名古屋大学2018年数学理系第3問

昨年の名古屋大学では整数分野からの出題はありませんでしたが、今年は本格的な整数問題が出題されました。問題文中に直接明示されてはいませんが、二項定理に関する知識が要求される問題です。名古屋大の数学で二項係数に関する整数問題が出題されるのは5年振りのことです。


《問題》

$p$ を素数、$a$、$b$ を整数とする。このとき、次の問に答えよ。

(1)$(a+b)^p-a^p-b^p$ は $p$ で割り切れることを示せ。

(2)$(a+2)^p-a^p$ は偶数であることを示せ。

(3)$(a+2)^p-a^p$ を $2p$ で割ったときの余りを求めよ。

(名古屋大学2018年理系 第3問)


《考え方》

本問はフェルマーの小定理に関する問題ですが、これを既知とする訳にはいかないので、ここでは素直に展開してみます。

$$\begin{align}& \ \ \ \ \ (a + b)^p \\ &=a^p + {}_p\mathrm{C}_1 a^{p-1}b+ \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} ab^{p-1} + b^p \end{align}$$より、$$\begin{align}& \ \ \ \ \ (a+b)^p-a^p-b^p \\ &={}_p\mathrm{C}_1 a^{p-1}b+ \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} ab^{p-1}\end{align}$$となります。ここで$k$を $1 \leqq k \leqq p-1$ を満たす整数とすると、二項係数 ${}_p\mathrm{C}_k$ は$${}_p\mathrm{C}_k=\dfrac{p!}{k!(p-k)!}=p \cdot \dfrac{(p-1)!}{k!(p-k)!}$$と表すことができます。$p$は素数なので、$k!(p-k)!$と$p$は互いに素です。したがって、このことと二項係数 ${}_p\mathrm{C}_k$ が整数であることから $\dfrac{(p-1)!}{k!(p-k)!}$ は整数であり、二項係数 ${}_p\mathrm{C}_k$ はすべての$k$について$p$の倍数となります。故に $(a+b)^p-a^p-b^p$ は $p$ で割り切れることが示されます。

次に(2)ですが、これは(1)において $b=2$ としたケースになっています。$$\begin{align}& \ \ \ \ \ (a + 2)^p -a^p \\ &={}_p\mathrm{C}_1 a^{p-1} \cdot 2+ \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} a \cdot 2^{p-1} + 2^p \\ &=2({}_p\mathrm{C}_1 a^{p-1} + \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} a \cdot 2^{p-2} + 2^{p-1}) \tag*{・・・(★)}\end{align}$$より、これは明らかに偶数です。

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(3)は$(★)$を$2p$で割ったときの余りを考えます。$(★)$は偶数であり、$2$で割ると、$${}_p\mathrm{C}_1 a^{p-1} + \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} a \cdot 2^{p-2} + 2^{p-1}$$となります。次いで、これを$p$で割ることを考えます。先程示した通り、二項係数 ${}_p\mathrm{C}_k$ は $1 \leqq k \leqq p-1$ を満たすすべての$k$について$p$の倍数となるので、結局は$2^{p-1}$を$p$で割ったときの余りが問題となります。そこで$2^{p-1}$の二項展開を考えると、$$\begin{align}& \ \ \ \ \ 2^{p-1} \\ &=1+{}_p\mathrm{C}_1 + \cdots + {}_p\mathrm{C}_{p-1} + 1 \tag*{・・・(☆)}\end{align}$$となるので、これより$2^{p-1}$を$p$で割ったときの余りは$2$を$p$で割ったときの余りであることが分かります。ここで、$p$は素数ですから、$p=2$ の場合と奇素数の場合で余りが異なることに注意する必要があります。

以上により、求める余りは$$\color{red}{\begin{cases} 0 \ \ \ (p=2) \\ \\ 2 \ \ \ (p \geqq 3) \end{cases}}$$となります。


(コメント)

素数乗の二項展開では、二項係数${}_p\mathrm{C}_k$が$p$で割り切れることが解答上のポイントになることがしばしばあります。本問の類題は多数の大学で出題されているので、類題を解いた経験があれば、解き方はほとんどワンパターンなのでかなり有利になります。受験期までにはこの手の問題をサラッと解けるように準備しておくのが望ましいですね。

なお、管理人の個人的な感想ですが、今年の入試数学の中では名古屋大のセットが1番か2番くらいに良質な出題だったと感じます。


(2018/03/25追記)

2009年度の大阪医科大の前期第4問にほとんど同じ問題が出題されています。

 

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