色々な多重根号を外してみる(Denesting Radicalsの話題)

二重根号を外す操作(Denesting Radicals)については、前々回の記事で色々と解説してきました。今回はさらに複雑な「多重根号」(Nested Radicals)についてご紹介したいと思います。


 

 三重根号を外す

早速ですが、次の問題を解いてみましょう。

《問題》

$\small \sqrt{9+4\sqrt{4+2\sqrt{3}}}$ を簡単にせよ。

 

式がイカツイので一瞬怯みそうになりますが、どうせ根号が外せるのだろうと見当が付きます。まずは取り敢えず $\sqrt{4+2\sqrt{3}}$ の部分を簡単にするところから始めましょう。$$\small \begin{align}
\sqrt{4+2\sqrt{3}}&=\sqrt{1+2\sqrt{3}+3} \\
&=\sqrt{(1+\sqrt{3})^2} \\
&=1+\sqrt{3} \\
\end{align}$$より、与式は$$\small \begin{align}
& \quad \ \sqrt{9+4\sqrt{4+2\sqrt{3}}} \\
&=\sqrt{9+4(1+\sqrt{3})} \\
&=\sqrt{13+4\sqrt{3}} \\
\end{align}$$と変形できます。これはさらに$$\small \begin{align}
& \quad \ \sqrt{13+4\sqrt{3}} \\
&=\sqrt{13+2\sqrt{12}} \\
&=\sqrt{1+2\sqrt{12}+12} \\
&=\sqrt{(1+\sqrt{12})^2} \\
&=1+\sqrt{12} \\
&=\color{red}{1+2\sqrt{3}}
\end{align}$$と簡単にすることができます。

このように、多重根号であっても外して簡単にできるものが存在します。外せる二重根号の見分け方については「二重根号を外す色々な方法」の記事中で紹介していますので、是非参照して下さい。

 

 三角関数と多重根号

また、三角関数を扱うときにも多重根号が出てくる場面があります。

$\sin\dfrac{\pi}{4}$に対して半角の公式を使えば $\sin\dfrac{\pi}{8}=\dfrac{\sqrt{2-{\sqrt{2}}}}{2}$ という二重根号で表された式が得られます。

他にも例えば、$$\begin{align}
\sin \dfrac{\pi}{24}&=\sin 7.5^{\circ} \\
&=\dfrac{1}{2}\sqrt {2-{\sqrt{2+{\sqrt {3}}}}}
\end{align}$$などがあります。因みにこの三重根号は完全には外せません。そこで、次を示してみます。

《問題》

$\small \sin \dfrac{\pi}{24}=\dfrac{1}{2}\sqrt {2-{\sqrt{2+{\sqrt {3}}}}}$ を示せ。

 

これは以下のように式変形することで示されます。$$\small \begin{align}
& \quad \sin \dfrac{\pi}{24} \\
&=\sin \left(\dfrac{\pi}{6}-\dfrac{\pi}{8}\right) \\
&=\sin \dfrac{\pi}{6} \cos \dfrac{\pi}{8} – \cos \dfrac{\pi}{6} \sin \dfrac{\pi}{8} \\
&=\dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{\sqrt{2+\sqrt{2}}}{2} – \dfrac{\sqrt{3}}{2} \cdot \dfrac{\sqrt{2-\sqrt{2}}}{2} \\
&=\dfrac{1}{4} \left( \sqrt{2+\sqrt{2}} – \sqrt{6-3\sqrt{2}}\right) \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{\left( \sqrt{2+\sqrt{2}} – \sqrt{6-3\sqrt{2}}\right)^2} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{2+\sqrt{2}+6-3\sqrt{2}-2\sqrt{(2+\sqrt{2})(6-3\sqrt{2})}} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{8-2\sqrt{2}-2\sqrt{6}} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{8-2(\sqrt{2}+\sqrt{6})} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{8-2\sqrt{(\sqrt{2}+\sqrt{6})^2}} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{8-2\sqrt{8+4\sqrt {3}}} \\
&=\dfrac{1}{4} \sqrt{8-4\sqrt{2+\sqrt {3}}} \\
&=\color{red}{\dfrac{1}{2}\sqrt {2-{\sqrt{2+{\sqrt {3}}}}}}
\end{align}$$ $\sin \dfrac{\pi}{8}$と$\cos \dfrac{\pi}{8}$の二重根号は外せないので、結局 $\sin \dfrac{\pi}{24}$ の三重根号は完全には外せないことが言えます。

この途中の式変形を考えると、いくらでも類題が作れることが分かりますね。

 

 ラマヌジャンの公式

“Denesting Radicals” のトピックとして取り上げられることの多い等式が「ラマヌジャンの等式」と呼ばれる以下のような等式群です。$$\small \begin{align}
\sqrt[3]{\sqrt[3]{2}-1} &=\sqrt[3]{\frac{1}{9}}-\sqrt[3]{\frac{2}{9}}+\sqrt[3]{\frac{4}{9}} \\
\sqrt{\sqrt[3]{28}-\sqrt[3]{27}} &=\frac{1}{3}(\sqrt[3]{98}-\sqrt[3]{28}-1) \\
\sqrt{\sqrt[3]{5}-\sqrt[3]{4}} &=\frac{1}{3}(\sqrt[3]{20}+\sqrt[3]{2}-\sqrt[3]{25}) \\
\sqrt[6]{7 \sqrt[3]{20}-19}&=\sqrt[3]{\frac{5}{3}}-\sqrt[3]{\frac{2}{3}}
\end{align}$$これらを証明するのは面倒ですが不可能ではありません。

一般にどのような多重根号が denest(解除)できるかについて調べるにはガロア理論などをマジメに勉強する必要があります。ただし、3乗根を内部に含む二重根号については以下の公式がラマヌジャンにより与えられています。$$\small \begin{array}{c}
\sqrt{m \sqrt[3]{4 m-8 n}+n \sqrt[3]{4 m+n}}= \\
\pm \dfrac{1}{3}(\sqrt[3]{(4 m+n)^{2}}+\sqrt[3]{4(m-2 n)(4 m+n)}-\sqrt[3]{2(m-2 n)^{2}})
\end{array}$$普通、式中の $m,\,n$ は整数の場合を考えますが、この等式自体は $m,\,n$ が整数でなくても成り立ちます(ただし符号に注意)。

ここで、$\sqrt{\sqrt[3]{\alpha}+\sqrt[3]{\beta}}$ に対してこれを適用すると$$\dfrac{\beta}{\alpha}=\dfrac{n^{3}(4 m+n)}{m^{3}(4 m-8 n)}$$という関係が成り立ちます。ここから、比$\dfrac{\beta}{\alpha}$を取ったときに上式を満たすような整数 $m,\,n$ が存在するとき、有理係数の範囲で外側の根号が外せます(ここでは細かい証明には立ち入りません)

例えば、$\sqrt{\sqrt[3]{5}-\sqrt[3]{4}}$の場合、$(m,n)=(1,1)$ とすれば$$\small \begin{align}
&\quad \ \sqrt{\sqrt[3]{5}-\sqrt[3]{4}} \\
&=\dfrac{1}{3}\left(\sqrt[3]{5^{2}}+\sqrt[3]{4\cdot(-1)\cdot5}-\sqrt[3]{2\cdot(-1)^{2}}\right) \\
&=\dfrac{1}{3}(\sqrt[3]{25}-\sqrt[3]{20}-\sqrt[3]{2})
\end{align}$$と根号が外せます。

また、$\sqrt{\mathstrut\sqrt[3]{28}-\sqrt[3]{27}}$の場合は $(m,n)=(1,-3)$ とすれば$$\small \begin{align}
&\quad \ \sqrt{\sqrt[3]{28}-\sqrt[3]{27}} \\
&=-\dfrac{1}{3}\left(\sqrt[3]{1^{2}}+\sqrt[3]{4\cdot7\cdot1}-\sqrt[3]{2\cdot7^{2}}\right) \\
&=\dfrac{1}{3}(\sqrt[3]{98}-\sqrt[3]{28}-1)
\end{align}$$と根号が外せます。

この公式は平方根の中に立方根が含まれる場合にのみ有効で、$$\sqrt[3]{\sqrt[3]{2}-1}=\sqrt[3]{\dfrac{1}{9}}-\sqrt[3]{\dfrac{2}{9}}+\sqrt[3]{\dfrac{4}{9}}$$などの等式を導くには別の公式を使う必要があります。

3乗根以外にもラマヌジャンは色々な等式を発見しており、彼のノートには$$\small \sqrt[24]{1+100 \sqrt[3]{2}-80 \sqrt[3]{4}}=\sqrt[3]{\frac{1}{9}}-\sqrt[3]{\frac{2}{9}}+\sqrt[3]{\frac{4}{9}}$$ $$\small \sqrt[4]{\frac{7+4 \sqrt{3}}{7-4 \sqrt{3}}}=\frac{3+\sqrt{3}}{3-\sqrt{3}}$$などの「天からの啓示」が山のように書き留められていたそうです。

日常生活は勿論、受験の世界でもほとんど役に立たない公式と言えますが、友達に自慢できるくらいは役に立つ・・・かもしれません。

 

 無限多重根号の式を簡単にする

「無限多重根号の式」と聞くと何だか怖そうですが、こちらの方が入試などでは馴染みのある形かもしれません。

例えば、$$\small x=\sqrt{2+{\sqrt{2+{\sqrt{2+{\sqrt{2+\cdots }}}}}}}$$という式は実は$2$に一致します。これは$x$が$$x=\sqrt{2+x}$$という等式を満たすためです。この方程式を解くと $x=2,-1$ と二つの値が出てきますが、$x>0$ なので $x=2$ と決まります。

これを一般化すると$$\small \sqrt{n+\sqrt{n+\sqrt{n+{\sqrt{n+\cdots}}}}}=\dfrac{1}{2}(1+{\sqrt {1+4n}}\,)$$という「閉じた式」が得られます(このようなものを英語では “closed form” と言います)。$n=1$ とすると極限値は「黄金比」$\dfrac{1+\sqrt {5}}{2}$ に一致します。

また、$$\small \sqrt{n-\sqrt{n-\sqrt{n-{\sqrt{n-\cdots}}}}}=\dfrac{1}{2}(-1+{\sqrt {1+4n}}\,)$$は $x^2+x=n$ の正の解を与えます。

立方根の場合は$$\small \sqrt[3]{n+\sqrt[3]{n+\sqrt[3]{n+{\sqrt[3]{n+\cdots}}}}}$$は $x^3-x-n=0$ の正の実数解を与えます。特に $n=1$ のときは「プラスチック数」を与えます。

ラマヌジャンは上記の累乗根の等式以外にも、次のような等式を見出しました。$$\small \sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{1+\cdots}}}}=3$$これを直接示すのは少し難しいですが、結論から言うと$$\small \begin{align}&\quad \ x+n+a \\ &=\sqrt{a x+(n+a)^{2}+x \sqrt{a(x+n)+(n+a)^{2}+(x+n) \sqrt{\cdots}}}\end{align}$$という関係が成り立つ(母関数を考えれば得られる)ので、$a=0$、$n=1$、$x=2$ を代入して上の値を得ます。この等式を使えば他にも$$\small \sqrt{6+2 \sqrt{7+3 \sqrt{8+4 \sqrt{9+\cdots}}}}=4$$などの式が得られます。

ラマヌジャンが残した等式は数知れず、$$\small \sqrt{8-\sqrt{8+\sqrt{8-\cdots}}}=1+2 \sqrt{3} \sin 20^{\circ}$$ $$\small \sqrt{11-2 \sqrt{11+2 \sqrt{11-\cdots}}}=1+4 \sin 10^{\circ}$$など、どうやったら思い付くのか凡人には理解できないようなものが沢山あります。興味のある方はネット上に公開されている論文(ほとんど英語ですが…)を読み漁ってみて下さい!

 

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