有機化学:環ひずみとシクロヘキサンの椅子形を考える

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

六角形で描くシクロヘキサンは、実際には平らではありません。角度だけでなく、結合どうしの重なり方と置換基の近さを比べると、椅子形の意味が分かります。

ひずみには、いくつかの原因がある

角ひずみ

結合角が、その結合にとって有利な角度からずれることで生じます。

ねじれひずみ

隣接する結合が重なる配座などで、エネルギーが高くなります。

立体反発

離れているはずの原子・基が空間的に近づき過ぎると不利になります。

シクロプロパンの三角形では、C–C–C角は約60°です。普通の四面体型炭素の角度とは大きく異なり、C–C結合も通常の直線的な重なりだけでは表しにくくなります。開環によってひずみを解消できることが、特徴的な反応性に関わります。

六員環は、折れ曲がってひずみを減らす

シクロヘキサンは椅子形を取ることで、結合角を四面体角に近づけ、隣接する結合の重なりも避けられます。紙の六角形は原子のつながりを表す略図であり、平面構造を主張しているわけではありません。(OpenStax:4.5 シクロヘキサンの配座)

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椅子形の模式図。六つの頂点が炭素です。水素と置換基は省略しています。

アキシアルとエクアトリアル

各炭素には、環の上下方向へ伸びるアキシアル結合と、外周方向へ伸びるエクアトリアル結合があります。メチル基のような置換基がアキシアルに付くと、同じ側の離れた炭素上のアキシアル水素と近づく1,3-ジアキシアル相互作用が生じます。単置換シクロヘキサンでは、大きな置換基がエクアトリアルにある配座が有利になりやすいのです。

同じ置換基の環反転を追う反転後はエクアトリアル・上向きになります。上向きという立体配置は保たれます。

環反転で入れ替わるのはアキシアル/エクアトリアルです。上/下やcis/transが逆転するのではありません。

形が反応の起こりやすさを変える

シクロヘキサン上のE2脱離では、切れるC–H結合とC–脱離基結合をアンチペリプラナーに並べる必要があります。典型的な椅子形では、隣接した二つのアキシアル結合が反対向きを向く配置に対応します。安定な配座がそのまま反応しやすい配座とは限らず、環反転してから反応する場合もあります。

考えてみよう:環反転によってcis体をtrans体に変えられる?

変えられません。二つの置換基が環の同じ側か反対側かという関係は保たれます。