積分計算の便利ツール「瞬間部分積分」を使ってみる

「瞬間部分積分」というのは受験業界で通称されている部分積分の計算法の一種です。使い方によっては計算ミスを減らすことができ、なおかつ計算スピードの向上に繋がるため、数Ⅲ微積で重宝している方も多いのではないでしょうか。今回の記事ではその「瞬間部分積分」の使い方について紹介します!

 

 瞬間部分積分は公式ではない!

一般に、積の形をした関数の部分積分は以下のような表式をもちます。$$\int \color{blue}{f} \color{red}{g}\, \color{black}{d x}=\color{blue}{f} \color{red}{g^{+}}\color{black}{-}\color{blue}{f^{-}} \color{red}{g^{+2}}\color{black}{+}\color{blue}{f^{-2}} \color{red}{g^{+3}}\color{black}{-}\color{blue}{f^{-3}}\color{red}{g^{+4}}\color{black}{+}\cdots$$これは計算すれば自然に得られる式で、公式でも何でもありません。

部分積分の計算は具体的には次のように展開され、最終的に得られる式が上式です。

この手続きを簡略化し、機械的に行ってしまおうというのが「瞬間部分積分」のアイデアです。これをまるで公式のように扱う人がいますが、瞬間部分積分はただ単に積分計算の手続きを単純化しているに過ぎないということを覚えておいて下さい。

 

 瞬間部分積分のやり方

それでは、試しに $\displaystyle \int x^{4} e^{x} d x$ という不定積分を求めてみましょう。

最終的に定数になるのは$x^4$の方なので、$x^4$を微分して$e^x$を積分していく方針で瞬間部分積分を使います。$$\begin{array}{c|c|clrr}
+ & \color{blue}{x^{4}} & \color{red}{e^{x}} & \to & x^{4}e^{x} \\
– & \color{blue}{4x^{3}} & \color{red}{e^{x}} & \to & -4x^{3}e^{x} \\
+ & \color{blue}{12 x^{2}} & \color{red}{e^{x}} & \to & 12 x^{2}e^{x} \\
– & \color{blue}{24 x} & \color{red}{e^{x}} & \to & -24 x e^{x} \\
+ & \color{blue}{24} & \color{red}{e^{x}} & \to & 24 e^{x}
\end{array}$$このような表を作って各行の積を取り、各項を加えるだけで不定積分が計算可能です。このとき、左の列の一番上には$+$を書き、$+$と$-$を交互に書いていって下さい。

これで、$$\small \begin{align}
& \quad \int x^{4} e^{x} d x \\ &=\color{blue}{x^{4}}\color{red}{e^{x}}\color{black}{-}\color{blue}{4x^{3}}\color{red}{e^{x}}\color{black}{+}\color{blue}{12 x^{2}}\color{red}{e^{x}}\color{black}{-}\color{blue}{24 x}\color{red}{e^{x}}\color{black}{+}\color{blue}{24}\color{red}{e^{x}}\color{black}{+}C \\
&=\left(x^{4}-4 x^{3}+12 x^{2}-24 x+24\right) e^{x}+C
\end{align}$$と求められます。


同じようにして、不定積分 $\displaystyle \int x^{3} \sin x \, d x$ を求めてみましょう。今回も最終的に定数になるのは$x^3$の方なので、$x^3$を微分して$\sin x$を積分していきます。$$\begin{array}{c|c|clrr}
+ & \color{blue}{x^{3}} & \color{red}{-\cos x} & \to & -x^{3}\cos x \\
– & \color{blue}{3x^{2}} & \color{red}{-\sin x} & \to & 3x^{2}\sin x \\
+ & \color{blue}{6 x} & \color{red}{\cos x} & \to & 6x\cos x \\
– & \color{blue}{6} & \color{red}{\sin x} & \to & -6\sin x
\end{array}$$よって表より、$$\small \begin{align}
& \quad \int x^{3} \sin x \, d x \\ &=\color{blue}{x^{3}}\color{red}{(-\cos x)}\color{black}{-}\color{blue}{3x^{2}}\color{red}{(-\sin x)}\color{black}{+}\color{blue}{6 x}\color{red}{\cos x}\color{black}{-}\color{blue}{6}\color{red}{\sin x}\color{black}{+}C \\
&=-x^{3}\cos x+3x^{2}\sin x+6x\cos x-6\sin x+C
\end{align}$$と求められます。是非、普通の解き方と比べてみて下さい。

 

 対数を含むときは $\log x=t$ と置く!

瞬間部分積分は計算をラクにする便利な方法ですが、対数を含む関数を積分する場合は注意が必要です。

一般に、(多項式)×(対数)型の関数の積分には瞬間部分積分をそのまま適用することはできません。実際にやってみると分かることですが、瞬間部分積分をそのまま適用すると答えが $\small \dfrac{1}{3}x^3\log x-\dfrac{1}{12}x^3+C$ となってしまいます(正しくは $\small \dfrac{1}{3}x^3\log x-\dfrac{1}{9}x^3+C$ です)。こうなってしまう理由は、この方法では $\log x$ を微分すると出てくる$\dfrac{1}{x}$による約分を考慮できていないからです。

これを解決するには $\log x=t$ という置換を考えます。$\log x=t$ と置くと $x=e^{t}$ より、$d x=e^{t} d t$ となるので、被積分関数が($t$の多項式)× $e^t$ の形に直せます。これにより、瞬間部分積分を適用できるようになります。

例えば、不定積分 $\displaystyle \int x(\log x)^{3} d x $ は瞬間部分積分を用いて次のように計算できます。

$\log x=t$ と置くと $x=e^{t}$ より、$d x=e^{t} d t$ となるので、$$\displaystyle \int x(\log x)^{3} d x = \int t^{3} e^{2t} d t$$と変換できます。これに瞬間部分積分を適用すると、$$\begin{array}{c|c|clrr}
+ & \color{blue}{t^{3}} & \color{red}{\dfrac{1}{2}e^{2t}} & \to & \dfrac{1}{2}t^3 e^{2t} \\
– & \color{blue}{3t^{2}} & \color{red}{\dfrac{1}{4}e^{2t}} & \to & -\dfrac{3}{4}t^2 e^{2t} \\
+ & \color{blue}{6 t} & \color{red}{\dfrac{1}{8}e^{2t}} & \to & \dfrac{3}{4}t e^{2t} \\
– & \color{blue}{6} & \color{red}{\dfrac{1}{16}e^{2t}} & \to & -\dfrac{3}{8} e^{2t} \\
\end{array}$$となるので、$$\small \begin{aligned}
& \quad \int x(\log x)^{3} d x \\
&=\int t^{3} e^{2t} d t \\
&=\dfrac{1}{2}t^3 e^{2t}-\dfrac{3}{4}t^2 e^{2t}+\dfrac{3}{4}t e^{2t}-\dfrac{3}{8} e^{2t}+C \\
&=\dfrac{1}{2}x^2(\log x)^3-\dfrac{3}{4}x^2(\log x)^2+\dfrac{3}{4}x^2\log x-\dfrac{3}{8}x^2+C
\end{aligned}$$と求められます。

このように、対数を含む関数の瞬間部分積分は少し面倒ですが、計算ミスを犯す確率はかなり下げられるのではないでしょうか。

 


(コメント)

以上、瞬間部分積分のやり方について紹介しました。正直に言って、この程度の計算であれば瞬間部分積分に頼らなくても計算できますし、瞬間部分積分の方法でしか部分積分の計算ができないようでは困ります。しかし、この方法だと式を書き下すことなく表を使って計算結果を整理できるので、転記ミスや符号ミスの頻度を格段に減らせます。実際の試験答案に「瞬間部分積分より…」などと書くのは意味不明なので厳禁ですが、不要なケアレスミスを回避するために検算程度には使ってみても良いと思います。

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