放物線にまつわる面積公式②(例題編)


今回は面積公式の演習編です。前回解説した公式を実際に使ってみましょう。


早速例題です。

《例題》

座標平面上に放物線$\mathrm{C}$:$y=x^2-6x+12$ がある。点$\mathrm{A}(t,t^2-6t+12)$における放物線$\mathrm{C}$の接線を$l$とすると、$$l:y=\fbox{ ア }(t-\fbox{ イ })x-\fbox{ ウ }t^2+\fbox{ エオ }$$と表せる。接線$l$が点$(2,0)$を通るような$t$は$\fbox{ カ }、\fbox{ キ }$(ただし$\fbox{ カ }<\fbox{ キ }$)である。以下、$t=\fbox{ キ }$とする。

このとき放物線$\mathrm{C}$、接線$l$、および$y$軸によって囲まれる図形$D$の面積$S_1$は$$S_1=\dfrac{\fbox{ クケ }}{\fbox{ コ }}$$となる。点$\mathrm{A}$における放物線$\mathrm{C}$の法線を$m$とすると、$$m:y=\dfrac{\fbox{ サシ }}{\fbox{ ス }}x+\fbox{ セ }$$と表せる。放物線$\mathrm{C}$と法線$m$によって囲まれる図形の面積$S_2$は$$S_2=\dfrac{\fbox{ ソタチ }}{\fbox{ ツテ }}$$となる。また、法線$m$によって図形$D$は2つの領域に分けられるが、そのうち小さい方の領域の面積$S_3$は$$S_3=\dfrac{\fbox{ トナ }}{\fbox{ ニヌ }}$$となる。


正攻法なら15分を目標にしたいところですが、面積公式を使えるのであれば目標時間は5分です。

まずは自力でやってみましょう。

 

 

 

» マジメな解答例はこちら

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《マジメな解答例》

$y=x^2-6x+12$ より、$y’=2x-6$ となるから、接線$l$の方程式は$$y=(2t-6)(x-t)+(t^2-6t+12)$$ $$\therefore y=\fbox{2}(t-\fbox{3})x-\fbox{1}t^2+\fbox{12}$$となる。これが点$(2,0)$を通るから $(x,y)=(2,0)$ を代入して$$0=4(t-3)-t^2+12$$より、$$\therefore t=\fbox{0}、\fbox{4}$$を得る。以下、$t=4$ であるから接線$l$の方程式は $y=2x-4$ となる。

面積$S_1$は

$\begin{align}
S_1&=\int^{4}_{0} \{(x^2-6x+12)-(2x-4)\}dx \\
&=\int^{4}_{0} (x^2-8x+16)dx \\
&=\left[ \dfrac{1}{3} x^3-4x^2+16x \right]^{4}_{0} \\
&=\dfrac{\fbox{64}}{\fbox{3}}
\end{align}$

法線$m$の方程式は$$y=-\dfrac{1}{2}(x-4)+4$$ $$\therefore y=\dfrac{\fbox{-1}}{\fbox{2}}x+\fbox{6}$$となるから、放物線$\mathrm{C}$と法線$m$の交点の$x$座標は、$$x^2-6x+12=-\dfrac{1}{2}x+6$$ $$\therefore x=\dfrac{3}{2}、4$$と求められる。よって面積$S_2$は

$\begin{align}
S_2&=\int^{4}_{\frac{3}{2}} \left\{\left(-\dfrac{1}{2}x+6\right)-(x^2-6x+12)\right\}dx \\
&=\int^{4}_{\frac{3}{2}} \left(-x^2+\dfrac{11}{2}x-6\right)dx \\
&=\left[ -\dfrac{1}{3} x^3+\dfrac{11}{4}x^2-6x \right]^{4}_{\frac{3}{2}} \\
&=-\dfrac{4}{3}-\left(-\dfrac{63}{16}\right) \\
&=\dfrac{\fbox{125}}{\fbox{48}}
\end{align}$

図形の位置関係は以下の図のようになっている。

よって面積$S_3$は

$\begin{align}
S_3&=\int^{\frac{3}{2}}_{0} \left\{(x^2-6x+12)-\left(-\dfrac{1}{2}x+6\right)\right\}dx \\
&=\int^{\frac{3}{2}}_{0} \left(x^2-\dfrac{11}{2}x+6\right)dx \\
&=\left[ \dfrac{1}{3} x^3-\dfrac{11}{4}x^2+6x \right]^{\frac{3}{2}}_{0} \\
&=\dfrac{63}{16}-0 \\
&=\dfrac{\fbox{63}}{\fbox{16}}
\end{align}$

 

と求められる。

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計算量はそれほどでもありませんが、実際に解くと積分記号を書く手間などにより時間が取られてしまいます。では面積公式を使うとどうなるでしょうか。

 

» 公式を使った解答例はこちら

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《公式を使った解答例》

$y=x^2-6x+12$ より、$y’=2x-6$ となるから、接線$l$の方程式は$$y=(2t-6)(x-t)+(t^2-6t+12)$$ $$\therefore y=\fbox{2}(t-\fbox{3})x-\fbox{1}t^2+\fbox{12}$$となる。これが点$(2,0)$を通るから $(x,y)=(2,0)$ を代入して$$0=4(t-3)-t^2+12$$より、$$\therefore t=\fbox{0}、\fbox{4}$$を得る。以下、$t=4$ であるから接線$l$の方程式は $y=2x-4$ となる。(ここまではマジメな解答例と同じ)

面積$S_1$は「$\dfrac{1}{3}$公式」より、$$S_1=\dfrac{1}{3}(4-0)^3=\dfrac{\fbox{64}}{\fbox{3}}$$と求められる。(☜時間短縮!)

法線$m$の方程式は$$y=-\dfrac{1}{2}(x-4)+4$$ $$\therefore y=\dfrac{\fbox{-1}}{\fbox{2}}x+\fbox{6}$$となるから、放物線$\mathrm{C}$と法線$m$の交点の$x$座標は、$$x^2-6x+12=-\dfrac{1}{2}x+6$$ $$\therefore x=\dfrac{3}{2}、4$$と求められる。(法線の求め方もマジメな解答例と同じ)

よって面積$S_2$は「$\dfrac{1}{6}$公式」より、

$\begin{align}
S_2
&=\dfrac{1}{6}\left(4-\dfrac{3}{2}\right)^3 \\
&=\dfrac{1}{6} \cdot \left(\dfrac{5}{2}\right)^3 \\
&=\dfrac{\fbox{125}}{\fbox{48}}
\end{align}$

と求められる。(☜時間短縮!)

$S_3$を求めるが、ここで$\triangle{\mathrm{BPQ}}$に着目する。$\triangle{\mathrm{BPQ}}$の面積は$$\dfrac{1}{2} \cdot 6 \cdot \dfrac{3}{2}=\dfrac{9}{2}$$である。また、放物線$\mathrm{C}$と線分$\mathrm{PB}$によって囲まれる図形の面積を$S_4$とすると、$S_4$は「$\dfrac{1}{6}$公式」より、

$\begin{align}
S_4
&=\dfrac{1}{6}\left(\dfrac{3}{2}-0\right)^3 \\
&=\dfrac{1}{6} \cdot \left(\dfrac{3}{2}\right)^3 \\
&=\dfrac{9}{16}
\end{align}$

と求められる。よって

$\begin{align}
S_3
&=\triangle{\mathrm{BPQ}}-S_4 \\
&=\dfrac{9}{2}-\dfrac{9}{16} \\
&=\dfrac{\fbox{63}}{\fbox{16}}
\end{align}$

となる。(☜時間短縮!)

 

※実際にはこんなに日本語を書く必要は無いのでもっと短い労力で解答可能です。センター試験の第2問は、余白にインテグラル等を書き込んでいる暇があったらさっさと公式で片付けた方が良いでしょう。ここで時間が稼げたら数ⅡBで9割は確実です。

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(コメント)

センター試験は再来年で廃止され、2020年度からは新しい「大学入学共通テスト」なるものが始められるようですが、一体どうなるのでしょう・・・?
一次試験が「共通一次」と呼ばれていた頃やセンター試験が創始された頃に比べれば、今の一次試験問題は遥かに高いレベルの情報処理能力を要する内容になっています。文科省の方針によれば創造的な思考力を問うための試験にしていくとのことですが、記述式設問の導入や民間の英語検定試験の利用などに関しては色々な問題もあり、なかなか一筋縄ではいかないのが現状のようです。

 

“放物線にまつわる面積公式②(例題編)” への2件の返信

  1. 問題文中の $l$ や $m$ の方程式は,「$y=$」が欠落していて,
    これでは直線の方程式になりません.

    また,図形 $D$ は,放物線 $C$,接線 $l$ と,
    ($x$ 軸ではなく) $y$ 軸によって囲まれる部分のようですね.

    $S_3$ を求めるのに,$S_4$ を利用する方法も考えられますが,
    \[S_3=S_1+S_2-(l,\ m,\ y\,軸で囲まれる面積)\]
    と考えることで
    \[\frac{64}{3}+\frac{125}{48}-\frac{1}{2}\cdot\{6-(-4)\}\cdot4=\frac{63}{16}\]
    と計算するのも極めて有力だと思います.

    1. たけちゃん様、いつもコメントありがとうございます。

      「y=」、「y軸」について修正致しました。
      よく確認しておりませんでした。お恥ずかしい限りです・・・。

      図形Dの求め方に関してですが、$S_2$を使うと通分がやや面倒くさそうに思われたので今回は敢えて$S_4$を使ってみましたが、ご指摘の方法もスマートな解法ですね!
      別解のご提供に感謝致します。

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