{x}$ の微分を利用した方法もあり得ます。

以上の様子からも何となく分かるかもしれませんが、本問の不等式は右辺が三乗根でなくても成立します。また、項数が3つでなくても同様の不等式が成立します。

 

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