数式に出てくる文字・記号のLaTeXコマンド集

当サイトではMathJaxによる数式表示を利用していますが、LaTeXのコマンドが分からなければ数式を正しく記述することはできません。そこで今回は数学や物理などの数式によく登場する文字のLaTeXコマンドをご紹介します。

MathJaxを利用していて困っている方や、これから利用しようと考えている方は是非参考にしてみて下さい!



 ギリシャ文字

・ギリシャ文字コマンド一覧

大文字 記法 小文字 記法 変体 記法
$A$ A $\alpha$ \alpha
$B$ B $\beta$ \beta
$\Gamma$ \Gamma $\gamma$ \gamma
$\Delta$ \Delta $\delta$ \delta
$E$ E $\epsilon$ \epsilon $\varepsilon$ \varepsilon
$Z$ Z $\zeta$ \zeta
$H$ H $\eta$ \eta
$\Theta$ \Theta $\theta$ \theta $\vartheta$ \vartheta
$I$ I $\iota$ \iota
$K$ K $\kappa$ \kappa
$\Lambda$ \Lambda $\lambda$ \lambda
$M$ M $\mu$ \mu
$N$ N $\nu$ \nu
$\Xi$ \Xi $\xi$ \xi
$O$ O $o$ o
$\Pi$ \Pi $\pi$ \pi $\varpi$ \varpi
$P$ P $\rho$ \rho $\varrho$ \varrho
$\Sigma$ \Sigma $\sigma$ \sigma $\varsigma$ \varsigma
$T$ T $\tau$ \tau
$\Upsilon$ \Upsilon $\upsilon$ \upsilon
$\Phi$ \Phi $\phi$ \phi $\varphi$ \varphi
$X$ X $\chi$ \chi
$\Psi$ \Psi $\psi$ \psi
$\Omega$ \Omega $\omega$ \omega

$\TeX$はその出力の美しさに定評がありますが、ユーザーが最も恩恵を受けるのがギリシャ文字ではないかと思います。πと$\pi$では可読性やウェブページの見た目にも大きく影響します。

 

 筆記体・斜体など

大文字の筆記体は\mathcalコマンドで記述できます。

(例)\mathcal{ABCDEFG} → $\mathcal{ABCDEFG}$

ギリシャ文字の大文字は頭に “var” を付けることで筆記体になります。変体の記法と同じですが、\varGammaが大文字斜体のガンマになるのに対して、\vargammaはエラーとなるので注意です。

(例)\varGamma → $\varGamma$

ローマン体の出力には\mathrmコマンドを利用します。これは”math”を省略して\rmとしても使えます。

(例)\triangle \mathrm{ABC} → $\triangle \mathrm{ABC}$

$\require{rsfso}$また、ハミルトニアンやラグランジアンなどの筆記斜体文字は\require{rsfso}(←ドルマークで両側を挟む)としてrsfsoパッケージを読み込めば\mathscrコマンドで記述できます。

(例)\mathscr{H} → $\mathscr{H}$

フラクチュール体(ドイツ文字)にしたい場合は\mathfrakコマンドを利用します。

(例)\mathfrak{ABCDEFG} → $\mathfrak{ABCDEFG}$

黒板太字体は\mathbbコマンドで出力します。デフォルトでamsmathパッケージが設定されていなければ\require{amsmath}(←ドルマークで両側を挟む)として適宜インクルードして下さい。

(例)z \in \mathbb{C} → $z \in \mathbb{C}$

●   ●   ●

\math~というコマンドは使用頻度多く、いちいち“math”をタイプするのは面倒です。そこで、\mathrmコマンドのように省略形が使えるかどうかを検証してみました。

\mathit{C}、\it{C} $\mathit{C}、\it{C}$
\mathrm{C}、\rm{C} $\mathrm{C}、\rm{C}$
\mathbb{C}、\bb{C} $\mathbb{C}、\bb{C}$
\mathbf{C}、\bf{C} $\mathbf{C}、\bf{C}$
\mathsf{C}、\sf{C} $\mathsf{C}、\sf{C}$
\mathcal{C}、\cal{C} $\mathcal{C}、\cal{C}$
\mathtt{C}、\tt{C} $\mathtt{C}、\tt{C}$

ご覧の通り、当サイトの環境では\bbコマンドが使えないようです。他のウェブサイトではどうなっているか分かりませんが、略記コマンドに対応していない場合もあることを想定すると、やはり”math”を省略しないほうが安全ではあります。

これらの中で最も使用頻度が高いと思われる\mathrmコマンドで省略形が使えるのは嬉しいですね。「四角形$ABCD$」と「四角形$\mathrm{ABCD}$」では何となく印象が変わりますよね。

 

 二項演算子など

・二項演算子コマンド一覧

記法 記法
$\pm$ \pm $\mp$ \mp
$\times$ \times $\div$ \div
$\ast$ \ast $\star$ \star
$\circ$ \circ $\bullet$ \bullet
$\cdot$ \cdot $\cap$ \cap
$\cup$ \cup $\uplus$ \uplus
$\sqcap$ \sqcap $\sqcup$ \sqcup
$\vee$ \vee $\wedge$ \wedge
$\setminus$ \setminus $\wr$ \wr
$\oplus$ \oplus $\ominus$ \ominus
$\otimes$ \otimes $\odot$ \odot
$\bigcirc$ \bigcirc $\diamond$ \diamond
$\bigtriangleup$ \bigtriangleup $\bigtriangledown$ \bigtriangledown
$\triangleleft$ \triangleleft $\triangleright$ \triangleright
$\dagger$ \dagger $\dagger$ \ddagger
$\amalg$ \amalg

プラスやマイナス、イコールなどは直接使います。

・関係演算子コマンド一覧

記法 記法
$\le$ \le(\leq) $\leqq$ \leqq
$\ge$ \ge(\geq) $\geqq$ \geqq
$\prec$ \prec $\succ$ \succ
$\preceq$ \preceq $\succeq$ \succeq
$\ll$ \ll $\gg$ \gg
$\subset$ \subset $\supset$ \supset
$\subseteq$ \subseteq $\supseteq$ \supseteq
$\sqsubseteq$ \sqsubseteq $\sqsupseteq$ \sqsupseteq
$\vdash$ \vdash $\dashv$ \dashv
$\in$ \in $\ni$ \ni
$\notin$ \notin $\ne$ \ne
$\sim$ \sim $\equiv$ \equiv
$\asymp$ \asymp $\simeq$ \simeq
$\cong$ \cong $\approx$ \approx
$\doteq$ \doteq $\neq$ \neq
$\models$ \models $\propto$ \propto
$\mid$ \mid $\perp$ \perp
$\bowtie$ \bowtie $\parallel$ \parallel
$\frown$ \frown $\smile$ \smile

\neや\notinなどの否定演算子は\notコマンドを利用することによっても出力可能です。

(例)x \not \in \mathbb{N} → $x \not \in \mathbb{N}$

(例)a \not \equiv b → $a \not \equiv b$

(例)AB \not \parallel CD → $AB \not \parallel CD$

 

 矢印など

・LaTeX標準スタイルの矢印コマンド一覧

コマンド コマンド
$\uparrow$ \uparrow $\downarrow$ \downarrow
$\Uparrow$ \Uparrow $\Downarrow$ \Downarrow
$\updownarrow$ \updownarrow $\Updownarrow$ \Updownarrow
$\leftarrow$ \leftarrow $\rightarrow$ \rightarrow
$\leftrightarrow$ \leftrightarrow $\Leftrightarrow$ \Leftrightarrow
$\Leftarrow$ \Leftarrow $\Rightarrow$ \Rightarrow
$\longleftarrow$ \longleftarrow $\longrightarrow$ \longrightarrow
$\Longleftarrow$ \Longleftarrow $\Longrightarrow$ \Longrightarrow
$\longleftrightarrow$ \longleftrightarrow $\Longleftrightarrow$ \Longleftrightarrow
$\nwarrow$ \nwarrow $\nearrow$ \nearrow
$\swarrow$ \swarrow $\searrow$ \searrow
$\mapsto$ \mapsto $\longmapsto$ \longmapsto
$\hookleftarrow$ \hookleftarrow $\hookrightarrow$ \hookrightarrow
$\leftharpoonup$ \leftharpoonup $\rightharpoonup$ \rightharpoonup
$\leftharpoondown$ \leftharpoondown $\rightharpoondown$ \rightharpoondown
$\rightleftharpoons$ \rightleftharpoons

・amssymbスタイルの矢印コマンド一覧

コマンド コマンド
$\twoheadleftarrow$ \twoheadleftarrow $\twoheadrightarrow$ \twoheadrightarrow
$\Lsh$ \Lsh $\Rsh$ \Rsh
$\leftleftarrows$ \leftleftarrows $\rightrightarrows$ \rightrightarrows
$\upuparrows$ \upuparrows $\downdownarrows$ \downdownarrows
$\rightleftarrows$ \rightleftarrows $\leftrightarrows$ \leftrightarrows
$\Lleftarrow$ \Lleftarrow $\Rrightarrow$ \Rrightarrow
$\leftarrowtail$ \leftarrowtail $\rightarrowtail$ \rightarrowtail
$\rightsquigarrow$ \rightsquigarrow $\leftrightsquigarrow$ \leftrightsquigarrow
$\looparrowleft$ \looparrowleft $\looparrowright$ \looparrowright
$\circlearrowleft$ \circlearrowleft $\circlearrowright$ \circlearrowright
$\curvearrowleft$ \curvearrowleft $\curvearrowright$ \curvearrowright
$\upharpoonleft$ \upharpoonleft $\upharpoonright$ \upharpoonright
$\downharpoonleft$ \downharpoonleft $\downharpoonright$ \downharpoonright
$\nleftarrow$ \nleftarrow $\nrightarrow$ \nrightarrow
$\nLeftarrow$ \nLeftarrow $\nRightarrow$ \nRightarrow
$\nleftrightarrow$ \nleftrightarrow $\nLeftrightarrow$ \nLeftrightarrow

このほかに\overleftarrowや\overrightarrowなどのコマンドでベクトルの表示ができます。ただし、ベクトルだけなら\vecだけでも表示できます。

(例)\overrightarrow{a} → $\overrightarrow{a}$

また、\stackrelコマンドにより記号の上に式を乗せることができます。

(例)A \stackrel{\varDelta}{\to} B → $A \stackrel{\varDelta}{\to} B$

また、$\iff$ の上下に文字を入れたい場合は$$$$

 

 スラッシュ(打ち消し)

$\require{cancel}$\require{cancel}としてcancelパッケージをインクルードすれば斜線の表示が可能となります。

(例)\dfrac{2}{\cancel{3}}\times\dfrac{3}{\cancel{7}} → $\dfrac{2}{\cancel{3}}\times\dfrac{\cancel{3}}{7}$

 

 ドット

数式にはドットも頻繁に登場します。

\ldots $$\ldots$$
\cdots $$\cdots$$
\vdots $$\vdots$$
\ddots $$\ddots$$

 

 その他(偏微分記号など)

また、偏微分記号$\partial$は\partialで呼び出し可能です。また、

1階微分 $\dot{x}$
2階微分 $\ddot{x}$
3階微分 $\dddot{x}$
4階微分 $\ddddot{x}$

の略記はそれぞれ\dot、\ddot、\dddot、\ddddotを利用します。因みに5階微分以上はコマンドが用意されていません。どうしてもドットを上に5個乗せたい場合は$\overset{\cdot\cdot\cdot\cdot\cdot}{x}$(\overset{\cdot\cdot\cdot\cdot\cdot}{x})のように書きましょう。


・・・他にも上付き・下付き文字、装飾文字などは色々ありますが、全部紹介しているとキリが無いので、この辺にしておきます。



(コメント)

・・・久々に「備忘録」っぽい記事を書きました(笑)

$\TeX$は初学者には敷居が高く取っ付きにくい存在だと言われていますが、一昔前よりもMathJaxを利用したウェブページが増えたような気がします。最近の数学ブームの現れでしょうか?

 

 

“数式に出てくる文字・記号のLaTeXコマンド集” への4件の返信

  1. はじめまして。通りすがりのものです。

    \rm{aaa}、\tt{aaa} などの記法は「明確に誤り」です。これらは本来 {\rm aaa}、{\tt aaa} のように使います。なのでたとえば、
    「aaa \rm{bbb} ccc」
    「aaa \tt{bbb} ccc」
    などと書くと、後ろの ‘ccc’ までもが \rm や \tt の巻き添えになります。

    それと、これらの記号はかなり古い時代の記法なので、現在では
    ・数式モードの組み方で、立体→\mathrm{aaa}
    ・本文モードの組み方で、立体→\textrm{aaa}
    ・本文モードで、かつ、その文章のデフォルトフォントで→\text{aaa}
    といった書き方が推奨されています。

    ちなみに、数式中で \text{} を使うシチュエーションとしては、
    「|x| = -x \text{if} x<0, x \text{otherwise}」
    「a_{n+1}=3a_n \quad \text{for} \;\; n=0,1,2,\cdots」
    などがあります。

    もうひとつ。扱う数式の分野によっては、変数名が2文字以上になることもあります。このような場合は、\mathit{} を使って
    「\mathit{SD} = \sqrt{V}」
    「\mathit{diff} = a-b」
    のように書くことが推奨されています。これらと
    「SD=\sqrt{V}」
    「diff=a-b」
    とでどんな違いが出るのか、ぜひ実際に試してみてください。

    ただし、\mathit{} の代わりに \textit{} を使うのは、少なくともMathJaxではうまくいかないようです。

    以上、ご参考までに。

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