大阪大学2017年 理系前期第3問

今年の大阪大学の整数問題はあまり見慣れないタイプの出題でした。昨年に続いてやや解きにくい問題です。


《問題》

$a,b$を自然数とし、不等式

$\left| \dfrac{a}{b}-\sqrt{7} \right| <\dfrac{2}{b^4}$  (A)

を考える.次の問いに答えよ.ただし、$2.645<\sqrt{7}<2.646$であること、$\sqrt{7}$が無理数であることを用いてよい.

(1)不等式(A)を満たし$b \geqq 2$である自然数$a,b$に対して

$$\left| \dfrac{a}{b}+\sqrt{7} \right| <6$$

であることを示せ。

(2)不等式(A)を満たす自然数$a,b$の組のうち、$b \geqq 2$であるものをすべて求めよ。

(大阪大学2017 理系前期第3問)


《考え方》

無理数$\sqrt{7}$の近似に関する問題のようですが、一風変わっています。(1)をちゃんと利用できなければ完答できません。

(1)自体は容易です。$\left| \dfrac{a}{b}+\sqrt{7} \right| <6$より、$$-6< \dfrac{a}{b}+\sqrt{7} <6$$となり、左側の不等式は常に成立するので右側の不等式を証明すればよいことになります。したがって不等式(A)を用いて、$6-\sqrt{7}$より小さく$\dfrac{a}{b}$を上から抑えるような定数を与えればOKです。

不等式(A)より、絶対値を外して$$\dfrac{a}{b}-\sqrt{7} <\dfrac{2}{b^4}$$を得ます。$b \geqq 2$ では $\dfrac{2}{b^4}<\dfrac{2}{2^4}=\dfrac{1}{8}$ なので、

$$\dfrac{a}{b}-\sqrt{7} <\dfrac{1}{8}$$

$$\therefore \dfrac{a}{b}<\sqrt{7} +\dfrac{1}{8}<2.646+0.125=2.771$$

が言えます。よって$$\begin{align} 6-\sqrt{7} &>6-2.246 =3.754 \\ &>2.771>\sqrt{7} +\dfrac{1}{8} \end{align}$$となるので

$\left| \dfrac{a}{b}+\sqrt{7} \right| <6$  (B)

が成立することが示されました。ここまでは問題無いと思います。

 

続いて(2)ですが、アプローチしにくい問題です。不等式の証明で使うアイデアなのですが、例えば4つの正の実数$s,t,x,y$について$$s<t \ , \ x<y$$という不等式がともに成立するとき、辺々の積からなる不等式$$sx<ty$$も成立します(負の実数では成り立つとは限りません)。今回はこれを利用します。

類題の経験などが無いとなかなか発想しにくい方法です。私の推測ですが、一応(?)阪大なりのヒントは出しているつもりのようです。どういうことかというと、(1)の不等式はそもそも$\left| \dfrac{a}{b}+\sqrt{7} \right| <6$と書く必要は無く、$\dfrac{a}{b}+\sqrt{7}<6$と書けば十分なのです。それなのにわざわざ絶対値を付けていることの意味を探れば「ひょっとして掛けるのでは?」と気付くことができる・・・かもしれませんが、制限時間の中であれこれ考えるのは容易ではありません。

あるいは単純に「$-\sqrt{7}$と$\sqrt{7}$があるから取り敢えず掛けてみるか」と発想できなくもないですが、いずれにせよ発想力を要求する問題であることに変わりありません。今年の予備校のテキストや演習で取り上げられること請け合いです。

さて、不等式(A)、(B)の辺々を掛けると$$\left| \dfrac{a^2}{b^2}-7 \right| <\dfrac{12}{b^4}$$となりますから、$b^4$を両辺に掛けて整理すると$$\left| a^2 b^2-7 b^4 \right| <12$$ $$\therefore |a^2 -7 b^2| b^2 <12$$となります(「?」が頭に浮かんだ人は絶対値の計算要復習です)。ここで$|a^2 -7 b^2|$も$b^2$も整数ですから、この積が$12$より小さいような組を求めればよいことになります。

ここで注意したいのが$a^2 -7 b^2=0$となりうるかどうかで、$a^2 -7 b^2=0$であれば$b^2$がどんな数でも積が$0$になるので組$(a,b)$は無数に存在してしまいます。しかし$a^2 -7 b^2=0$とすると$\dfrac{a}{b}=\sqrt{7}$となり$\sqrt{7}$が無理数であることに反します。よって$a^2 -7 b^2 \ne 0$ですので、$|a^2 -7 b^2| \geqq 1$と言えます。

したがって$$12> |a^2 -7 b^2| b^2 \geqq 1 \cdot b^2$$となるので $b^2=4$ または $b^2=9$ に限られます($b \geqq 2$なので$b=1$は除外)。

$b^2=4$ $(b=2)$ のとき $$-12<4(a^2-28)<12$$ $$\therefore 25<a^2<31$$となりますが、これを満たすような自然数$a$は存在しません。

$b^2=9$ $(b=3)$ のとき $$-12<9(a^2-63)<12$$ $$\therefore 63-\dfrac{4}{3}<a^2<63+\dfrac{4}{3}$$となり、$a=8$を得ます。

また$(a,b)=(8,3)$のとき$$\dfrac{a}{b}-\sqrt{7} <\dfrac{8}{3}-2.645=0.021…$$であり、$\dfrac{2}{b^4}=\dfrac{2}{81}=0.024$ですから確かに不等式(A)は成立します。

よって求める組$(a,b)$は$$(a,b)=(8,3)$$となります。


(コメント)

気付いてしまえば不等式によるただの絞り込みですが、その不等式を導くのが難儀な問題でした。良問の部類に入るのではないでしょうか。

(出題に関してちょっとした数学的背景がありそうです。連分数とか無理測度とかその周辺かな・・・?)

 

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