n^4=1+210m^2の整数解(2022年九州大学理系数学第3問)

今年の九州大学の整数問題はディオファントス方程式に関するものでした。剰余類に習熟していれば、それほど手こずらずに完答できたのではないでしょうか…?


 

自然数 $m$、$n$ が$$n^{4}=1+210 m^{2} \tag*{・・・・・・①}$$をみたすとき, 以下の問いに答えよ。

(1)$\dfrac{n^{2}+1}{2}$、$\dfrac{n^{2}-1}{2}$ は互いに素な整数であることを示せ。

(2)$n^{2}-1$ は$168$の倍数であることを示せ。

(3)$①$をみたす自然数の組 $(m, n)$ を1つ求めよ。

(2022年九州大学 理系第3問)

 

 考え方

方程式$①$は因数分解できる形に整理できるので、$n^{2}-1$ の素因数の候補が絞り込めます。$210=2 \cdot 3 \cdot 5 \cdot 7$ より、$n$の剰余類を各素因数を法として考えることによって(2)を解決します。(3)は「1つ求めよ」なので $n$ の満たすべき条件から候補を絞り込み、小さい方からシラミ潰しで求めてしまいましょう。


解答例

 

(1)

$①$より$n^{4}$は奇数であるから、$n$は奇数であり、$n^2$も奇数である。よって、$\dfrac{n^{2}+1}{2}$、$\dfrac{n^{2}-1}{2}$ は整数であり、その差は$1$であるから互いに素である。

 

 

(2)

方程式$①$は$$n^4-1=2 \cdot 3 \cdot 5 \cdot 7 \cdot m^2 \tag*{・・・②}$$と変形できる。

 

ここで整数$n$について、$n^2$と$n^4$を$8$で割った余りを、$n$を$8$で割った余りで分類すると以下の表のようになる。$$\begin{array}{c|cccccccc}
n & 0 & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 \\
\hline n^{2} & 0 & 1 & 4 & 1 & 0 & 1 & 4 & 1 \\
n^{4} & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 1
\end{array}$$いま、$n$は奇数であるから $n^4-1$ は$8$の倍数となる。$②$より、$m^2$は$4$の倍数であることが必要だから$m$は偶数である。そこで $m=2M$ と置くと$②$は$$\dfrac{n^{2}+1}{2} \cdot \dfrac{n^{2}-1}{2}=2 \cdot 3 \cdot 5 \cdot 7 \cdot M^2 \tag*{・・・③}$$と書き直せる。

 

ここで整数$n$について、$n^2$を$3$で割った余りを、$n$を$3$で割った余りで分類すると以下の表のようになる。$$\begin{array}{c|ccc}
n & 0 & 1 & 2 \\
\hline n^{2} & 0 & 1 & 1
\end{array}$$よって $n^2+1$ が$3$の倍数となることはないから、$n^2-1$ が$3$の倍数となる。

 

同様に$n^2$を$7$で割った余りを、$n$を$7$で割った余りで分類すると以下の表のようになる。$$\begin{array}{c|ccc}
n & 0 & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\
\hline n^{2} & 0 & 1 & 4 & 2 & 2 & 4 & 1
\end{array}$$よって $n^2+1$ が$7$の倍数となることはないから、$n^2-1$ が$7$の倍数となる。

 

以上より、$n^2-1$ は$3$の倍数かつ$7$の倍数かつ$8$の倍数であるから、$168$の倍数である。よって示された。

 

 

(3)

(2)の結論より、正の整数$k$を用いて $n^2=168k+1$ と置けるから、$③$は$$\dfrac{168k}{2}\cdot \dfrac{168k+2}{2}= 210M^2$$ $$\therefore 2k(84k+1)= 5M^2 \tag*{・・・④}$$と書き直せる。これより、$k \equiv 0,\,1 \pmod{5}$ が必要であることが分かるので、この制約の下で$④$の解となる$k$と$M$の組を探せばよい。

 

$k=1$ のとき $2 \cdot 17=M^2$ となり、これを満たすような整数$M$は存在しない。

 

$k=5$ のとき $2 \cdot 421=M^2$ となり、これを満たすような整数$M$は存在しない。

 

$k=6$ のとき $12 \cdot 101=M^2$ となり、これを満たすような整数$M$は存在しない。

 

$k=10$ のとき $2^2 \cdot 29^2=M^2$ となり、$M=58$ を得る。

 

これより$$n^2=1681$$ $$\therefore n=41$$を得るので、$$(m,n)=\color{red}{(116,41)}$$は求める解の一つである。

 


 

$\bmod 5$ を気にして解の候補を上手く絞り込めたかどうかで(3)の手間が若干変わります。素因数が判明した時点で「文字式で置き直す」を徹底すればそれほど見通しの悪いことにはならないと思います。$k$の値で絞り込むところでは、指数部分が奇数となる素因数が出てきた時点で切り捨てられます。最後の $n^2=1681$ の解き方ですが、大体 $40^2=1600$ なので$n$は$40$よりちょっと大きいくらいの数字だな、とアタリを付けます。

なお、上記の解答例では触れていませんが、$④$の左辺が偶数であることから、$M$が偶数であることを利用することもできます。この場合は右辺が$10$の倍数であるという制約が生じるため、絞り込みがさらにラクになります。それから、$841=29^2$ であることに気が付かないと、次の$k$の値は$33640$($M$の値は$194996$)なので事実上解答不可能になってしまいます。因みにその次は $k=113097690$ となるので手に負えません。


不定方程式に関する整数問題は九州大学としては2015年以来7年振りの出題です。予備校の解答速報の分析では本問は難~やや難の評価でした。今年の九州大学の数学は理系・文系ともに難化傾向で、特に第4問は積分の基本的な性質を問うた出題ですが受験生を威圧したであろうことは想像に難くありません。

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