2020年大学入試総括(主に数学)

こんにちは。管理人のpencilです。今年もかなり遅いタイミングになってしまいましたが、大学入試(主に数学)を概観していきます!

今年は数多の受験生および受験生OB・OGの皆さんに長年愛されてきたセンター試験の最終年でした。来年からはセンター試験に代わって「大学入学共通テスト」が施行されます。この新しいテストを巡る文科省の対応に関しては昨年から散々ゴタゴタが続いており、依然として先行きが不透明なままです。

それに加え、今年は中国・武漢が発生源とされる新型コロナウイルスのパンデミックが日本をはじめとする世界各国を襲いました。夏にかけて一度は抑制に成功したものの、最近になって再び勢力を増しています。当然、来年度入試の時期になっても新型コロナウイルスの脅威は取り除けていないでしょうから、今後の推移からは目が離せない状況が続きます。コロナ禍における入試が今後どうなるのかについても、今一度考えてみたいと思います。



(※過去の大学入試総括:2019年2018年2017年

 

 2020年大学入試総括

主要な大学の入試を振り返っていきます。

今年の東大理系数学は昨年比でやや難化しました。一昨年、昨年に引き続き確率分野からの出題が無く、解析分野の比重が大きい出題でした。東大理科の二次試験の数学において3年連続で確率の出題が無かったのは1976年~1978年、1957年~1965年などに次ぐ出来事です。東大数学で頻出の整数分野や複素数平面分野からの出題も無いという非常に珍しいセットでした。理類受験者全体の合格者平均点は昨年よりも10点近く下がっており、数学の出題傾向が変化した影響もありそうです。

理系第1問は不等式に関する問題。与不等式の対称性が高くて手を付けにくそうに見えますが誘導設問が親切です。すんなり解けてしまった人と上手く処理できずに躓いた人に分かれたことと思います。東大理系数学の第1問には通常解きやすい問題が配置されるのですが今年は少し毛色の異なる出題だったため、試験開始早々に出鼻を挫かれた受験生も多かったのではないでしょうか。

第2問は平面図形と領域の問題。問題文が言っていることは単純なので、適切に場合分け出来れば完答は十分狙えるはずです。第3問と第5問は図形に関する解析分野からの出題で東大数学ではありがちなタイプの問題でした。特に第3問は解法に迷う所が無い問題だったので、ここを落とすと合格が難しくなります。

第4問は母関数に関する数列の問題でした。解答には発想力が必要で、差の付く問題だったと思います。問題の詳しい解説はこちらからご覧下さい。

最近の東大数学の第6問はなかなか難しい出題が続いています。今年は楕円に関する問題で、題意が取りにくいというほどではありませんでしたが、近年の第6問のような問題に対処するためには題意を正確に把握する訓練が不可欠です。今年は例年以上に思考力の問われる試験になったと感じます。

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今年の京大数学は難化しました。完答の難しい問題が多く、差が付きにくいセットになったのはないかと思います。今年は文理ともに確率分野からの出題は無く、昨年に引き続き今年も証明問題が出題されませんでした。また今年は、昨年まで5年連続で出題されていた立体図形(多面体)に関する問題が出題されませんでした。一方で、空間ベクトルに関する問題が6年ぶりに出題されました。

今年は第5問の「ラテン方格」に関する場合の数の問題が目を引きます。数独の規則を知っていれば理解が早かったかもしれませんね。決して解けない問題ではないのですが、愚直な場合分けが必要で、時間の取られる問題だったと思います。第4問の整数問題も時間を掛ければ取り切れる問題ですが、実際の試験場ではかなりハードに感じられる問題だったことでしょう。

予備校各社の講評を見ると第6問はやや難と評価されていました。しかし「回転体の回転体」というテーマは難関大ではそれなり出題頻度が高いので、積分法をしっかり勉強していれば(時間は掛かるかもしれませんが)そこまで詰まることのない問題だったと思います。因みに、2016年の京都大学前期にも回転体の求積問題が出題されています。

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今年の東工大は(東工大レベルとしては)かなり易化しました。というよりもここ数年の東工大数学が異様に難化していたというだけかもしれませんが…。それでもやはり理系難関大学の雄と名高いだけあって解きやすい問題かと思ったら大間違い。全問とも小問による誘導こそ付いていますが、十分に思考力が問われる試験になっています。微分を利用する問題や確率の問題が出題されなかった点は少し気になりました。確率分野の出題は2年連続でお休みしたので、来年は復活するのではないかと思います。

今年は昨年で途切れていた整数問題が第1問に復活しました。設定はそこまで複雑という訳ではないので、これは落としたくない問題です。第5問以外は割と典型的な設定の問題が出題されました。東工大の数学としてはかなり良心的です。

第5問の(2)までは(ヘビー級ですが)単純な計算問題なので機械的に解くことができたと思います。(3)以降は経験がモノを言う世界でした。数列をどのように評価すればよいのかを考えるのですが、これを完答するのは至難の業です。ここに時間を掛けるよりは第2問~第4問の検算に時間を費やした方が得策だと言えます。

因みに今年の東工大物理では第3問として気液共存線に関する問題が出題されています。「気液平衡を扱うのは化学」というイメージがありますが、これを覆すような出題となりました。実は2009年や1990年の東大物理に気液平衡を扱った問題がありますので、興味があれば探してみて下さい…。

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今年の大阪大学の数学は理系文系ともに、例年と比較して問題の難度がやや低下した印象です。 各問題とも例年に比べて題意の読み取りにくい問題ではなかったため、高得点層での戦いになったのではないかと思います。いかに完答した問題を積み上げられたかが合否の分かれ目になりました。今年は文理ともに整数分野からの出題はありませんでした。理系第3問(文系第3問に相当)は面白い問題だったので当サイトでも取り上げました。 理系第5問は数Ⅲの回転体の問題かと思いきや、立体の求積は円錐の体積計算だけで終了してしまうため、肩透かしを食らった受験者は多かったのではないでしょうか。(1)の論証に楕円の知識を用いるということで理系のみの出題となったようです。

名古屋大では安定して確率の問題が出題され続けています。前期試験で確率の問題が出題されたのは今年で18年連続であり、この傾向は今後も続くと思われます。整数問題からもここ3年ほどは毎年出題があります。今年の整数問題はなかなか骨のある問題でした。いずれの問題も抽象度が高く、レベルの高い問題が出題されています。難しい論証問題も多く見られるので、計算処理能力も大切ですが、名大志望者は特に論理的な解答を組み立てられる能力を涵養しておく必要があります。

今年の一橋大学の問題はシンプルさに一段と磨きがかかったセットでした。 確率からの出題は3年連続、ベクトルからの出題は2年連続でした。

今年の東北大は例年のような難問揃いの凶悪さはどこへやら。解答に苦慮する難問は特に見られず、東北大としては不気味なほど解きやすい典型的な問題ばかりでした。なお、今年の文理共通の整数問題については当サイトで扱っていますので、もし興味があればこちらからどうぞ。

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現行の教育課程に移行してから早4年。整数やデータの分析、複素数平面などの問題はすっかり定着し、受験対策ではマストと言える単元になりました。2022年にはさらに新課程が施行される予定です。データの比重が大きくなる一方で、ベクトルが数Bから数Cに移動されるため、再来年以降の文系の学生はベクトルという概念を学ぶことなく高校を卒業してしまいます。データの分析分野を増強するのは歓迎すべきことですが、ベクトルを追いやってまですることなのか、疑問が湧きます。これは数Cの分量が増えて理系学生が忙しくなるのも問題なのですが、文系学生がベクトルを全く学ばなくなることで物理を専攻する機会を損なうのではないかということが危惧されます。もともと物理を専攻する文系学生は少ないとはいえ、これまで以上に物理に縁の無い学生が増えてしまいかねない文科省の改定には残念としか言い様がありません。


 

 今年の目立った入試問題

以下、個人的に興味を引いた出題を挙げていきます。今年は(結局開催されませんでしたが)オリンピックの記念の年だったので問題文に「オリンピック」という単語が入りそうな気がしていましたが、思いのほか控え目でした。

    1. 千葉大学 前期理系でガウス整数に関する出題
    2. 東京都立大学 前期理系で接線を共有し互いに外接する2円に接する円に関する出題(1972年の東大2次に類題あり)
    3. 慶応義塾大学 環境情報学部でアルキメデスの「取り尽くし法」を用いた放物線の囲む面積の求積問題(取り尽くし法についてはこちら
    4. 慶応義塾大学 医学部で「バーゼル問題」に関する出題(バーゼル問題についてはこちら
    5. 上智大学 理工学部(推薦情報理工学科)で2進法表示の循環小数に関する問題
    6. 横浜市立大 前期理系で$\left(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\right)^{\sqrt{2}}$の計算が出題
    7. 長岡技術科学大学 前期で3元1次不定方程式が出題(2018年の東工大に類題あり)
    8. 富山大学 後期 (工: 生命工学コース) で7の倍数判定法に関する出題
    9. 山梨大学 工(コンピュータ理工学科)学部推薦で$\sin$の加法定理の証明
    10. 山梨大学 工(情報メカトロニクス工学科)学部推薦で導関数の導出の証明
    11. 山梨大学 後期医学部医学科で$n$進数表示のレピュニット数に関する問題
    12. 信州大学 繊維(化学・材料学科)学部推薦でメタンの結合角に関する出題
    13. 長野大学(公立)中期でオリンピックに関する出題
    14. 愛知教育大学 前期で$\cos x$の導関数の導出が出題
    15. 滋賀大学 文系前期でフィボナッチ数列に関する出題
    16. 大阪市立大学 前期理系で $\displaystyle \sum_{k=1}^{2020} \dfrac{1}{k}$ の整教部分の求値問題が出題(誘導付きなので難度は控えめ)
    17. 大阪市立大学 後期(工)で(積に対する)ヤングの不等式に関する出題
    18. 関西大学 前期文系でマクローリンの不等式に関する出題(解説はこちら
    19. 関西大学 後期(総合情報学部)で不等式$(a+b)^n \leqq 2^{n-1}(a^n+b^n)$に関する出題(類題はこちら
    20. 神戸大学 後期理系で$e^x$のマクローリン展開に関する出題
    21. 島根大学 前期理系でユークリッドの互除法に関する出題
    22. 広島大学 AO入試(情報科学部)の小論文でニュートン法に関する出題
    23. 徳島大学 前期(医,歯,薬)で「等差素数列」に関する出題
    24. 福岡女子大学 前期(国際教養学科)で$\tan 4^{\circ}$が無理数であることの証明
    25. 佐賀大学 前期(医学部)でカルダノの公式による3次方程式の解に関する出題
    26. 熊本大学 前期理系で無限降下法を用いる整数分野の論証問題

(※各入試問題の出典は「大学入試数学問題集成」様の2020年度入試掲載分に基づきます)

数学に特化した有名な受験情報誌「大学への数学」の増刊号として毎年発売される2020年版「合否を分けたこの1題」も傾向を掴むのに良い参考書だと思います。

今年は文系数学で表や散布図をよく見掛けました。データの分析が入試においてウェイトを増してきている証拠でしょう。(ほんの入り口にすぎませんが)統計学やデータサイエンスに馴染みのある大学生を増やしたいという文科省の意向が反映されている気がします。また、3年前に滋賀大学で新設された日本初の「データサイエンス学部」の後期入試ではいかにもデータという感じの長文問題が出題されています。

それから、旧称「首都大学東京」は2020年4月から現在の「東京都立大学」に改称されたため、首都大学東京としての入試は今年が最後となりました。大学の名称と言えば、大阪府立大学と大阪市立大学を統合して2022年に設置される「大阪公立大学」は英語表記を “University of Osaka” とすることが今年の6月に決まりました。しかし、大阪大学の “Osaka University” との混同を招く恐れがあるとして大阪大学が反対しており、議論が決着していません。この問題は結局どうなるのでしょうか…?


 

 コラム①:混迷を深める大学入試改革

2020年をどん底に突き落としたコロナ禍を経験した日本において、大学の存在価値というものがどの程度見直されているのかは管理人にはよく分かりませんが、今の日本についてはっきり言えるのは少子化や経済格差が深刻な度合いにまで進んでしまっているということです。そしてその度合いはますます深まるでしょう。

大学を志望する子供が減れば当然、試験の倍率は下がります。事の成り行き次第では定員割れを起こす大学が続出するでしょう(現状でも一部の私立大などでは既に定員割れを起こしているところもあります)。そうなった時、従来型の「受験生を落とす」タイプの選抜試験は機能しなくなる恐れがあります。

日本の入試改革で最も必要なのは「受験生を拾い上げる」タイプの選抜試験への変革ではないでしょうか。拾い上げるといってもこれは、学力が低くても良いから掬い上げる、ということを意味しません。今までのように定員に合わせて上位から何人という風に合格させるのではなく、「あなたには一定の学力があるのでうちの大学で学ぶことを認めます」と(場合によっては複数の)大学が保証するような試験にしなければ、研究機関としての大学が存続不能になります。ブランド力のあるレベルの高い大学であれば、今まで通りのタイプの試験を続けてもやっていけないことはないかもしれません。しかしいつまで経ってもその状態では、大学が求める一定レベルの学力を備えた学生を十分に確保できない恐れがあります。定員を減らすという選択肢もあり得ますし、そもそも大学を解体してしまうという選択肢もあります。既に予備校業界では生徒の取り合いが激化しています。10年前や20年前に比べると学生の確保が格段に難しくなっています(これは少子化に加えて経済格差の問題もあると考えられます)。大学でもそれと同じことがすぐに起こるでしょう。実際、AO入試として学力試験を免除してしまう形の大学入試が(言い方は悪いですが)横行しています。これは社会的に見て損失とすら言えます。

今回の大学入試改革では、大学受験の要素の一つとして「到達度テスト」の導入が検討されています。到達度テストを定期的に実施してその結果を大学入学の合否に用いるというもので、大学や社会が求める一定程度の学力に達するまで高校在学中に複数回挑戦できるというのは複数の点で理に適っています。

まず本番一発型の入試システムでなくなるため、受験生に過度なストレスを与えないで済むという点。これで1月~2月末にかけて追い込まなければならないという大学受験の呪縛からはある程度解放されるでしょう。それから、到達度テストに向けて日々コツコツ勉強する習慣を身に付けることができれば、就活やその先のスキルアップにもその経験が役立つはずです。答申によれば、高校基礎学力テストは、大学入試だけでなく就職活動にも利用可能とすることなどが盛り込まれています。日本全体の教育レベルの底上げを図るという政府の気概が感じられます。

一方で、記述式問題の導入や民間の英語資格試験の利用に伴う公平性に対する懸念はかねてより指摘されている通りです。また、定期的に到達度テストが実施されることにより、学生はコンスタントに受験勉強を続けなければならず、既存の行事や部活動の機会が制限される可能性も問題視されています。

昨年の大学入試総括のコラムでも述べましたが、記述式問題の採点を大学生のアルバイトに任せるというのは現実的ではありません。しかし、見方によっては記述式の方がかえって受験生の実力を反映した試験になるという主張にも一定の合理性はあります。マークシート方式ではたとえあてずっぽうでも正解のマークを塗りつぶしていれさえすれば得点になってしまうからです。やはり受験から運の要素を取り除くのは不可能に近いです。そういった面で、採点者の能力が一律でないという問題があるにせよ、記述式の問題でも一定の公平性を確保できるという主張はあながち的外れとは言えません。本当は採点用AIなどが出来上がっていれば良いのですが、なかなかそう上手くはいきません。

因みにフランスの「バカロレア」では試験がすべて記述式で行われています。採点はもちろん手作業です。どのような人物が採点官を務めているのかは寡聞にして知りませんが、恐らく大学教授かそれに準ずる資格を持つ人物が担当しているはずです。また、中国で行われている「高考」では記述式の設問が用意されており、小規模から中規模程度の作文も試験として課されています。この採点は複数人体制で行われ、可能な限り採点のクオリティにばらつきが生じないように配慮されているとのことです。日本では全国的な統一試験に記述式の問題が課された例は無く、採点方法の議論に関してはまだまだ決着しなさそうです。

大学入試改革の柱として、英語の「4技能」を備えた人材育成というものがあります。4技能というのは「読む・聞く・書く・話す」という4つの言語運用能力を指しています。これら全てを学力として計測するのは従来通りの試験では不可能です。そのため、TOEIC や TOEFL、英検などの民間で運営されている試験を利用する案が出されました。しかし、もしこれを全国の学生に一律に課すとなると、地理的及び金銭的な不公平が生じかねません。試験会場は都市部に集中しており、受験機会も地域によって異なるからです。

識者からは4技能のうち「話す」を除外してはどうかという意見も出ており、民間企業に試験を一部でも委託することに危機感を持っている教育者は少なくないと思われます。ちょうど1年ほど前のニュースですが、新テストの記述式問題の採点業務を落札したベネッセグループと官僚との間の癒着疑惑が取り沙汰され、ワイドショーを賑わせました。受験という教育上の一大イベントに民間企業であるベネッセコーポレーションだけが関与することになれば、利益相反となることは明らかであり、悪い意味で教育現場におけるベネッセの影響力が拡大してしまうことが懸念されます。これは結局、あまりに批判されたためにご破算になった…?と伝えられていたはずです。

また、コンスタントに受験勉強を続けなければならない、という点についても教育現場から物申されています。まず入試相当の試験を高校が年に何度も行うのは現場の負担が大きいという懸念点があります。また、従来の定期考査との兼ね合いや授業の進度などをどう揃えるのかも検討の余地があります。到達度テストを実施する時期によっては大会への出場等により受験できない学生も出てくるでしょう。こうした学生にはどのように対処するのでしょうか?

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グローバル人材育成を謳って進められている大学入試改革ですが、あちらこちらで侃々諤々の議論が続いています。結局、教育現場は常に置いてきぼりを食っています。今年の9月末に開かれた文科省検討会議の会合では、提言をとりまとめる時期を当初予定の2020年末から21年に延期することが決まりました。コロナウイルス蔓延の影響を見極めて今後の方針を策定するためとのことです。

昨年の時点で「教育の民営化」と批判され、既に散々迷走してきた大学入試改革ですが、今年のコロナ禍の煽りを受けてより一層混迷の度を深めています。政府関係者との利権が大いに絡む教育分野の仕事であるだけに、真に日本のためになる理想的な教育が実現するのは当分先のことになりそうです。コロナウイルス対策でもそうですが、自民党は金儲けのことで頭がいっぱいなのか?と言わざるを得ません。


 

 コラム②:どうなる?コロナ禍の受験

皆さん周知の通り、現在進行形で新型コロナウイルスが日本を、世界を席巻しています。

今年はコロナ禍の影響で、北大など後期入試が中止になった大学もありました(※北大では筆記試験が無くなりセンター利用のみで後期の選抜が行われました)。今月(2020年11月)に入ってからは特に感染者が爆発的に増加しています。毎年のインフルエンザウイルスの流行と同様、特にロックダウンでも実施しない限り、感染拡大の傾向は年度末(4月頃)まで止まらないのではないかと思います。

今年は高校生に限らず学生たちは満足に学校に通うことができず、課外活動はもとより授業を受けることすらままなりませんでした。ほとんどの部活動は全面中止でしたし、夏に行われる大会は体育会系・文科系問わずほとんど全てが中止になりました。高校3年生の方の中には不完全燃焼のまま高校生活が終わろうとしている人も多いのではないでしょうか。経済的損失もさることながら、人々の(特に若者の)精神的な喪失感は計り知れないものがあります。

しかし時間は無慈悲にも過ぎ去っていきます。冬が来れば当然受験シーズンがやってきます。しかし最近のコロナウイルスの拡大傾向を考えると例年通りの形態で試験を行うことはまず不可能でしょう。受験生同士の間隔を確保するためにより多くの部屋を用意しなければなりませんし、そのためにはより多くの採点官を動員する必要があります。今年に関しては会場となる大学や大学入試センター(DNC)の準備が追い付かないかもしれません。万が一受験会場でクラスターが発生すれば、会場となった施設や大学は直ちに閉鎖されてしまうでしょう。

どの程度換気が行き届いていて、どの程度席の間隔が確保できて、どの程度の広さがある会場であれば安全に試験を行うことができるのか、誰も正解を知りません。特に、受験シーズンは冬です。屋内の機密性は夏季に比べて遥かに高くなります。そんな中で密を避けつつ試験を行うことができるのか、受験生はもちろん、大学関係者も非常に気を揉んでいます。

まず、共通テストは期日通りに行われるものと思われます(余程のことでもない限り中止に追い込まれることは無いと思います)。今年に関しては文科省の意向で2種類の日程が設定されているため、ある程度は人が分散され、密集のリスクは軽減できると思われます。第1日程と第2日程で使用される試験問題が異なることによる得点の差をどのように考慮するかという問題はありますが、今の社会情勢を考えると新型コロナ対策が優先されるので、今年に関してはそれを言っても仕方がありません。

大学別に行われる二次試験では対応が大きく分かれることが予想されます。会場の面積に余裕がある大学であれば受験生が密にならないように試験を行うことができるかもしれません。しかしそうでない大学の場合は対応に苦慮しそうです。

現在多くの大学ではオンライン授業が実施されています。4月からずっとです。場合によっては中間・期末試験を遠隔で行い、制限時間内に提出、という形をとっている講義もあったのではないかと思います。しかし、当たり前のことですが、流石に大学入試を自宅で行うことはできません。受験者同士の接触機会をできるだけ減らすため、例年よりも多くの会場を確保することはマストです。大学の施設だけでは不足するということであれば、民間の貸し会議室やホテルの宴会場などを借りて入試を実施するほかないでしょう。

仮に受験会場や大学のある都市がロックダウンされた場合はどうするのか。これもまた問題です。ロックダウンされるかどうかはともかく、もしそうなってしまった場合は地方都市に別会場を用意して試験を行う、というのが現実的でしょうか。全国の学生に受験機会を平等に与えるという観点ではその他の選択肢があまり無いように思われます。

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受験生の皆さんがこの冬を乗り切るために徹底すべきことは以下の通りです。

    • 不要不急の外出を控える
    • 手洗いうがいの励行
    • マスクの着用
    • 生活リズムを乱れさせない
    • よく食べよく寝る
    • 一生懸命勉強する(重要)

家族がいる場合は、家族にもウイルス対策を徹底してもらいましょう。頻繁に外出する家族がいる場合は家でもマスクを外さない方が良いかもしれません。万が一コロナウイルスに罹患してもしっかり療養して下さい。少しでも不安な症状が見られる場合は大事を取って休むこと。そうすることで他人との無暗な接触が抑えられ、感染拡大防止に貢献できます。それから、マスクは基本的に使い捨てです。ちゃんと捨てましょう。

特効薬が普及するまでは、以上のことをしっかり守って慎ましく生活するしかありません。来年も我慢の年になりそうです。大変ですが乗り越えるしかありません。夢を諦めないで掴み取って下さい。



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