有機化学:SN1・SN2反応を速度式と立体化学で見分ける

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

求核剤が炭素へ結合し、脱離基が離れる。全体の変化が同じでも、途中の順序は一通りではありません。速度式と生成物の立体配置を手掛かりにします。

SN2は、結合形成と切断が一段階で進む

SN2では、求核剤がC–脱離基結合の反対側から近づき、新しい結合の形成と古い結合の切断が協奏的に進みます。炭素の周りが混み合うほど近づきにくいため、一般にメチル、一級の基質で起こりやすく、三級炭素での通常のSN2は困難です。

v = k[基質][求核剤]

反応点が不斉中心なら、配置は傘が裏返るように反転します。ただし置換によってCIP優先順位も変わり得るため、「Rが必ずSになる」と記号だけで判定せず、実際の位置関係を追います。

SN1では、脱離の後に求核剤が結合する

SN1の典型的な描像では、脱離基が離れてカルボカチオンを生じ、そこへ求核剤が結合します。カチオンを作る段階が速度を強く制限すると、速度は主に基質の濃度に依存します。「一分子反応」とは、その段階の分子数や速度論の呼び方で、真空中の孤立分子が溶媒と無関係に変化するという意味ではありません。(OpenStax:11.5 SN1反応の特徴)

典型的なSN1の速度式:v = k[基質]
求核剤濃度を何倍にするか求核剤 1倍 → SN2の速度 1倍 / 典型的なSN1は約1倍

基質濃度・温度・溶媒を一定とした速度式の比較です。混合物の性質や機構自体が変わるほど濃度を変える場合には、この比例だけでは扱えません。

立体配置と転位も手掛かりになる

平面に近いカルボカチオンには両側から攻撃できるので、SN1では立体純度が低下し得ます。ただし脱離基や対イオンが近くに残る影響などにより、常に正確な1対1のラセミ体になるわけではありません。カチオンの転位が起これば、炭素骨格の変化も観測されます。

観点 SN2の典型 SN1の典型
段階 一段階 カチオンを経る複数段階
立体的な混雑 反応を妨げる カチオンの安定化との兼ね合い
求核剤濃度 速度式に現れる 律速が脱離なら現れない
競争反応 E2 E1や転位
考えてみよう:三級基質なら、どんな条件でもSN1が主反応?

そうとは限りません。強塩基があればE2脱離が優勢になることがあります。基質だけでなく、試薬と溶媒・温度を合わせて判断します。