べき乗の総和公式の次数(2021年山梨大学(医)後期数学第4問)

今年の山梨大後期で冪乗の総和公式の次数に関する証明問題が出題されました。類題の経験があればかなり有利な問題でした。


 

任意の自然数$m$に対して、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{m}$ は$n$についての$(m+1)$次式で表されることを証明せよ。ただし、$m=1$ のとき $\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k=\frac{n(n+1)}{2}$ となり、$n$についての$2$次式で表されることは証明なしで使ってよい。

(2021年山梨大学(医) 後期第4問)

 

 考え方

$n^m$の総和公式の多項式の次数は $m+1$ となります。よく知られている総和公式を考えれば、実際に次数が $m+1$ になっているのが分かります。$$\small \begin{eqnarray}
& &\sum_{k=1}^n k =\frac{1}{2}n(n+1) \\
& &\sum_{k=1}^n k^2 =\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \\
& &\sum_{k=1}^n k^3 =\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^2 \\
\end{eqnarray}$$これを一般化した証明が本問のテーマです。冪乗の総和公式の導き方が頭に入っていればヒントになったことでしょう。

$m$についての帰納法で示すことになりますが、ある数$j$以下のすべての$m$で成り立つという仮定を用います(いわゆる「強化帰納法」)。問題文中で$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k$の式を使ってよいと指示されているので、暗に帰納法で示すよう誘導してくれています。


解答例

 

任意の自然数$m$に対して、

(*)$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{m}$ が$n$についての$(m+1)$次式で表される

を、$m$についての数学的帰納法で示す。

 

(ア)$m=1$ のとき、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k=\frac{n(n+1)}{2}$ となり、$n$についての$2$次式で表される。よって(*)が成り立つ。

 

(イ)$m \leqq j$($j$は$2$以上の整数)を満たすすべての$m$について(*)が成り立つと仮定する。

 

ここで、$$\small \begin{align} (k&+1)^{j+2}-k^{j+2} \\ &={}_{j+2}\mathrm{C}_{1} k^{j+1}+{}_{j+2}\mathrm{C}_{2} k^{j}+\cdots+{}_{j+2}\mathrm{C}_{j+1} k+1 \end{align}$$より、$$\small \begin{align}(j+1)k^{j+1}=\,&(k+1)^{j+2}-k^{j+2} \\ &-\left\{{}_{j+2}\mathrm{C}_{2} k^{j}+\cdots+(j+2)k+1\right\} \end{align}$$と表せる。ここで $k=1$ から $k=n$ まで和をとると、$$\small \begin{align}(j+2)\displaystyle \sum^n_{k=1} k^{j+1}=\,&(n+1)^{j+2}-1^{j+2} \\ &-\left({}_{j+2}\mathrm{C}_{2} \sum^n_{k=1} k^{j}+\cdots+(j+2) \sum^n_{k=1} k+ \sum^n_{k=1} 1\right) \end{align}$$となる。

 

仮定より、上式右辺第3項の括弧内の多項式の次数は高々 $j+1$ であり、$\small (n+1)^{j+2}-1^{j+2}$ の次数は $j+2$ であるから、上式の右辺の次数は $j+2$ である。したがって$\displaystyle \sum^n_{k=1} k^{j+1}$の次数は $j+2$ となるから、$m=j+2$ のときも(*)が成り立つ。

 

以上(ア)、(イ)より、数学的帰納法によって、任意の自然数$m$に対して $\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^{m}$ は$n$についての$(m+1)$次式で表されることが示された。

 


 

本問と全く同じ問題が東京大学2006年の後期理類第3問(1)として出題されています。冪和公式の導出はどの教科書にも必ず記載されているので、今回の問題が上手く解けなかった人はよく確認しておきましょう。「総和公式の簡単な導出法」も参考にしてください。

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