4次方程式の解の公式(Ferrariの解法)

本稿では4次方程式の解の公式、いわゆる「Ferrariの公式」を導出します!

 

 Ferrariの公式とは

ルドヴィコ・フェラーリ(Ludovico Ferrari:1522~1565)はイタリアの数学者で、3次方程式の解の公式を世界で初めて世間に公表した数学者ジェロラモ・カルダノ(Gerolamo Cardano:1501~1576)の弟子です。

フェラーリはカルダノと一緒に一般的な3次方程式の解法を研究する過程で、4次方程式の解法を発見したとされています。このことから、4次方程式の解の公式には「Ferrariの公式」という名前が付いています。具体的には次のようなものをFerrariの公式と呼んでいます。

Ferrariの公式4次方程式$$x^{4}+a x^{3}+b x^{2}+c x+d=0$$を変形して得られる4次方程式$$(x^2+\lambda)^2=(mx+n)^2$$から導かれる2つの2次方程式$$x^2+\lambda = \pm (mx+n)$$を解いて得られる解が、求めたい4次方程式の解である。

それでは、実際に4次方程式の解の公式を導いてみましょう!

 

 Ferrariの公式の導出

まず、$x$の部分に $x-\dfrac{a}{4}$ を代入すると$x^3$の項が見かけの上で消去できることに着目します。

実際に左辺に代入して計算してみると、以下のようになります。$$\small\begin{align}
& \quad \left(x-\dfrac{a}{4}\right)^4+a\left(x-\dfrac{a}{4}\right)^3+b\left(x-\dfrac{a}{4}\right)^2+c\left(x-\dfrac{a}{4}\right)+d\\\\
&=x^4-ax^3+\dfrac{3}{8}a^2x^2-\dfrac{1}{16}a^3x+\dfrac{1}{256}a^4+ax^3-\dfrac{3}{4}a^2x^2\\
&\quad+\dfrac{3}{16}a^3x-\dfrac{1}{64}a^4+bx^2-\dfrac{1}{2}abx+\dfrac{1}{16}a^2b+cx-\dfrac{1}{4}ac+d\\\\
&=x^4+\left(\dfrac{3}{8}a^2-\dfrac{3}{4}a^2+b\right)x^2+\left(-\dfrac{1}{16}a^3+\dfrac{3}{16}a^3-\dfrac{1}{2}ab+c\right)x\\
&\quad+\left(\dfrac{1}{256}a^4-\dfrac{1}{64}a^4+\dfrac{1}{16}a^2b-\dfrac{1}{4}ac+d\right)\\\\
\end{align}$$これにより、元の4次方程式は $y=x-\dfrac{a}{4}$ という置き換えにより$$y^4+py^2+qy+r=0$$という形の方程式に書き直せることが分かります。

この式を$$y^4=-py^2-qy-r$$という形に変形し、$\lambda$をある定数として両辺に $2\lambda y^2+\lambda^2$ を加えると、$$y^4+2\lambda y^2+\lambda ^2=-py^2-qy-r+2\lambda y^2+\lambda ^2$$ $$\therefore (y^2+\lambda )^2=(2\lambda -p)y^2-qy+\lambda ^2-r$$と整理できます。ここで右辺が平方の形に変形できれば (左辺)$-$(右辺) で平方の差になるため、2つの2次方程式のとして因数分解でき、4つの解が得られます。

ここで右辺を $(my+n)^2$ という形に変形できるような実数$m$、$n$が存在するための条件は、2次方程式$$(2\lambda -p)y^2-qy+\lambda ^2-r=0$$の判別式$D$について $D=0$ が成り立つことなので、$$q^{2}-4(2 \lambda-p)\left(\lambda^{2}-r\right)=0$$という関係式を得ます。これを4次方程式の「分解方程式」などと呼びます。分解方程式を$\lambda$について解くことで、$m$および$n$が求められます。

以上から、$$y=\begin{cases} \displaystyle \dfrac{-m\pm\sqrt{m^2-4(\lambda+n)}}{2} \\ \dfrac{m\pm\sqrt{m^2-4(\lambda-n)}}{2} \end{cases}$$となるので、最初の方程式の解は $x=y+\dfrac{a}{4}$ で与えることができます。

 

 公式を使ってみる

実際に幾つか例題を解いてみましょう。

 

4次方程式$$x^{4}-8 x^{3}+28 x^{2}-80 x+48=0$$を解け。

 

$y=x-2$ と置いて与式から$x$を消去すると、$$y^{4}+4 y^{2}-32 y-48=0$$となります。これを $y^{4}=\cdots $ の形にすると、$$y^{4}=-4 y^{2}+32 y+48$$となり、分解方程式は$$(-32)^{2}-4(2 \lambda-4)\left(\lambda^{2}+48\right)=0$$ $$\therefore (\lambda-4)\left(\lambda^{2}+2 \lambda+56\right)=0$$となるので $\lambda=4$ を得ます。したがって、$$\begin{aligned}
\left(y^{2}+4\right)^{2} &=y^{4}+8 y^{2}+16 \\
&=\left(-4 y^{2}+32 y+48\right)+8 y^{2}+16 \\
&=4(y+4)^{2}
\end{aligned}$$となり、2つの2次方程式$$
\begin{cases}
y^{2}+4=2(y+4) \\
y^{2}+4=-2(y+4)
\end{cases}
$$を得ます。これをそれぞれ解くと、$$y=1 \pm \sqrt{5}, -1 \pm \sqrt{-11}$$となるので、$x=y+2$ より元の方程式の解は$$\color{red}{x=3 \pm \sqrt{5}, 1 \pm \sqrt{-11}}$$と求められます。


 

4次方程式$$x^{4}+4 x^{3}+8 x^{2}-9=0$$を解け。

 

$y=x+1$ と置いて与式から$x$を消去すると、$$y^{4}+2 y^{2}-8 y-4=0$$となります。これを $y^{4}=\cdots $ の形にすると、$$y^{4}=-2 y^{2}+8 y+4$$となり、分解方程式は$$8^{2}-4(2 \lambda-2)\left(\lambda^{2}+4\right)=0$$ $$\therefore -8 \lambda^3 + 8 \lambda^2 -32 \lambda + 96=0$$ $$\therefore (\lambda-2)(\lambda^2 +\lambda +6)=0$$となるので $\lambda=2$ を得ます。したがって、$$\begin{aligned}
\left(y^{2}+2\right)^{2} &=y^{4}+4 y^{2}+4 \\
&=\left(-2 y^{2}+8 y+4\right)+4 y^{2}+4 \\
&=2(y-2)^{2}
\end{aligned}$$となり、2つの2次方程式$$
\begin{cases}
y^{2}+2=2(y-2) \\
y^{2}+2=-2(y-2)
\end{cases}
$$を得ます。これをそれぞれ解くと、$$\small y=\dfrac{\sqrt{2} \pm \sqrt{8 \sqrt{2}-6}}{2}, \dfrac{-\sqrt{2} \pm \sqrt{8 \sqrt{2}+6}\,i}{2}$$となるので、$x=y-1$ より元の方程式の解は$$\small \color{red}{x=\dfrac{-2+\sqrt{2} \pm \sqrt{8 \sqrt{2}-6}}{2}, \dfrac{-2-\sqrt{2} \pm \sqrt{8 \sqrt{2}+6}\,i}{2}}$$と求められます。

 

 分解方程式の解が複数の場合

4次方程式の中には分解方程式の解が複数存在するものもあります。そのような場合は、得られた解のいずれか一つから計算しやすいものを選びます。例えば次のような問題を解いてみます。

 

4次方程式$$x^4-12x^3+49x^2-78x+40=0$$を解け。

 

$y=x-3$ と置いて与式から$x$を消去すると、$$y^{4}-5 y^{2}+4=0$$となります。これより$$y^{4}=5 y^{2}-4$$となり、分解方程式は$$0^{2}-4(5+2 \lambda)(\lambda^2-4)=0$$となるので$$\lambda= -\dfrac{5}{2} , \pm 2 $$を得ます。計算しやすいように $\lambda=2$ とすると、$$\begin{aligned}
\left(y^{2}+2\right)^{2} &=y^{4}+4 y^{2}+4 \\
&=\left(5 y^{2}-4\right)+4 y^{2}+4 \\
&=9y^{2}
\end{aligned}$$となり、これは$$(y^2+3y+2)(y^2-3y+2)=0$$ $$\therefore (y+2)(y+1)(y-2)(y-1)=0$$と因数分解できます。これより、$$y=-2,-1,\,1,\,2$$となるので、$x=y+3$ より与方程式の解は$$\color{red}{x=1,\,2,\,4,\,5}$$と求められます。

(※)これは実際に$$\begin{align}& \quad x^4-12x^3+49x^2-78x+40 \\ &=(x-1)(x-2)(x-4)(x-5) \end{align}$$と因数分解できることからも正しく求められていることが分かります。


 

上記では整数係数の4次方程式に限って計算例を示していますが、Ferrariの公式は分解方程式が解ける場合に総じて有効です(詳しくはコメント欄をご覧下さい)。

ほとんど使い所の無い公式ですが、4次方程式にも解の公式があるのだということは教養として知っておいて良いと思います。因みに5次方程式に対しても楕円積分を駆使する解法は知られていますが、加減乗除と累乗根を使うだけでは一般解を表現できないため、よく「5次方程式には解の公式は無い」と表現されます。

この「5次以上の代数方程式には解の公式が存在しない」という主張は「アーベル・ルフィニの定理」(Abel–Ruffini theorem) としてまとめられています。詳しく知りたい方はガロア理論について調べてみて下さい。

“4次方程式の解の公式(Ferrariの解法)” への6件の返信

  1. 4次方程式の解き方を調べていてここいたどり着きました
    計算は複雑ですが、思ったより理屈は単純なんですね
    高校以来の疑問が解消しました

    1. あきら さん

      コメントありがとうございます。
      4次方程式の解の公式は平方完成を利用するもので、解を導出する原理は3次方程式よりも単純です。疑問解消に役立って良かったです!

  2. 解式が難しい4次方程式の解を非常にスマートに導出する手順の紹介、参考になりました。
    一つだけ質問です。
    3次方程式となる分解方程式の因数分解を行なう際、λの実数解の一つを因数定理で導き出す必要がありますが、元の4次方程式の係数や定数項が例えば4.1などの実数値だとちょっと難易度が上がります。
    本稿での4次方程式の解の導出手順は元式の係数/定数項が整数の場合に有用である、と理解していてよろしいでしょうか?

    1. orik さん

      コメントありがとうございます。
      Ferrariの公式の適用範囲は確かに気になるところだと思います。

      分解方程式$$\small q^{2}-4(2 \lambda-p)\left(\lambda^{2}-r\right)=0$$は$\lambda$の3次方程式なので「3次方程式の解の公式」を使えば無理やり解けないこともありません。しかし仰る通り、係数が簡単な有理数でない場合だと手計算で挑むのは多くの場合、無謀だと言えます。

      例えば4次方程式$$\small x^4-6x^2-2x+\sqrt{2}=0$$の分解方程式は$$\small 2 x^{3}+6 x^{2}-2 \sqrt{2} x-(6 \sqrt{2}+1)=0$$という3次方程式になりますが、これを解くのは容易ではありません。このことからも分かるように、【Ferrariの公式は分解方程式が解ける場合に有効】であると言えます。

      ただ、4次方程式の係数/定数項が整数であっても、分解方程式(3次方程式)が必ずしも簡単に解ける訳ではありません。例えば$$\small x^4-5x^2+x+2=0$$などは解くのが難しいと思います。

      一方で、4次方程式の係数/定数項に無理数などが含まれていても、分解方程式が上手く因数分解して解けるならFerrariの公式は有効です。例えば$$\small x^{4}-\sqrt{2} x^{3}-7 x^{2}+3 \sqrt{2} x+12=0$$の分解方程式は$$\small (8\lambda + 29) (64 \lambda^2 + 16 \lambda – 863) = 0$$となるので $\small \lambda=-\dfrac{29}{8}$ を使って解くことができます(解は $\small x=2\sqrt{2},-\sqrt{2},\pm \sqrt{3}$)。

      参考になれば幸いです。是非色々と遊んでみて下さい!

      1. 丁寧な解説、ありがとうございます。
        これで私としては十分納得できました。
        私のHPで4次方程式の解法を解説しているのですが、それは真正面から数式解で求める方法であり汎用性はあるかもしれませんが、条件によっては本項で解説されているような方法で比較的容易に解式できることが示されていることに敬意を表します。
        これからも目からうろこの解説記事を宜しくお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です