平方根の逆数の総和の整数部分(2014年大阪大学理系数学第3問)

手の付けにくい1行問題です。


《問題》

$\displaystyle \sum_{n=1}^{40000} \dfrac{1}{\sqrt{n}}$ の整数部分を求めよ.

(2014年大阪大学 理系前期第3問)


《考え方》

ヒントが一切無いので何とかして答えに辿り着く方法を見つけなければなりません。そのままでは整数部分を求めるのは無理なので、不等式で上手く評価できないか考えます。

$$\small \underbrace{\dfrac{1}{\sqrt{1}}+\dfrac{1}{\sqrt{2}}+\dfrac{1}{\sqrt{3}}}_{>\frac{1}{1}\cdot 3}+ \underbrace{\dfrac{1}{\sqrt{4}}+\cdots+\dfrac{1}{\sqrt{8}}}_{>\frac{1}{2}\cdot 5}+\dfrac{1}{\sqrt{9}}+\cdots$$と評価していけば$$\small \displaystyle \sum_{n=1}^{40000} \dfrac{1}{\sqrt{n}}<\displaystyle \sum_{n=1}^{199} \dfrac{1}{n}\cdot(2n+1)+\dfrac{1}{200}$$と上から押さえられますが、これはあまり役に立たなさそうです。

もっと上手く評価できないか考えてみると、$\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ という関数そのものに行き当たります。与式がなぜ扱いにくいかと言うと、整数というデジタル(離散的)なものを相手にしているからで、$\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ という連続的な関数を使えば多少扱いやすくなるのではないか、という目算があります。もっと言えば、シグマの和を積分という言わば「連続的な和」で評価できそうだ、というところが $\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ を持ち出すモチベーションになっています。

実際、$k \leqq x \leqq k+1$ を満たす$x$に対して$$\small \dfrac{1}{\sqrt{k+1}} \leqq \dfrac{1}{\sqrt{x}} \leqq \dfrac{1}{\sqrt{k}}$$が成り立つので、この不等式から上手く整数部分を割り出すことができます。


解答例①

 

$k \leqq x \leqq k+1$ を満たす$x$に対して

 

$\small \dfrac{1}{\sqrt{k+1}} \leqq \dfrac{1}{\sqrt{x}}$
(等号成立は $x=k+1$ のとき)

 

$\small \dfrac{1}{\sqrt{x}} \leqq \dfrac{1}{\sqrt{k}}$
(等号成立は $x=k$ のとき)

 

が成り立つ。よって$$\small \displaystyle \int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{k+1}}<\int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{x}}$$および$$\small \displaystyle \int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{x}}<\int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{k}}$$が成り立つから、これらを合わせて$$\small \displaystyle \int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{k+1}}<\int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{x}}<\int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{k}}$$ $$\small \displaystyle \therefore \frac{1}{\sqrt{k+1}}<\int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{x}}<\frac{1}{\sqrt{k}}$$を得る。この各辺に対して $k=1$ から $k=N-1$ まで和を取ると
$$\small \displaystyle \sum_{k=1}^{N-1} \frac{1}{\sqrt{k+1}}<\sum_{k=1}^{N-1} \int_{k}^{k+1} \frac{d x}{\sqrt{x}}<\sum_{k=1}^{N-1} \frac{1}{\sqrt{k}}$$となる。これは$$\small \displaystyle \sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}-1<\int_{1}^{N} \frac{d x}{\sqrt{x}}<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}-\frac{1}{\sqrt{N}}$$と変形できるから、$\small \displaystyle \sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}$ について
$$\small \displaystyle \int_{1}^{N} \frac{d x}{\sqrt{x}}+\frac{1}{\sqrt{N}}<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}<\int_{1}^{N} \frac{d x}{\sqrt{x}}+1 \quad \cdots (*)$$という不等式が成り立つ。

 

いま、$$\small \displaystyle \int_{1}^{N} \frac{d x}{\sqrt{x}}=[2 \sqrt{x}]_{1}^{N}=2 \sqrt{N}-2$$であるから不等式$(*)$は$$\small \displaystyle 2 \sqrt{N}-2+\frac{1}{\sqrt{N}}<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}<2 \sqrt{N}-1$$と簡単になる。ここで $N=40000$ とすると $\sqrt{N}=200$ となるから、$$\small \displaystyle 398+\frac{1}{200}<\sum_{k=1}^{40000} \frac{1}{\sqrt{k}}<399$$となる。

 

よって、$\small \displaystyle \sum_{n=1}^{40000} \dfrac{1}{\sqrt{n}}$ の整数部分は$$\color{red}{398} \quad \cdots (\text{答}) $$である。

 

上記の解答で「$k=1$ から $k=N$ まで」の和を取らないのは積分区間を上手く調節しているためです。$k=1$ から $k=N$ まで和を取ってから後で余分な部分を引く、というのでも問題ありません。

これとは別に、「望遠鏡和」の形になるように上手く式変形して解答することもできます。


解答例②

 

整数 $k\,(\geqq 2)$ について、不等式$$\small \sqrt{k}+\sqrt{k-1}<2 \sqrt{k}<\sqrt{k+1}+\sqrt{k}$$が成立する。これより、$$\small \displaystyle \frac{2}{\sqrt{k+1}+\sqrt{k}}<\frac{1}{\sqrt{k}}<\frac{2}{\sqrt{k}+\sqrt{k-1}}$$ $$\small \displaystyle \therefore 2(\sqrt{k+1}-\sqrt{k})<\frac{1}{\sqrt{k}}<2(\sqrt{k}-\sqrt{k-1})$$となるから、$k=2$ から $k=N$ まで和をとると$$\small \displaystyle \sum_{k=2}^{N} 2(\sqrt{k+1}-\sqrt{k})<\sum_{k=2}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}<\sum_{k=2}^{N} 2(\sqrt{k}-\sqrt{k-1})$$ $$\small \displaystyle \therefore 2(\sqrt{N+1}-\sqrt{2})<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}-1<2(\sqrt{N}-1)$$ $$\small \displaystyle \therefore 2 \sqrt{N+1}-\sqrt{8}+1<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}<2 \sqrt{N}-1$$となる。

 

ここで $N=40000$ とすると $$\small \displaystyle 2 \sqrt{40001}-\sqrt{8}+1<\sum_{k=1}^{40000} \frac{1}{\sqrt{k}}<399$$となるが、$$\small \begin{align} 2 \sqrt{40001}-\sqrt{8}+1 &> 2 \sqrt{40000}-\sqrt{9}+1 \\ &=398 \end{align}$$より、$$\small \displaystyle 398<\sum_{k=1}^{N} \frac{1}{\sqrt{k}}<399$$となる。

 

よって、$\small \displaystyle \sum_{n=1}^{40000} \dfrac{1}{\sqrt{n}}$ の整数部分は$$\color{red}{398} \quad \cdots (\text{答}) $$である。

 


(コメント)

解答例②で「$k=2$ から」の和を取っているのは、単純に $k=1$ から和を取ってしまうと誤差が大きくなり、正しく評価できないからです。不等式による誤差が大きくなるのは $k=1$ や $k=2$ などの$k$が小さい項なので、上手く評価できない場合はこれらの項を別にして議論することを考える必要があります。(本問では分母が平方根になっているので $k=2$ を考えることは普通しませんが)

 

解答例②のように微分積分を全く使わずに解けるので、本問は数Ⅲを履修していなくても解ける問題だと言えます。しかし理系の学生なら普通は解答例①のように面積に対応させて積分で解決する方針を立てるのが自然だと思います。本問のように問われ方が斬新だと思わず狼狽えてしまいますが、手持ちの道具で上手く処理できないかと試行錯誤してみましょう。この問題が解けなかった人は $\small \displaystyle \sum_{n=1}^{40000} \dfrac{1}{\sqrt{n}}$ という得体の知れない数を一度に相手にするのではなく、まずは $\small \dfrac{1}{\sqrt{n}}$ について上手く評価できないか、と問題を小さく切り分けながら考えるように心がけると良いでしょう。デカルトも方法序説の中で「困難は分割せよ」と言っています。答案に思考過程を書いておけば部分点にもなる(雀の涙ほどでしょうが無いよりはマシです)ので、問題を少しずつ切り崩していくという姿勢はやはり大切です。

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