複素数と整数の融合問題(2021年大阪市立大学後期数学第2問)

今年の大阪市立大学後期では複素数と整数の融合問題が出題されました。アプローチによって所要時間が大きく変わる問題です。


 

$a$、$b$、$c$、$d$、$e$、$f$ を正の整数とし、$i$は虚数単位とする。次の問いに答えよ。

問1 複素数 $z=a+b \sqrt{5} i$ が$$z^{2}=11+8 \sqrt{5} i$$を満たすとする、このような$a$、$b$の組をすべて求めよ。

問2 複素数 $w=c-d\sqrt{5} i$ と $u=e-f\sqrt{5} i$ が$$-wu=11+8 \sqrt{5} i$$を満たすとする。このような$c$、$d$、$e$、$f$の組をすべて求めよ。

(2021年大阪市立大学 後期第2問)

 

 考え方

このような複素数絡みの整数問題では

①絶対値を比較する
②実部と虚部を比較する

という2通りのアプローチが考えられます。①の方針では平方数の組み合わせを相手にするので解の候補はそれほど膨れ上がりません。②の方針でも解けないことはありませんが、文字の数が多くなるにしたがって煩雑な場合分けが要求されるため、(2)のような問題ではやや不利です。以下では両方の方針による解答例を示します。


解答例

 

(1)

等式$$z^{2}=11+8 \sqrt{5}i \quad \cdots (*)$$が成り立つとき、両辺の絶対値は等しくなるから$$|z|^2=|11+8 \sqrt{5} i|$$ $$\therefore a^2+5b^2=21$$が成り立つ。これを満たすような正の整数の組$(a,b)$は$$(1,2),\,(4,1)$$のみである。

 

$(a,b)=(1,2)$ のとき$$(1+2\sqrt{5} i)^2=-19+4\sqrt{5} i$$となるから解として不適。

 

$(a,b)=(4,1)$ のとき$$(4+\sqrt{5} i)^2=11+8\sqrt{5} i$$となる。

 

以上より、$$\color{red}{(a,b)=(4,1)}$$が求める整数組である。

 

 

(2)

等式$$-wu=11+8 \sqrt{5} i \quad \cdots (*)$$が成り立つとき、両辺の絶対値は等しくなるから$$|w| |u|=|11+8 \sqrt{5} i|$$が成り立ち、この両辺を2乗して$$\therefore (c^2+5d^2)(e^2+5f^2)=441$$を得る。ここで、等式$(*)$について$w$と$u$は対称なので、$|w|\leqq|u|$ の場合を調べれば十分である。$441=3^2 \times 7^2$ であるから、このとき$$\begin{array}{cc|c}
& c^{2}+5 d^{2} & e^{2}+5 f^{2} \\
\hline (\mathrm{i}) & 3 & 3 \times 7^{2} \\
(\mathrm{ii}) & 7 & 3^{2} \times 7 \\
(\mathrm{iii}) & 3^{2} & 7^{2} \\
(\mathrm{iv}) & 3 \times 7 & 3 \times 7
\end{array}$$の4通りの組み合わせが有り得るが、$c^{2}+5 d^{2}=3$ および $c^{2}+5 d^{2}=7$ を満たすような正の整数の組$(c,d)$は存在しない。

 

$(\mathrm{iii})$のとき、$c^{2}+5 d^{2}=3^2$ を満たすような正の整数の組$(c,d)$は$(2,1)$のみであり、$e^{2}+5f^{2}=7^2$ を満たすような正の整数の組$(e,f)$は$(2,3)$のみである。このとき、$$\small -(2-\sqrt{5}i)(2-3\sqrt{5}i)=11+8\sqrt{5}i$$となるから、$$(c,d,e,f)=(2,1,2,3)$$は求める整数組の一つである。

 

$(\mathrm{iv})$のとき、$c^{2}+5 d^{2}=3\times 7$ を満たすような正の整数の組$(c,d)$は$(1,2)$のみであり、$e^{2}+5f^{2}=3\times 7$ を満たすような正の整数の組$(e,f)$は$(1,2)$のみである。しかし、$$\small -(1-2\sqrt{5}i)(1-2\sqrt{5}i)=19+4\sqrt{5}i$$となるから、これは不適。

 

以上より、大小を考慮して$$\color{red}{(c,d,e,f)=(2,1,2,3),(2,3,2,1)}$$が求める整数組となる。

 

以上が絶対値を比較する解法です。答案中で仮定した $|w|\leqq|u|$ の大小関係を解除するのを忘れずに。

積を展開したときの実部と虚部を比較する解法は以下のようになりますが、解の候補が多くなって手間が増大するのであまりお勧めしません。

別解

 

(1)

$$\begin{aligned}
z^{2} &=(a+b \sqrt{5} i)^{2} \\
&=(a^{2}-5 b^{2})+2 a b \sqrt{5} i
\end{aligned}$$より、$$\left\{\begin{aligned}
a^{2}-5 b^{2}&=11 & \cdots ① \\
2 a b&=8 & \cdots ②
\end{aligned}\right.$$ $b \ne 0$ であるから②より、$$a=\dfrac{4}{b}$$を得る。これを①に代入して$$\dfrac{16}{b^{2}}-5 b^{2}=11$$ $$\therefore 5 b^{4}+11 b^{2}-16=0$$ $$\begin{aligned}
b^{2} &=\dfrac{-11 \pm \sqrt{11^{2}-4 \cdot 5 \cdot(-16)}}{2 \cdot 5} \\
&=\dfrac{-11 \pm 21}{10} \\
&=-\dfrac{16}{5}, \ 1
\end{aligned}$$を得るが、$b$は正の整数であるから $b=1$ に限られる。このとき $a=4$ となるから、$$\color{red}{(a,b)=(4,1)}$$が求める整数組である。

 

 

(2)

$$\begin{aligned}
-wu &=-(c-d \sqrt{5} i)(e-f \sqrt{5} i) \\
&=-c e+5 d f+(c f+d e) \sqrt{5} i
\end{aligned}$$より、$$\left\{\begin{aligned}
-c e+5 d f &=11 & \cdots ③ \\
c f+d e &=8 & \cdots ④
\end{aligned}\right.$$が必要となる。$f \ne 0$ であるから④より$$c=\dfrac{8-de}{f}$$を得るので、これを③に代入して$$-\dfrac{8-de}{f}e+5 d f =11$$ $$\therefore (8-de)e=(5 d f-11)f \quad \cdots ⑤$$と整理できる。ここで $c>0$ より $8-de>0$ であるから⑤の右辺も正となる。特に $5 d f-11>0$ となるが$5 d f$は$5$の倍数であるから $5 d f \geqq 15$ が必要となる。これより$$\begin{aligned} (8-de)e &=(5 d f-11)f \\ & \geqq (15-11)f \\ &\geqq 4 \quad \quad \quad \quad \quad \cdots ⑥\end{aligned}$$という条件を得る。⑥を満たすような組$(d,e)$は以下の13組に限られる。

 

$(1,\,1)$、$(1,\,2)$、$(1,\,3)$、$(1,\,4)$、$(1,\,5)$、$(1,\,6)$、$(1,\,7)$、$(2,\,1)$、$(2,\,2)$、$(2,\,3)$、$(3,\,1)$、$(3,\,2)$、$(4,\,1)$

 

これらについて⑤を$f$について解き、$c$および$f$がともに正の整数となるようなものを探すことにより、$$\color{red}{(c,d,e,f)=(2,1,2,3),(2,3,2,1)}$$を得る。

 


 

絶対値が一致するという条件から絞り込む方針だと手間は少ないですが、得られる候補は必要条件に過ぎないので、得られた整数組が与等式を満たすかどうかをしっかりチェックしなければなりません。

別解のように係数を比較することでも解けますが、(2)のように文字数が多くなると手間が掛かります。上記の別解では計算の詳細をかなり端折っているので一見ラクそうに見えますが、裏ではそれなりに計算しなければなりません。

解法の選択によってボーナス問題(?)になるか時間食い虫になるかが分かれたことでしょう。試験に適した良い問題だと思います。

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