ゼロを含まない数 “zeroless number” について

各位の数字にゼロが現れない数 “zeroless number” についての話題です。

 

 各位の数字にゼロが現れない数

各位の数字にゼロが現れない数を英語圏では “zeroless number”(ゼロレスナンバー)と呼びます。これに倣って本稿ではこのような数を「zeroless数」と呼ぶことにします。また、特に断りの無い限り十進法表記の場合について考えます。

zeroless数であるような累乗数は “zeroless powers”(zeroless累乗数)と呼ばれます。例として$2$の累乗を考えてみます。

$2^1 = 2$(← zeroless数)
$2^2 = 4$(← zeroless数)
$2^3 = 8$(← zeroless数)
$2^4 = 16$(← zeroless数)
$2^5 = 32$(← zeroless数)
$2^6 = 64$(← zeroless数)
$2^7 = 128$(← zeroless数)
$2^8 = 256$(← zeroless数)
$2^9 = 512$(← zeroless数)
$2^{10} = 1024$(← zeroless数ではない)
$2^{11} = 2048$(← zeroless数ではない)
$2^{12} = 4096$(← zeroless数ではない)
$2^{13} = 8192$(← zeroless数)
$\quad \vdots$

このようにしてzeroless数かどうかを調べていくと、あるところでパッタリとzeroless数が現れなくなることがあります。

 

 zeroless累乗数

zeroless累乗数についてもう少し詳しく見てみましょう。正の整数$k$に対して$\{2^{k}\}$に現れるzeroless数は以下の通りです。

$2^{1} = 2$
$2^{2} = 4$
$2^{3} = 8$
$2^{4} = 16$
$2^{5} = 32$
$2^{6} = 64$
$2^{7} = 128$
$2^{8} = 256$
$2^{9} = 512$
$2^{13} = 8192$
$2^{14} = 16384$
$2^{15} = 32768$
$2^{16} = 65536$
$2^{18} = 262144$
$2^{19} = 524288$
$2^{24} = 16777216$
$2^{25} = 33554432$
$2^{27} = 134217728$
$2^{28} = 268435456$
$2^{31} = 2147483648$
$2^{32} = 4294967296$
$2^{33} = 8589934592$
$2^{34} = 17179869184$
$2^{35} = 34359738368$
$2^{36} = 68719476736$
$2^{37} = 137438953472$
$2^{39} = 549755813888$
$2^{49} = 562949953421312$
$2^{51} = 2251799813685248$
$2^{67} = 147573952589676412928$
$2^{72} = 4722366482869645213696$
$2^{76} = 75557863725914323419136$
$2^{77} = 151115727451828646838272$
$2^{81} = 2417851639229258349412352$
$2^{86} = 77371252455336267181195264$

この指数の数列はオンライン整数列大辞典「OEIS」のA007377として登録されています。数列$\{2^{k}\}$では $k=86$ を境にパッタリとzeroless数が現れなくなります。2015年の時点で$10^{10}$以下の範囲にそのような整数は上記以外に存在しないことが確かめられていますが、$86$が最大かどうかは厳密に証明されておらず2022年現在でも未解決問題のままです。

$3$の累乗の場合は$$3^{68} = 278128389443693511257285776231761$$が最大のzeroless数となります。一般に、zeroless累乗数を与える指数の列は有限の値からなると予想されています。その他の底について調べた結果は「zeroless累乗数(ゼロを含まない累乗数)のリスト」のページにまとめています。

仮に、累乗数を十進法表記したときに$0$~$9$までの数字が各位にランダムに現れるとすれば、この現象に何となく合点が行きます。桁数が増えれば増えるほど$0$が現れる確率が$1$に近付くからです。しかし「$0$」が全く現れない確率はゼロではないので、これは厳密な証明にはなりません。zeroless累乗数を与える指数列が有限項であることを証明するにはもっと別の道具立てを考える必要がありそうです…。

 

 zerolessフィボナッチ数

フィボナッチ数についてもzeroless数を考えることができます。フィボナッチ数とは以下のように定義される数列でした。

$F_1=F_2=1$、$F_{n+2}=F_{n+1}+F_n \ (n=1,2,3,\cdots)$

以下にフィボナッチ数かつzeroless数であるものを列挙します。左にフィボナッチ数列の項番号、右にフィボナッチ数の値を示しています。

1 : 1
2 : 1
3 : 2
4 : 3
5 : 5
6 : 8
7 : 13
8 : 21
9 : 34
10 : 55
11 : 89
12 : 144
13 : 233
14 : 377
16 : 987
17 : 1597
18 : 2584
19 : 4181
20 : 6765
22 : 17711
23 : 28657
24 : 46368
26 : 121393
27 : 196418
28 : 317811
29 : 514229
31 : 1346269
33 : 3524578
35 : 9227465
37 : 24157817
39 : 63245986
42 : 267914296
43 : 433494437
53 : 53316291173
54 : 86267571272
55 : 139583862445
56 : 225851433717
57 : 365435296162
58 : 591286729879
78 : 8944394323791464
80 : 23416728348467685
85 : 259695496911122585
87 : 679891637638612258
97 : 83621143489848422977
125 : 59425114757512643212875125
184 : 127127879743834334146972278486287885163

フィボナッチ数列に現れる数字の中でzeroless数であるものは上記の46個のみと考えられています(参考:OEIS A076564A177194)。管理人が第100万項までの範囲で調べてもzeroless数は得られませんでした。最大のzerolessフィボナッチ数は$F_{184}$と予想されていますが、こちらも厳密な証明は与えられておらず未解決問題です。


 

zeroless数のような整数は理屈が分かりやすいので、数学を専門としない一般人にとっても興味の対象となることがありますが、本格的に研究しようとすると一気に高度な数学が必要になるものです。管理人は数論に明るくないのであまり深くは立ち入れませんが、こういった整数分野の話題が日曜数学の入り口になってくれることを期待しています。

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