対象:化学基礎/前提:原子・分子・化学式、小数と指数の計算
水9.0gと酸素9.0gには、同じ数の分子が含まれるでしょうか。質量が同じでも、分子一個の質量が違うので分子数は同じになりません。反応する粒子の数をそろえて比較するために使う量が、物質量です。
✎molは、何を数える単位なのか
物質量の記号はn、単位はmolです。1molには、指定した粒子が正確に6.02214076×1023個含まれます。この数を1mol当たりで表したアボガドロ定数NAの単位はmol−1です。「酸素1mol」だけでは、酸素原子Oを数えるのか、酸素分子O2を数えるのかが曖昧になります。計算では対象を明記しましょう。
酸素分子O2が1molあれば、酸素原子は2molあります。分子を数え直したのではなく、一分子に原子が2個あることを使っています。NaClの結晶では独立したNaCl分子が並ぶと考えず、組成式に対応する単位を数えます。
この内容を詳しく確かめる:IUPAC Gold Book:mole・BIPM:mole。
✎質量から物質量へ
1mol当たりの質量をモル質量Mと呼びます。質量mをg、Mをg/molでそろえると、n=m/Mで求められます。相対分子質量は基準との比で単位を持たず、モル質量は単位を持つ量です。
質量m ÷ モル質量M = 物質量n
物質量n × アボガドロ定数NA = 粒子数N
この内容を詳しく確かめる:OpenStax Chemistry 2e, 3.1。
✎例題:同じ9.0gでも分子数は違う
計算用にH2Oのモル質量を18g/mol、O2を32g/molとします。水は9.0÷18=0.50mol、酸素は9.0÷32=0.28125molです。したがって水分子の方が多く、分子数の比は約1.8倍です。NAを約6.0×1023mol−1とすれば、それぞれ約3.0×1023個、約1.7×1023個になります。
単位でも確認できます。(g)÷(g/mol)=mol、(mol)×(mol−1)=1です。式を忘れたときにも、何で割れば求めたい単位になるかを考えられます。
✎反応式の係数は、質量の比ではない
2H2+O2→2H2Oでは、水素分子2molと酸素分子1molから水分子2molができます。モル質量を2、32、18g/molとして質量に直すと4g+32g→36gです。係数の2:1:2を、そのままgの比にしてはいけません。
質量から始まる問題では「質量→物質量→係数比→必要なら質量」の順に進めると、物質が変わる場所と単位を換算する場所が分かれます。過剰に加えた物質が残る場合は、増減表と限界試薬の解説へ進んでください。
✎確認問題
CO₂が0.20molあるとき、炭素原子と酸素原子はそれぞれ何mol?
炭素原子は0.20mol、酸素原子は0.40molです。原子の合計は0.60molですが、CO₂分子は0.20molのままです。
NaClを5.85g量り取った。M=58.5g/molとして物質量を求めよう。
n=5.85/58.5=0.100molです。完全に溶けて電離すると、Na⁺とCl⁻はそれぞれ0.100mol生じます。NaClの物質量と、溶液中のイオンを合計した物質量を区別します。
✎発展:定義が正確なら、計算値も正確になる?
アボガドロ定数の値は定義によって固定されています。一方、試料の質量には測定誤差があり、モル質量には同位体組成や採用した原子量が関わります。定数の桁をすべて使っても、試料の測定精度が上がるわけではありません。途中では余分な桁を保持し、最後に入力値の精度に応じて丸めます。
数値例と確認問題は学習用に作成しています。本文の近似条件を確認して利用してください。
