有機化学:アルケンへの付加をマルコニコフ則と立体化学で読む

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

二重結合へ二つの原子が付く反応でも、付く位置と向きには規則があります。HBrのイオン的な付加と、Br₂の付加を比べます。

HBrの付加では、途中のカチオンを比べる

プロペンCH₂=CH–CH₃にHBrがイオン的に付加する場合、π電子からHへ結合ができ、その際にH–Br結合の電子対がBrへ移ります。末端側にHが付けば二級カチオン、中央側にHが付けば一級カチオンを作る経路になります。通常は前者が有利で、続いてBr⁻が結合すると2-ブロモプロパンになります。

CH₂=CH–CH₃ + HBr → CH₃–CHBr–CH₃

この位置選択性をまとめたのがマルコニコフ則です。「Hが多い炭素へHが付く」という覚え方を使う場合も、なぜその経路が有利なのかを中間体・遷移状態と結び付けておきましょう。

Br₂では、橋を架けたブロモニウムを考える

Br₂の付加では、二重結合の二つの炭素にBrが架橋したブロモニウムイオンを経る描像が基本になります。Br⁻が反対側から攻撃して環を開くため、二つのBrはアンチ付加します。自由なカルボカチオンができる場合と同じように、無制限な回転や転位を描かないことが大切です。(OpenStax:8.2 アルケンのハロゲン化)

付加反応の条件を選ぶカチオンを生じる経路の有利さを比較します。位置選択性と、転位の可能性を考えます。

溶媒中に水などの求核剤があれば、ブロモニウムを開く相手が変わり、ハロヒドリンなどを生じる場合があります。

アンチ付加とtrans体は同じ言葉ではない

アンチ付加は、二つの基が二重結合の反対側の面から付くという反応の向きです。transは生成物の相対配置を表します。環状アルケンの例では両者を結び付けやすいですが、鎖状生成物を単結合回転させた図の見た目だけでsyn/antiを判定してはいけません。

三重結合なら、もっと速く付加する?

アルキンにはπ結合が二つありますが、反応速度は本数だけでは決まりません。生じる中間体や遷移状態の安定性が異なるため、求電子付加でアルケンより遅くなる場合があります。π電子があることは反応点の手掛かりですが、速さの直接のものさしではありません。

考えてみよう:Br₂付加で、自由な平面カチオンの両側へ同確率でBr⁻が付く図を描く?

通常は架橋したブロモニウムを考え、背面からの開環によるアンチ付加を描きます。