冪乗の連比と単位分数(2022年神戸大学理系数学第5問)

今年の神戸大では冪乗の連比に関する整数問題が出題されました。


 

$a$、$b$を実数、$p$を素数とし、$1<a<b$ とする。以下の問に答えよ。

(1)$x$、$y$、$z$ を$0$でない実数とする。 $a^{x}=b^{y}=(a b)^{z}$ ならば $\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=\dfrac{1}{z}$ であることを示せ。

(2)$m$、$n$を $m>n$ をみたす自然数とし、$\dfrac{1}{m}+\dfrac{1}{n}=\dfrac{1}{p}$ とする。 $m$、$n$の値を$p$を用いて表せ。

(3)$m$、$n$ を自然数とし、$a^{m}=b^{n}=(a b)^{p}$ とする。 $b$の値を$a$、$p$を用いて表せ。

(2022年 神戸大学 理系前期第5問)

 

 考え方

誘導が非常に丁寧なので、流れに従って解いていきましょう。単位分数の和は式変形によって1次式の積に直せるので、$p$が素数であることを利用して約数の組を絞り込めます。(3)は $m>n$ の大小関係を言えれば(2)の結果がそのまま使えます。


解答例

 

(1)

$1<a<b$ であるから $1<a<b<ab$ が成り立ち、等式 $a^{x}=b^{y}=(a b)^{z}$ の各辺に$a$を底とする対数をとって$$x=y \log_a b=z \log_a ab$$を得る。これは$$\left\{\begin{array}{ll}
x=y \log _{a} b & \cdots ① \\
x=z(1+\log _{a} b) & \cdots ②
\end{array}\right.$$を意味しており、$y \ne 0$ と$①$より $\log _{a} b=\dfrac{x}{y}$ を得るので、これを$②$に代入すると$$x=z\left(1+\dfrac{x}{y}\right)$$となり、$x \ne 0$、$z \ne 0$ より、両辺を$xz$で割ることにより$$\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=\dfrac{1}{z}$$が導かれる。

 

 

(2)

$$\frac{1}{m}+\frac{1}{n}=\frac{1}{p} \quad \cdots ③$$の両辺に$mnp$を掛けて$$n p+m p=m n$$ $$\therefore (m-p)(n-p)=p^{2} \quad \cdots ④$$を得る。$③$より $\dfrac{1}{n}<\dfrac{1}{p}$ は明らかであるから $n>p$ である。これと $m>n$ であることから、$$m-p>n-p>0$$が成り立つ。いま、$p$は素数であるから$④$の左辺の積として可能な整数の組は$$\left\{\begin{aligned}
m-p&=p^{2} \\
n-p&=1
\end{aligned}\right.$$に限られる。よって$$\left\{\begin{aligned}
m&=\color{red}{p+p^{2}} \\
n&=\color{red}{p+1}\end{aligned}\right.$$と表される。

 

 

(3)

$m$、$n$、$p$は$0$でない実数であるから(1)の結論より$$\dfrac{1}{m}+\dfrac{1}{n}=\dfrac{1}{p}$$が成り立つことが言える。いま、$1<a<b$ であることと $a^{m}=b^{n}$ より、$a^{m}=b^{n}>a^n$、すなわち $m>n$ が成り立つ。よって(2)の結果を用いて$$\left\{\begin{aligned}
m&=p+p^{2} \\
n&=p+1
\end{aligned}\right.$$と表せる。これより、$$a^{p+p^{2}}=b^{p+1}=(a b)^{p}$$となるが、$b \ne 0$ に注意すると$$b^{p+1}=(a b)^{p}$$ $$\therefore b^{p+1}=a^{p}b^{p}$$ $$\therefore b=\color{red}{a^{p}}$$を得る。また、これは実際に与等式を満たす。

 


 

(1)では$a$を底とする対数をとっていますが、底の値は何でも構いません。$a$の他に、底を$b$や$ab$とすると式がスッキリします。文系では $p=5$ とした場合が出題されていましたが、素数の値が具体的になっているだけで実質的には全く同じ問題です。連比に関する整数問題としては2016年の日本女子大学理学部第4問などがあります。

それから余談ですが、実は今年の神戸大学理系数学第1問について、同じく神戸大の1991年後期入試第1問に全く同じ問題が出題されています。

 

数列 $\left\{a_{n}\right\}$ を $a_{1}=1$、$a_{2}=2$、$a_{n+2}=\sqrt{a_{n+1} \cdot a_{n}}$ $(n=1,2,3, \cdots)$ によって定める。以下の問に答えよ。

 

(1)すべての自然数$n$について $a_{n+1}=\dfrac{2}{\sqrt{a_{n}}}$ が成り立つことを示せ。

 

(2)数列 $\left\{b_{n}\right\}$ を $b_{n}=\log a_{n}$ $(n=1,2,3, \cdots)$ によって定める。$b_{n}$の値を$n$を用いて表せ。

 

(3)極限値 $\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} a_{n}$ を求めよ。

 

(2022年 神戸大学 理系前期第1問)

 

$a_{1}=1$、$a_{2}=2$、$a_{n+2}=\sqrt{a_{n} a_{n+1}}$ $(n=1,2,3, \cdots)$ とする。このとき、次の各問に答えよ。

 

(1)$a_{n}$ $(n=1,2,3, \cdots \cdots)$ を $n$ を用いて表せ。

 

(2)$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} a_{n}$ を求めよ。

 

(1991年 神戸大学 理系後期第1問)

31年の時を越えて全く同じ問題が出題されていますね…。本問は漸化式の両辺に対数を取ることにより一般的な2項間漸化式に落とし込めるので簡単に解決します(今年の問題に至っては必要以上にお膳立てされているようにも見えます)。

この年代の後期試験までカバーしていた受験生は極僅かだと思いますが、今回のように数十年前の過去問がリサイクルされるケースもあるので(ある程度の限度はあるでしょうが)古いものを漁っておいても損ではありません。

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