創作整数問題#91解法&創作整数問題#92

共通テストが一段落し、二次試験に向けてスパートを掛けていく時期になりましたね。全力で春を迎えに行きましょう。

ニュース番組では最強寒波が来ていると盛んに報道されていますが、皆さんの地域ではどうでしょうか?雪搔きに苦労している人は例年以上に多そうです…😅


創作整数問題#92


《問題#92》

$F_1=F_2=1$、漸化式$$F_{n+2}=\dfrac{{F_{n+1}}^2+(-1)^{n+1}}{F_{n}} \quad (n=1,2,…)$$で定まる数列$\{F_n\}$($n=1,2,…$)について、以下の問いに答えよ。

(1)任意の正の整数$n$について、等式 $F_{n+2}=F_{n+1}+F_{n}$ が成り立つことを示せ。

(2)任意の正の整数$m$、$n$(ただし $n \geq 2$ とする)について、次の等式$(\ast)$が成立することを$n$に関する数学的帰納法を用いて示せ。$$(\ast): F_{m+n}=F_{m}F_{n-1} +F_{m+1}F_{n}$$

(3)任意の正の整数$n$について、$n$がある正の整数$m$で割り切れるならば$F_{n}$は$F_{m}$で割り切れることを示せ。

(4)$(F_{2023})^2$を$89$で割ったときの余りを求めよ。

(創作問題)


前回に引き続き同じ数列から。こちらも有名な性質に関する問題です。

 

» (4)のヒント

$89$という数字が作為的な印象を受けませんか? 実はこの数字は数列$\{F_n\}$のある項として登場します。さて、それは第何項目でしょうか?

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» (4)の答えはこちら

余りは $\color{red}{1}$ です。因みに、問題文中の漸化式は「カッシーニ・シムソンの定理」として知られているフィボナッチ数列に関する有名な式です。

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創作整数問題#91(解き方)


数列$\{F_n\}$と数列$\{L_n\}$をそれぞれ次のように定義する。

$F_1=1$、$F_2=1$、$F_{n+2}=F_{n+1}+F_n$($n=1,2,\cdots$)
$L_1=1$、$L_2=3$、$L_{n+2}=L_{n+1}+L_n$($n=1,2,\cdots$)

このとき、座標平面上に次の条件(*)を満たすような二次曲線$C$が存在することを示せ。

(*):点$(F_k, L_k)$が$C$上に存在するような自然数$k$が無数に存在する。


全く誘導設問を付けなかったので着想が難しかったと思います。入試問題にする場合はもう少し誘導が必要かもしれませんね。手の付けにくい問題ですが、例えば、取り敢えず一般項を求めてから作戦を考えてみるという方針は有効なように思われます。

3項間漸化式の一般項を求めるには、次のような等比数列の形に直せばよいのでした。今回の数列には定数項が無いので簡単ですね。$$\begin{cases} F_{n+2}-\alpha F_{n+1}=\beta(F_{n+1}-\alpha F_n) \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1}=\alpha(F_{n+1}-\beta F_n) \end{cases}$$よって元の漸化式が成り立つためには$$\begin{cases} \alpha + \beta =1 \\ \alpha \beta =-1 \end{cases}$$を満たすような実数$\alpha$、$\beta$を見つければOKです。これらを求めるには$\alpha$、$\beta$を実数解とする2次方程式(「特性方程式」と呼ばれるものに相当します)を解けばよく、$$x^2-x-1=0$$を解くことにより係数 $\alpha$、$\beta$ が $\dfrac{1\pm\sqrt{5}}{2}$ となることが分かるので、あとは項番号を下げて一般項を求めるだけです。

解答例では一般項から2次曲線の方程式を求めてみます。

解答例

 

$\alpha =\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}$、$\beta =\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}$と置くと、数列$\{F_{n}\}$の漸化式は$$\begin{cases} F_{n+2}-\alpha F_{n+1}=\beta(F_{n+1}-\alpha F_n) \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1}=\alpha(F_{n+1}-\beta F_n) \end{cases}$$と書き直すことができる。この関係式を繰り返し用いることで、$$\begin{cases} F_{n+2}-\alpha F_{n+1}=\beta^{n}(F_{2}-\alpha F_1) \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1}=\alpha^{n}(F_{2}-\beta F_1) \end{cases}$$ゆえに$$\begin{cases} F_{n+2}-\alpha F_{n+1}=\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\beta^{n} \ \cdots ① \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1}=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\alpha^{n} \ \cdots ② \end{cases}$$を得る。$②-①$ より、$$(\alpha-\beta)F_{n+1}=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\alpha^{n}-\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\beta^{n}$$ $$\therefore F_{n+1}=\dfrac{1}{\sqrt{5}}\alpha^{n+1}-\dfrac{1}{\sqrt{5}}\beta^{n+1}$$となるから、$$\color{red}{F_{n}=\dfrac{1}{\sqrt{5}}\left(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^{n}-\dfrac{1}{\sqrt{5}}\left(\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^{n}}$$を得る。

 

また、数列$\{L_{n}\}$の漸化式は数列$\{F_{n}\}$と共通なので、$$\begin{cases} L_{n+2}-\alpha L_{n+1}=\beta^{n}(L_{2}-\alpha L_1) \\ L_{n+2}-\beta L_{n+1}=\alpha^{n}(L_{2}-\beta L_1) \end{cases}$$より$$\begin{cases} L_{n+2}-\alpha L_{n+1}=\dfrac{5-\sqrt{5}}{2}\beta^{n} \ \cdots ③ \\ L_{n+2}-\beta L_{n+1}=\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}\alpha^{n} \ \cdots ④ \end{cases}$$を得る。$④-③$ より、$$(\alpha-\beta)L_{n+1}=\dfrac{5+\sqrt{5}}{2}\alpha^{n}-\dfrac{5-\sqrt{5}}{2}\beta^{n}$$ $$\therefore L_{n+1}=\alpha^{n+1}+\beta^{n+1}$$となる(※符号に注意)から、$$\color{red}{L_{n}=\left(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^{n}+\left(\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^{n}}$$を得る。

 

ここで、$$5F_{n}^2=\alpha^{2n}-2(\alpha\beta)^{n}+\beta^{2n} \ \cdots ⑤$$および$$L_{n}^2=\alpha^{2n}+2(\alpha\beta)^{n}+\beta^{2n} \ \cdots ⑥$$が成り立つことに着目すると、$⑤-⑥$ より$$5F_{n}^2-L_{n}^2=-4(\alpha\beta)^{n}$$ $$\therefore 5F_{n}^2-L_{n}^2=-4(-1)^{n}$$が成立する。ここで、$k=2m+1$($m$は正の整数)とすると、関係式$$5F_{k}^2-L_{k}^2=4$$が常に成立する。これより、無数の正の奇数$k$に対して$xy$座標平面上の点$(F_k, L_k)$はつねに双曲線 $C:5x^2-y^2=4$ 上に存在することが言える。

 

よって双曲線$C$は条件(*)を満たす2次曲線であるから、以上より示された。


 

他にも上手な別解がありそうな気がしますが、一般項を経由するのが最も素直な解法だと思います。双曲線の方程式を作るためには一般項の式を平方して不要な項を消去してやれば良さそうだ、という思考のもとで式変形を進めています。その結果、$\alpha \beta =-1$ の関係を上手く利用して$$5F_{n}^2-L_{n}^2=-4(-1)^{n}$$という関係式を見つけられました。

実はフィボナッチ数列とリュカ数列に関して、$$5 F_k^2+5(-1)^n F_n F_k L_{k+n}+(-1)^{n+1} L_{k+n}^2=L_n^2$$という関係式が成り立つので、$x=F_k$ および $y=L_{k+n}$ と置けば$$5 x^2+5(-1)^n F_n x y+(-1)^{n+1} y^2=L_n^2$$と書き直すことができます。この式において $n=0$ としたものが解答例の中で与えた双曲線の方程式です(ここで、$F_0=0$、$L_0=2$ です)。これより、$n$の値を色々と変えてやれば、題意を満たす2次曲線を無数に与えられることが分かります。

それから余談ですが、2018年の第1回東大プレ(代ゼミ)で、フィボナッチ数$F_n$に対して $5(F_{2k})^2-4$ が平方数になるという事実の証明問題が出題されています。この平方数が$L_{2k}^2$と表せることは、上記の関係式から直ちに理解できますね。

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