対称的な定積分の最小値(2021年神戸大学後期理系数学第5問)

多くの場合、対称性と最小・最大には関係があります。左右対称の位置で関数が最小になったり、ちょうど中央で図形が最大化したり…。本問もそんな感じの問題です。


 

関数$$\small f(x)=\int_{-1}^{x} \frac{d t}{t^{2}-t+1}+\int_{x}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}$$の最小値を求めよ。

(2021年神戸大学後期理系 第5問)

 

 考え方

与式の不定積分は高校数学の範囲では求められないので、解法は実質的に限られています。最初に$x$で微分して極値を与える$x$を求めてから、定積分の計算を実行するのが一般的な解法でしょう。積分区間が文字で定義された定積分の微分法は数Ⅲの基本なので確実に対応したいところ。

以下の解答例では $t=-u$ という置き換えによって積分計算の手間を部分的にカットしています。このような小細工をしなくても解答は可能ですが、少しでも所要時間を減らすための工夫だと思って参考にしてください。


解答例

 

$$\small f(x) =\int_{-1}^{x} \dfrac{d t}{t^{2}-t+1}+\int_{x}^{1} \dfrac{d t}{t^{2}+t+1}$$と置くと、$$\small \begin{aligned}
f^{\prime}(x) &=\dfrac{1}{x^{2}-x+1}-\dfrac{1}{x^{2}+x+1} \\
&=\dfrac{\left(x^{2}+x+1\right)-\left(x^{2}-x+1\right)}{\left(x^{2}-x+1\right)\left(x^{2}+x+1\right)} \\
&=\dfrac{2 x}{\left\{\left(x-\dfrac{1}{2}\right)^{2}+\dfrac{3}{4}\right\}\left\{\left(x+\dfrac{1}{2}\right)^{2}+\dfrac{3}{4}\right\}}
\end{aligned}$$となる。$f^{\prime}(x)$の分母は常に正だから関数$f(x)$は $x=0$ で極小となり、増減表は以下のようになる。$$\begin{array}{|c|c|c|c|}
\hline x & \cdots & 0 & \cdots \\
\hline f^{\prime}(x) & – & 0 & + \\
\hline f(x) & \searrow & \text { 極小 } & \nearrow \\
\hline
\end{array}$$よって最小値は$$\small f(0)=\int_{-1}^{0} \frac{d t}{t^{2}-t+1}+\int_{0}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}$$と分かる。ここで $\small \displaystyle \int_{-1}^{0} \frac{d t}{t^{2}-t+1}$ について、$t=-u$ と置くと $dt=-du$ であり、$$\begin{array}{c|c}
t & -1 \rightarrow 0 \\
\hline u & 1 \rightarrow 0
\end{array}$$となるから、$$\small \begin{aligned} \displaystyle \int_{-1}^{0} \frac{d t}{t^{2}-t+1} &= \displaystyle \int_{1}^{0} \frac{-d u}{(-u)^{2}-(-u)+1} \\ &=\int_{1}^{0} \frac{d u}{u^{2}+u+1} \end{aligned}$$と置き換えられる。したがって求める最小値は$$\small f(0)=2\int_{0}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}$$となる。ここで$$\small \int_{0}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}=\displaystyle \int_{0}^{1} \frac{d t}{\left(t+\frac{1}{2}\right)^{2}+\frac{3}{4}}$$と変形して $$\small t+\frac{1}{2}=\frac{\sqrt{3}}{2} \tan \theta \quad\left(-\frac{\pi}{2}<\theta<\frac{\pi}{2}\right)$$と置くと、$\small
d t=\dfrac{\sqrt{3}}{2} \cdot \dfrac{1}{\cos ^{2} \theta} d \theta$ であり、$$\begin{array}{c|c}
t & 0 \rightarrow 1 \\
\hline \theta & \frac{\pi}{6} \rightarrow \frac{\pi}{3}
\end{array}$$となるから、$$\small \left(t+\frac{1}{2}\right)^{2}+\frac{3}{4}=\frac{3}{4} \cdot \frac{1}{\cos ^{2} \theta}$$と変形できることに注意すると、$$\small \begin{aligned}
f(0) &=2 \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}} \frac{4}{3} \cos ^{2} \theta \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{1}{\cos ^{2} \theta} d \theta \\
&=\frac{4 \sqrt{3}}{3}[\theta]_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}} \\
&=\frac{4 \sqrt{3}}{3}\left(\frac{\pi}{3}-\frac{\pi}{6}\right) \\
&=\frac{2 \sqrt{3}}{9} \pi
\end{aligned}$$と計算できる。

 

よって求める最小値は$$\small \color{red}{\dfrac{2 \sqrt{3}}{9} \pi}$$となる。

 


 

愚直に積分計算すれば良いだけの問題なので落とせません。ちょっとした置換積分のテクニックが要求されますが、後期試験としては標準レベルです。シンプルながらも良い問題だと思います。

与式の積分の和を$I$と置くと、ダミー変数(この場合は $t$)の変換により$$\small \displaystyle I= \int_{-x}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}+\int_{x}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}$$と書き直すことができます。高校数学の範囲では $\small \dfrac{1}{t^{2}+t+1}$ の不定積分を求められないので、一度微分して極値を与える$x$を先に求める必要があります。

なお、$I$の積分を無理やり実行すると$$\small \dfrac{4\sqrt{3}}{9}\pi+\dfrac{2\sqrt{3}}{3}\left\{\arctan \left(\frac{2x-1}{\sqrt{3}}\right)-\arctan \left(\frac{2x+1}{\sqrt{3}}\right)\right\}$$となります。ここで $\arctan x$ は $\tan x$ の逆関数を表しています。

本問は対称なグラフの対称的な積分区間での積分を最小値を求めるもので、やはり $-1 \leqq x \leqq 1$ の真ん中で区切るとき($x=0$ のとき)に積分の和が最小となります。

各関数のグラフを描くと以下のようになります。グラフを見れば視覚的に分かりやすいと思います。

赤色が $\small y=\dfrac{1}{x^{2}-x+1}$、青色が $\small y=\dfrac{1}{x^{2}+x+1}$ のグラフです。緑色の破線の曲線は $\small \displaystyle y= \int_{-1}^{x} \frac{d t}{t^{2}-t+1}$ を、紫色の破線の曲線は $\small \displaystyle y= \int_{x}^{1} \frac{d t}{t^{2}+t+1}$ を、それぞれ$x$の関数として $-1 \leqq x \leqq 1$ の範囲でプロットしたグラフです。与式である積分の和は黒色の太線で、確かに $x=0$ で最小になっていることが見て取れます。オレンジ色の曲線は $y=I$ のグラフです。

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